矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2022.09.02

【アナリストオピニオン】モビリティ×IT 自動車産業におけるIT新大陸 MICとはなにか③

MICは車両データや乗員データ、運転データなどの流れを軸に描いた図になるが、システム構成として表現すると上図となる。

機能として重要になるのは、ビークルOSとモビリティPaaSのデータ連携(通信)という縦の関係と、モビリティPaaS内にある横の連携である。

モビリティPaaSに相当するような機能は、現在進行形でOEMが開発中のものとなっている。以降で弊社の考えを論じるためにOEMサービス名を記載して簡単に紹介するが、あくまで弊社の解釈であり、各サービスの内容を正しく解説したものではない点には留意願いたい。

モビリティPaaSと自動車は、前者はクラウド、自動車はエッジ端末という関係性になる。モビリティPaaSは、トヨタでいえば「MSPF」と「Arene」、VWでいえば「VW.AC(V Volkswagen Automotive Cloud)」に相当する概念となる。トヨタの「AMP(Automated Mapping Platform自動地図生成プラットフォーム)はモビリティPaaSの外側で連携するものというイメージにしているが、モビリティPaaSの中にプロットしても特に違和感はない。MSPFやAMPは(実際がどうかは別にして)ソフト開発やサービス開発する側にとっては、ひとつのデータベースに過ぎないと考えられる。データ連携さえできていれば、内・外の議論にあまり意味はない。

モビリティPaaSに含まれるものは、矢野経済研究所では「車両・乗員データ」、「ソフト開発基盤」、「サービス開発基盤」に集約させた。
車両・乗員データは、文字通り車両や走行、稼働といった自動車にまつわるデータおよびドライバーに関するデータである。当然、プライバシー保護の問題は制御される必要があるだろう。
ソフト開発基盤は、ビークルOS上で動くアプリを開発するプラットフォームである。制御系に近いものはOEMと一部のTier1しか触れないだろうが、そうでないサービスアプリを開発するに必要なものはサードパーティに公開されることになる。
サービス開発基盤は、OEMやサードパーティが新たなサービスを展開する価値があるかをシミュレーションする基盤となる。さまざまなデータ(その地域の人口や施設、道路など外部データ含め広く連携することになるだろう)をみながら、新規サービスを展開した場合の事業シミュレーションなどを試すことができる。

最後に、将来、モビリティPaaSがどのようなものに使われるのか、いくつかのシーンにわけて当社の想定を紹介したい

■OEM 既存車両の改良
OEMは自動車の挙動のリアルタイムデータを使い、細かい制御の修正などを行い、よりよい乗車体験ができるようにビークルOSの修正などにもこの基盤を使う。こうした深いデータはOEM内部にしか公開していないものである。
■OEM 新車開発
新車開発にあたっても、さまざまな車種・車両のリアルなデータを活用し、よりよい車両開発のための企画がおこなわれる。
■サードパーティ・OEM 車内用アプリの開発
自動車に近いサービスを展開するサードパーティ(例えば自動車用音楽アプリなどエンターテイメント系など)は、ソフト開発基盤を使って、使いやすい音楽アプリなどを開発できる。ドライバーは、自動車のディスプレイなどを操作して、アプリをインストールする。
■サードパーティ・OEM 車外用アプリの開発
駐車場運営事業者が、近い駐車場サービスを案内したり、バッテリー充電拠点といったものも含まれる。
■サードパーティ・OEM 車外用サービスの開発
飲食店のロードサイド店が出店計画を行うとき、サービス開発基盤を使い、その地域の車両通行量などを調べ事業性評価を行う。その上でソフト開発基盤で、車が近接地にくるとディスプレイに割引案内を通知するといったアプリの開発をする。
特にスマートシティが進展してくれば、自治体や医療データなど広範なデータと連携することが見込まれる。自動車会社が提供するサービス開発基盤ではあるが、例えば地域の住民情報と連携し、医療データをもとに最適な病院を案内・自動搬送する機能など幅広く活用することができる基盤となるだろう。

忌部佳史

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/359

忌部 佳史(インベ ヨシフミ) 理事研究員
市場環境は大胆に変化しています。その変化にどう対応していくか、何をマーケティングの課題とすべきか、企業により選択は様々です。技術動向、経済情勢など俯瞰した視野と現場の生の声に耳を傾け、未来を示していけるよう挑んでいきます。

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