矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2017.06.02

ドローンは物流の救世主になるか?

中国のネット通販大手JD.com(京東商城)が、ドローンによって1トンクラスの荷物を運ぶ計画を立てている。陝西省政府との合意によって、半径300km圏に複数のドローン基地とそれらをつなぐ空路ネットワーク構築を計画している。

(写真:JD.comプレスリリースより)

JD.comは、国内第2位のECモールで、最大手のアリババ傘下Tmall(天猫)を追う存在になっている。前身が電子機器のリアル店舗であったことから、カメラや携帯電話などのエレクトロニクスに強い。中国国内のECサイトでは珍しく、自前の配達員による時間指定配送や3時間以内配送(都市部のみ)も行っている。また、コンビニでの受け取りも他社に先駆けて実現した。
陝西省は中国の中心部に位置し、省都の西安は兵馬俑が有名である。省とは言っても面積は日本の本州の90%に匹敵し、その範囲は広大である。
さらに、舗装路どころか、道路が未整備な山間部も多いため、直線距離では近くても極めてアクセスの悪いエリアも少なくない。そのためJD.comでは、個別宅への配送よりも主要拠点への幹線輸送をドローンで実現しようとしているのである。

1トンもの重量を1台のドローンで運ぼうとすると期待のサイズも相当に大きなものになると思われるが、小型のドローン複数台で重量物や大型の貨物を運ぶことも構想されている。
ボーイング(Boeing)は、軽量な荷物はドローン1台で、重量物は複数のドローンを連結して搬送するシステムを取得している。

USPTO: Boeing 「Modular vehicle system」

同じようなドローンによる編隊飛行のアイデアの特許は、Amazonも出願している。

USPTO: Amazon Technologies 「Collective unmanned aerial vehicle configurations」

このような連結による様々な構成が可能になれば、荷物の重さや大きさが異なる場合であっても、それぞれに相応しい機体を複数用意する必要が無くなる。
Amazonの特許では、水平方向の推力を持たせる連結機構も構想されており、ナビゲーション機能などのコンピューテーションパワーも共有することで電力消費を抑え、より遠くへより早く到達することが可能になるとしている。

アマゾン(Amazon)がドローンによる配送を構想していることは既に有名だが、様々な種類の機体開発に加え、一見突拍子もないような特許も相次いで出願・取得されている。

メルセデスベンツ(Mercedes Benz)とマターネット(Matternet)は、バンから直接ドローンが飛び立って配達するソリューションを発表。UPS(写真)でも、配達車両の屋根が開き、飛び立ったドローンでの配達をテストしている。

(写真:UPSプレスリリース資料)

弊社が昨年発表した「ドローン(UAV/UAS)の世界市場と将来予測」の中では、空撮や点検など数多くの用途分野が大きく伸長する中、輸送・配送分野での利用の伸びは最も低くテクノロジーが進化する2020年までは低調な推移を予測した。しかし、我々の読みは間違っていて、ドローンの物流分野での利用はもっと早まる可能性がある。

ドローン市場は確かに急拡大しているが、ドローンのメーカーの間では明暗が分かれている。クリス・アンダーソン率いる3D Roboticsは既に自社製ドローンSoloの製造をやめ、ソフトウェアへとシフトしている。競合他社や周辺企業を積極的に買収してきたフランスのParrotも、DJIキラーと言われたAutel Roboticsも、インテルから巨大出資を受けたYuneecも、テンセントのZeroTechも、アクションカメラ依存からの脱却を目指してドローン「Karma」を開発したGoProも従業員のレイオフに追い込まれている。コンシューマドローンでは、もはやDJIが独走態勢だ。

ドローンの最大の弱点は、実際に物理的な作業ができないことである。
ドローンブームの火付け役となったDJIやパロットの機体は、機体重量が1㎏前後の小型のものが多く、せいぜいカメラを積んで、あちこちを飛び回って写真撮影することぐらいしかできなかった。

しかし、産業用ドローンの分野では、必要とされるタスクごとに異なる機体が求められるため、バリエーションのすそ野は広い。農薬散布は唯一「作業」と呼べるものであったが、将来はクリーナー塗料を吹き付けたりできるものも現れるかもしれない。そんななかにあって、荷物を運ぶと言うのは、重要な「作業」と言えるであろう。輸送・配送は、それ自体で対価を得られるサービスなのだから。

輸送・配送分野は、積載重量が限定的で、飛行時間と到達距離が限定的で、安全性の点で飛行エリアも限定されることから、ドローンが適用できる範囲が極めて狭いと考えていたが、テクノロジーのブレークスルーはもっと早く訪れるかもしれない。

関連リンク

■レポートサマリ
ドローン(UAV/UAS)世界市場の調査を実施(2016年)

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古舘 渉(フルダテ ワタル) 主任研究員
新規事業コンサルティング部門、上海現地法人、海外部門を歴任し、新規市場開拓のお手伝いには自信があります。

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