株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の電子契約サービス市場を調査し、市場概況やサービス参入企業の動向、普及動向、将来展望を明らかにした。
【図表:電子契約サービス市場規模推移・予測】
2019年の国内電子契約サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年比74.4%増の68億円と推計した。電子契約サービスそのものや、その信頼性に問題が無いことなどに対する認知が広がっており、また雇用条件通知書が電子化されたことなどから、市場は順調に成長している。
■電子契約サービスの全社導入が進む
新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年4月に、GMOインターネットグループが顧客が手続する際の印鑑廃止と、取引先との契約を電子契約のみとすることを表明したことは、電子契約サービス業界に大きなインパクトを与えた。これに続いた企業も数多くあったと推測する。そのため、2020年上期には電子契約サービスを採用する企業や、サービスの適用範囲を広げた企業が急増した。
規模別に採用企業をみると、やはり大企業の導入が中心だが、中小企業における導入/検討も進んでいる。中小企業のデジタル化は思うようには進展していないところもあるが、コロナ禍により、電子契約サービスをトップダウンで進める企業が増えたことも追い風になっている。
また、電子契約サービス導入による影響は法務部門だけが受けるものではないため、社内向けの文書から利用開始するなど、かつてはスモールスタートが主流であった。しかし、コロナ禍でのんびりと構える余裕はなくなり、最初から全社導入する企業も増加基調にある。また、スモールスタートだとしても、導入段階から全社導入が視野に入っているところが増えている。さらに、大企業の場合、かつては導入までに1年以上要することもあったというが、今は3~6カ月程度で導入するケースが多く、中小企業の場合は2~3カ月、またそれ以下の期間で導入する企業もあるという。電子契約サービスの情報収集から実際に導入するまでの期間が、短縮傾向にあると言える。
2020年に入ると、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が急速に広がる一方で、書類の処理やハンコを押すために出社しなければならない事態に直面し、BCP(事業継続)の観点からも電子契約サービスが注目されるようになった。
2020年5月に法務省が取締役の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認について、クラウドを活用した電子署名が会社法上も有効であることを経済界に周知した他、同年6月に内閣府や法務省、経済産業省が契約書への押印不要の見解を示したことなども電子契約サービス普及の追い風になっている。その結果、電子契約サービスの導入/検討を進める企業は増加基調にあり、2020年の電子契約サービス市場規模は、事業者売上高ベースで前年比58.8%増の108億円に達すると予測する。
もっとも、電子契約サービスの導入は、部門・部署を跨いだ横断的なプロセスや、社内規程、契約文言の見直し、また相手方に理解を求める必要もあることなどから、2020年は情報収集や導入に向けた準備期間とし、2021年に本格導入を目指す企業も多い。そのため、2021年の同市場はさらに伸長し、前年比62.0%増の175億円に達する見通しである。市場には、未だ電子化されていないホワイトスペースが多いこと、導入形態が部門導入から全社導入に移りつつあることなども市場の成長を後押しする要因となり、電子契約サービス市場は2017年から2024年までのCAGRが37.8%と順調に拡大し、2024年には264億円に達すると予測する
■アドビ株式会社
■株式会社インフォマート
■レポートサマリー
●電子契約サービス市場に関する調査を実施(2022年)
●リーガルテック市場に関する調査を実施(2019年)
■アナリストオピニオン
●オンライン上での本人確認「eKYC」の活用進む
■同カテゴリー
●[ソフトウェア]カテゴリ コンテンツ一覧
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調査対象:国内電子契約サービス関連事業者等
調査期間:2020年8月~10月
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング調査併用
※電子契約サービス市場とは:本調査における電子契約サービスとは、Web上で電子ファイルに押印・署名するなどして契約を締結できる製品/サービスを指す。製品/サービスによっては、契約書以外の書類にも対応し、契約書の作成・管理や契約業務の管理なども可能になる。市場規模は、電子契約サービスベンダの事業者売上高ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
契約作成・締結・管理に関する、電子契約製品/サービス
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