矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2021.06.11

【アナリストオピニオン】IoT関連ビジネスへの参入では、成果を可視化しやすい領域へのアプローチを目指せ③

成果を可視化しやすい3分野での新規参入が進む

団塊世代が70代に突入した2015年前後から(多くの現場作業者が離職すると想定される年齢)、様々な産業分野で人手不足が顕在化したが、特に「勘と経験」による部分が大きな現場作業でこの傾向が強まった。

現在、国内での就業者数自体は拡大しているが、これは女性及び65歳以上の前期高齢者の就業が伸びているためで、現場作業者の中心となる「15~64歳の男性就業者数」は、ここ10年では微減基調が続いている(総務省統計局:労働力調査)。
今回のコロナ禍により、一時的には人手不足の緩和(有効求人倍率の低下)が見られたが、基本的には少子高齢化を背景とした日本の人口動態は不変で、中期的には人手不足は避けられない。この点は日本経済のアキレス腱となっている。

これらの点を踏まえて近年、企業ではデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを進めている。しかし急拡大するDXニーズに対して、従来のIT業界だけでは対応が難しく(人的リソース不足、システム開発の柔軟性の欠如、イノベーション創出力の限界、多様なニーズへの迅速対応など)、ここでIoT関連マーケットへの新規参入の拡大がある。

従来は、システム化や見える化自体がターゲットであったが、DXでは収集データを基にした価値創出や収益向上がターゲットになる。そのため、より成果を出しやすいマーケティング/サービス(売上向上、利益向上を可視化しやすい)や小売/流通(売上向上、利益向上を可視化しやすい)、製造(保全業務の高度化ニーズが大きい、省人化ニーズが高い)において、特に参入動向が活発化している。つまりIoTマーケットへの新規参入では、従来のような‘デジタル化’自体を目的としたアプローチよりも、より‘具体的な成果’を提供できる領域へのアプローチかポイントになる。

AI系での新規参入では、製造をターゲットとする傾向

注目度の高いAIベンダー系の新規参入事業者では、「製造(出現率52.0%)」をターゲットとした割合がやや抜けており、AIベンダー系でのターゲット設定が明確化している様子が伺える。
ここでは、予防保全などに代表される維持管理・保全業務、外観検査・検品などの品質保証、さらには全体最適化(稼働率向上など)などにフォーカスしたアプローチが顕著である。

尚、AI系(AIベンダー)での参入は125社で、本調査対象392社の約1/3が該当した。参入事業者では、「ABEJA」や「Preferred Networks」といったAI分野で確固たるスタンスを確立した有力ベンダーや、「トウキョウ アーチザン インテリジェンス㈱」や「㈱GAZIRU」、「Mantra㈱」のように2020年以降に設立された新興ベンダーもある。全体としては、圧倒的に2000年以降に設立された事業者が多い(早川泰弘)。

※全文・関連資料のご案内は以下よりご覧いただけます

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/323

https://www.yano.co.jp/market_reports/C62119500

早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 主任研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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