矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2020.05.12

進むオンライン化 4分野にみる新たな社会へのパラダイムシフト

いま、社会では様々なパラダイムの変化が起きている。その一つがオンライン化だ。弊社にはこれまで人事制度上在宅勤務制度がなかったが急遽在宅勤務にシフトし、5月初め現在、自宅で本稿を書いている。在宅勤務を含むテレワークについてはメディアで度々取り上げられているため本稿では割愛し、行政手続き・契約・採用・医療の4分野のオンライン化の動向を紹介する。

さらに言えば、個々の事象の変化をスポットで追及するだけではなく、社会全体のEnd to Endの効率化が図られることが望ましい。一事を以って万端を知るという。コロナ禍において、台湾ではマスクの在庫が分かるアプリが公開されたことが話題になったが、これは台湾社会の先進的なデジタル活用の一部であろう。他方で、日本では未だに多くのアナログな慣習に悩まされている。これら4分野の変化が、「点」ではなく「面」として拡大していくことが期待される。

日本人は変化に対して慎重な傾向が強いため、平時に「成り行きを見ながら」「慎重に検討」といっていると足踏み状態が続く。しかし、当たり前と考えていたさまざまな事柄を、新型コロナウイルス感染症が覆している。体感的には数年分前倒しで、デジタル化・オンライン化が進む可能性が見えてきた。

①行政手続き
新型コロナウイルス感染症に関わる助成金などの手続きでは、書類の押印や窓口での対面の受付などを不要とする措置が取られた。この先のデジタル化加速を表明する自治体もみられる。政府は2016年からデジタルガバメントの取組を進めており、2019年5月にはデジタル手続法が成立し、マイナポータルなどを活用したデジタル化やワンストップ化が計画されている。マイナンバーカードの保有率が2020年3月時点で15%と低水準にあることが課題となっていたが、給付金10万円受け取りのオンライン手続きにはカードが必要であるため、取得申請が急増するなどにわかに注目されている。

②契約
竹本IT担当大臣が4月の記者会見で「捺印がテレワークの障害になっているのではないか」という問いに対して「しょせんは民・民の話」」とコメントしたことは物議を醸した。これに対応して、GMOインターネットグループの熊谷氏はTwitterで印鑑廃止を宣言し、取引先との契約を電子契約のみとするなどの施策を決定した。電子契約は契約締結先の企業の合意も得る必要があるが、経団連の中西会長も捺印がナンセンスだという発言をしており、大手企業が動き出せば社会的な変化に繋がる。矢野経済研究所が昨年行った調査でもリーガルテック市場は電子契約サービスを主体とする成長市場となっているが、いっそうの加速もありえる。

③採用
採用広報解禁日の3月1日以降開催が予定されていた企業説明会など就職関連イベントが軒並み中止となり、Web説明会やWeb面接に切り替わった。これまでも地方学生や留学生の採用のために一部オンラインを活用する企業はあったが、対象を限定せず全面的にWebを活用するケースは少なかっただろう。学生からは参加しやすいなど評価する声も上がっており、今後潮目が変わるかもしれない。
そもそも、横並びのスケジュールで新卒の一括採用を行ってきたため大規模イベントが開催されていたのだが、若年者雇用が重要性を増し人材獲得競争が激化するなかで、通年採用に切り替える企業も増えつつある。オンラインを活用した各社独自の採用活動は、グローバル人材や多様な人材の獲得にも効果を発揮する。
但し、学生側のパソコンや通信環境の充実度に依存する不公平さは課題となるほか、画面越しでは互いの非言語表現や微妙なニュアンスまでは伝わりにくく、選考終盤の面接は対面で行う企業は多そうだ。

④医療
Webなどを活用した遠隔診療については、初診は直接対面で行う、対象は慢性疾患、遠隔医療を行う前に対面診療を3か月以上行う、など法的な制限がある。しかし、新型コロナウイルスの院内感染を防ぐなどの必要に迫られ、初診での活用や歯科での利用を認める臨時措置が取られた。
これまで、オンラインによる診療は、医師会など医療現場からの抵抗があり定着が遅れていた。通院しなくて済むとなれば評判の良い病院や医師に人気が集まることや、医師の診察機会が減少し収入減となることなどが懸念されている。今回も時限的な対応ではあるが、今一度、医師不足や地域による医療格差是正などへの対策としても重要性が見直されるべきであろう。

小林明子

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小林 明子(コバヤシ アキコ) 主任研究員
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