矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2020.03.13

【アナリストオピニオン】ITとオフィスの複雑な関係②

主要都市のオフィス需給は益々逼迫しており、東京等では供給量も大きく増えているにも関わらず、空室率は空前の低水準であるという。その要因としてIT系企業の人員の増加に伴う需要が強く、2019 年に竣工した東京の主なビルでも IT 企業の入居が目立つという。このように各地のオフィス需給のひっ迫は IT系企業の需要拡大による部分が大きく、人手不足が続くなか、若くて有能な人材を確保するには、良好なオフィス環境が必要であり、立地だけではなく内装や共用スペースを重視するテナントも増えているという。たとえばオフィス内にカフェを作ったり、ミーティングや協業するためのフリースペースを多く作るなど、通常の執務スペースだけではない、プラスアルファのオフィス需要が需要に貢献しているそうである。

本来時間や場所の制約を取り払い、自由な働き方も促進するのがITの特徴であるにもかかわらず、IT業界でも全員がますます一か所に集まって、大規模なオフィス空間を利用しているとは、何とも皮肉な現象である。特に働き方改革のひとつのソリューションとして期待されているのがリモートワークであるにも関わらず、である。日本は総じて国土の面積が狭く、通勤が比較的容易であることから、リモートワークが普及しづらいと言われてきた。しかし、育児や介護中の従業員にとっては、オフィスに毎日通勤することなく働けるリモートワークは好ましい働き方である。しかし、一方でオフィスの環境が益々充実すれば、それを享受できないリモートワーカーには逆に不利益になるようにも思われる。

また、リモートワークは地方創生に少なからず貢献すると期待されてきたが、実際には東京一極集中は益々進んでいる状況である。通勤に伴う様々なロスは大きな社会的コストになっており、通勤時間によるロス、ラッシュアワーに伴うロス、都心の一等地に大量のオフィスを構えるロスなどは、日本に特有のものである。しかし、フリーアドレスオフィスは、その解決策としてはあまりに微力であると感じさせられる。

日本には世界的に競争力のあるIT系企業は少ない。名ばかりの働き方改革ではなく、真の意識改革がなければ、日本のIT系企業の競争力は一向に高まらないのではないかと感じさせる話題であった。(野間博美)

---

全文は以下よりご覧いただけます

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/281

関連資料「2020 屋内位置情報ソリューションの可能性展望」

https://www.yano.co.jp/market_reports/C61117400

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
リサーチはマーケティング課題解決のための方法に過ぎません。誤った調査では課題の解決は不可能です。我々は、お客様の課題を丹念にお伺いさせて頂き、その解決のために最も有効と考えられるリサーチをご提案することを最重要視しています。

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422