本稿では金融サービス仲介業の拡大における制約要因として4つ挙げておきたい。まず制度面である。シングルライセンスにも関わらず、各仲介業務において各々異なる体制整備が必要である点や兼業規制を含めて、実質4つの業務ごとの要件をクリアしなければならず、シングルライセンスは表面上の表現に留まる。
特に社内規定の整備は取得するうえで、大きな障壁になっている。プリンシプル・ベースで作成していく必要があるうえ、また、既に代理店資格等を保有している事業者は現業の規定とのすり合わせも発生する。加えて、日本金融サービス仲介業協会が定める規定への適合など考慮すべき点も多く、大きな制約の1つとなっている。
また、商品面での制約もある。取扱商品の制限が厳しく、特に生命保険領域は1,000万円未満の保険しか取扱いができない一方、生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」によると、普通死亡保険金は1,927万円とある。独身に限った場合には1,393万円とあり、独身の若年層であればカバーできる見込みがあるものの、結婚している場合には、金融サービス仲介業の取扱う保険ではカバーできない可能性が高い。
また、取扱い可能なバイク保険などの少額保険は、利益率が低く、金融サービス仲介業者側は強力な販売網を持っていなければ取扱いメリットが少ない。一方、保険会社側もシステム的なコストを含め、安価な保険商品を提供するメリットが見当たらない。
次に流通チャネル面について、金融サービス仲介業者は代理店と異なり、金融機関との関係は所属制ではなく、パートナーとしての位置づけにあるため、自ら保険会社と交渉し、保険商品を卸してもらう必要がある。一方、保険会社としては、既存のチャネルでは開拓が難しいユーザー層を中心に、金融サービス仲介業者に期待していると想定される。その際には必要に応じて一定程度の開発コストが必要となろう。
最後にITインフラ面である。生命保険会社が金融サービス仲介業者と連携していくうえで、効率性や個人情報保護ルールの観点からAPI連携が期待される。しかしながら、多くの保険会社はAPIを公開していないうえ、基幹システムはメインフレームをべースとしており、クラウド化が徐々に始まった状況にあるため、カスタマイズでの開発コストも考慮に入れる必要があろう。
なお、第一生命において2020年11月にクラウド基盤「ホームクラウド」が稼働を開始しており、将来的にはAPIも見据えている点で注目すべき動きといえる。また、住友生命もAWSを活用したクラウド化を進めるなど、大手生命保険会社を中心にクラウド化に向けた動きが出てきており、今後のAPI化に向けた動きとして期待したい(山口泰裕)。
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