矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2021.07.16

【アナリストオピニオン】eパレット(e-Palette)は2020年代の『どこでもドア』である②

筋斗雲のイメージを具現化したトヨタのエコシステム

もしも現在の筆者が1990年代中頃のその勉強会にタイムスリップできたならば、「カーナビか、贅沢品だな」と言われた後に「ちょっと待ってください」と言い返せただろう。そして、さらに一言言ってやる。
「ちょっと待ってください。たしかに今のカーナビは高額商品だけれども、やがて低価格化していく。何よりカーナビは情報通信と融合することで、自動車を閉じられた世界から、外部の世界へとつなげる窓口になれると思います。カーナビこそが未来の自動車の姿につながる扉(=どこでもドア)になれると思います」
言い返すことで、勉強会の参加メンバーの意識を変化させて別の思考をもたらし、多少は世の中の役に立てたのではないか。もっとも言い返したからと言って、25年近く前の参加者を納得させられたかは不明であるが…。

それよりも、未来につなげるという点においてすごいのはトヨタである。トヨタはこの25年の間に、当時のイメージだった『筋斗雲』から名付けたKINTOという名前のモビリティサービスのブランドを世界30か国で立ち上げている。さらに2019年には国内で、同じKINTOという名前の車のサブスクリプションサービスの会社を立ち上げた。
トヨタは間違いなく1990年代から「必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる『筋斗雲』」をイメージして、25年間ずっと思い続け、ついには具現化したのだ。その構想力と実行力のすごさ。
たまに思い出して、「ああ、あの時ああすればよかったのに~」「こうすればよかったな~」と身もだえる筆者と比べても仕方ない。

もし比較するのならばappleの「iPhone」ではないか。当初はソニーの携帯音楽プレーヤ「ウォークマン」を追いこすべく作られた携帯音楽プレーヤ「iPod」であった。そして、その機能をすべて吸収したのが2007年に発売された同社のスマートフォン「iPhone」である。
「iPhone」におけるappleのすごさは、iTunesやAppStoreという、音楽やアプリの流通プラットフォームを構築し、それらソフトウェアのビジネスモデルをスマートフォン端末に付け足した点にある。アイフォンが発売されて10年以上たつが、ソフトウェアとハードウェアの垣根を越えてビジネスモデルを構築できている企業は少ない。インターネットITベンダはハードウェアが、ハードウェアメーカはソフトウェアが分からないからだ。
しかし、appleはソフトウェアの世界と、ハードウェアの世界をつなぐことで、新たなエコシステムを生み出し、それがその後の同社の大きな飛躍を可能にした。

トヨタも同じく、カーナビという情報系ハードウェアの『どこでもドア』を開き、そこにMaaSカーの予約・決済や音声認識HMI、自動運転、KINTOのようなグローバルなモビリティサービスといったソフトウェアサービスの世界に自由に出入りできるエコシステムを生み出している(森健一郎)。

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