矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2016.02.04

転換期を迎えた企業のデジタルマーケティング ~テクノロジーの進化で個客マーケティング時代が幕を開ける~【後編】

前回は、企業がデジタルマーケティングの進化によって、①顧客をマスではなく「個」で捉え、②それぞれにコンタクトポイント構築が可能になり、顧客一人ひとりに最も効果的な提案=「個客マーケティング」を実践できる環境が整ったことを説明した。
今回は、個客マーケティングへの取組み実態とトレンドについて、お伝えしたい。

近年のスマートフォンやソーシャルメディアの急速な普及やWebテクノロジーの進化により、企業は「顧客接点の増加」、「大量のデータ収集」、「リアルタイムでのデータ分析」などが可能になった。
それらの情報を活用し、適切なユーザーへターゲティングし、適切なコンテンツを届けることで「コミュニケーションの最適化」を図ることが、デジタルマーケティング≒個客マーケティングの目的となっている。
個客マーケティングの実施ステップは、大きく「顧客接点ごとの顧客データ収集」と、それらの情報を分析によって可能になる「ターゲット設定とアクション実施」に分けられる。
近年は、POSシステムやポイントシステム、顧客データベースの導入が進み、顧客情報の収集・分析が可能になっており、EC事業者は、顧客との各接点(チャネル)において、以下の通り様々なデータを取得している。

【図表:顧客接点(チャネル)と取得データ】

【図表:顧客接点(チャネル)と取得データ】

矢野経済研究所作成

上記の取得データは、大きく2種類に分類できる。

  • アクセス解析系データ=広告やウェブサイトのアクセス履歴などから得られるオンラインデータ
  • 顧客DB=店舗のPOSなどで集積した購買履歴などのオフラインデータ

アクセス解析系データ(オンラインデータ)からは、「カート離脱ユーザー」や「初回購入個客」など、顧客DB(オフラインデータ)では「購入頻度」や「購入単価」などユーザー状況の把握が可能となり、そこからターゲット選定を行っている。
基本的に、ECサイトは「全ての顧客に同じ情報を表示」することを前提としており、アクセスしている「顧客の属性情報」等に応じて、提供する情報を変えるものではなかった。
そのため、商品の販促等顧客へのアクションを行う際には、顧客DB(氏名・住所、メールアドレス、購買履歴など)をもとに、購入者や会員登録したユーザーに対するDMやメルマガ送付が基本であった。

一方、アクセス解析系データを活用したサービスを利用によって、ユーザーのサイト閲覧状況の把握が可能になった。個々のユーザーのサイト内遷移動向や、Cookie情報を使えば購買履歴などが確認できるが、あくまで確認可能なのは「アクセス後」であり、リアルタイムでアクセスしている顧客の属性情報は分からなかった。
つまり、これまでは「顧客DB」と「アクセス解析系データ」とは、紐付けはできていなかったのである。

【図表:ターゲットに応じたアクション事例】

【図表:ターゲットに応じたアクション事例】

矢野経済研究所作成

■個客マーケティングのトレンド ~ECの接客におけるデータ活用の現状

ここで、EC業界で注目を集めているマーケティングテクノロジーについて、紹介しておく。

先ごろ、マーケットレポート「ECサイト構築/運営代行市場の実態と展望」を発刊したが、主要EC構築事業者の間で、注目を集めているEC関連テクノロジーが「ウェブ接客サービス」であった。代表として、プレイド社「KARTE(カルテ)」とSocket社 「flipdesk(フリップデスク)」などが挙げられた。
ECサイト等、ネットにおけるマーケティングには「集客」と「接客」、そしてリピートを促進する「追客」という3段階があるとされ、このうち「接客」に注目したものである。
EC利用者が増加する一方で、検索などに不慣れで、目的の商品にたどり着けないユーザーが増加しており、また、スマートフォンからのアクセス増加はEC事業者側にとっては提供できる情報量が制約を受けることにも繋がっているとされている。

このような状況の中で、商品に関するユーザーの疑問や不安をオンライン上で解消し、個々のユーザーに合わせた情報提供を可能にするのがウェブ接客サービスである。
具体的には、タグをサイトに埋め込むことによって、スマートフォンおよびPCサイト上で、訪問者の行動履歴などを自動解析し、チャット招待やクーポン発行、メッセージ配信などアクセスした顧客に応じて表示する情報を変え、最適な接客・販促の提供を可能にするものである。

【図表:ウェブ接客サービス例】

【図表:ウェブ接客サービス例】

矢野経済研究所作成

今回紹介したオンライン接客サービスでは、ECサイト内に新たなタグを入れることで、顧客DBとアクセス解析系のデータを紐付け、アクセスしている最中にそのユーザーが誰でどのような嗜好性があるかを特定しアクションを起こすことが可能となる。
「顧客DB」と「アクセス解析系データ」の結合により、EC事業者では個客マーケティング施策のバリエーションが格段に増えていくことが予想され、ECにおけるユーザーの利便性と満足度を高め、ファンを獲得する新たな販促手段として期待されている。

関連リンク

■レポートサマリー
DMP(データマネジメントプラットフォーム)/MA(マーケティングオートメーション)市場に関する調査を実施(2021年)
ECサイト構築支援サービス市場に関する調査を実施(2021年)

■アナリストピニオン
転換期を迎えた企業のデジタルマーケティング~テクノロジーの進化で個客マーケティング時代が幕を開ける~【前編】
コミュニティマーケティングについて考える
ITはコト消費をモノ消費に

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