矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2023.11.15

【アナリストオピニオン】インフラ保全で進むITテクノロジー活用!④

社会インフラ向けITソリューションの普及イメージ

今後のインフラ保全では、維持管理・運用業務にIT技術を活用するしかないと考える。
極論すると、「使わないインフラは保全もしない」といった対応も考えられるが、この考えが社会的・政治的に容認されるとは思えず、結局のところ、インフラ保全でのIT活用ニーズは高まっていくと見る。但し、当該マーケットが急激に伸びるといったことではなく、従来型インフラ保全と連動しながら、社会インフラ向けITソリューションが安定的に浸透すると予想する。

【分野別の社会インフラ向けITソリューションの普及イメージ】

道路分野
NEXCOグループでは、スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)構想により、高速道路の老朽化対策にICTや機械化を積極的に導入している。
台帳ソリューションやカメラ画像による近接目視点検を補完する技術が普及。
点検困難箇所では、ロボット対応が始まっている他、分析・評価段階ではAI・画像解析技術を使い、修復箇所の判定を行う取り組みも進んでいる。
鉄道分野
走行中の車両のデータを溜めて、予防保全的なアプローチを検討している。
港湾分野
ROV(Remotely Operated Vehicle:遠隔操作無人探査機)を用いた設備・施設点検が進展している。桟橋上部工点検用ROVでは、撮影画像に位置情報を付加することで3D化による精度向上につながっている。
ROVを用いた桟橋下面調査、UAV(ドローン)を用いた点検診断、非接触型肉厚測定装置を用いた測定システムの導入も始まっている。
河川分野
河川管理では、防災目的での流量や水位、降雨量などの定点監視(遠隔モニタリング)が行われている。さらに監視カメラとセンシング(水位計など)を併用して監視精度を高めるとともに、防災シミュレーションを探る動きも進む。
広域センシング技術を使った河道/堤防の効率的な点検・診断、ITを活用した河川関連構造物監視・点検の自動化といった仕組みも研究されている。
ダム分野
運営・管理/保守・点検分野においてIT/IoTの利活用が増える方向。
ダムITで期待されるのはIoTモニタリング。特に、人手による点検では効率が悪い、もしくは危険箇所での適用拡大が見込まれ、目視と経験に依存していた既存業務を、画像・センサーデータとクラウド、AI、ドローンなどを活用した座組に転換する取り組みが研究されている。
水関連(上水道、下水道、浄水場など)分野
水関連インフラでは、設備・機器の維持管理業務でのIT活用があり、近年ではIoTモニタリングが増えている。
中でも、下水道ポンプ監視(マンホールポンプ監視)に着目。下水道のマンホールポンプは設置場所が辺鄙な場合も多く、運用管理の効率化を図る取り組みとして、既にIoT型の遠隔モニタリングシステムを導入している自治体もある。
防災分野
防災分野では、危険個所監視などで「IoT×センサーネットワーク」や「ドローン活用」が、また減災分野では河川やアンダーパスなどでの「監視カメラソリューション」や「IoT×画像データ×AI」などが普及し始めている。
インフラマネジメント分野
将来的に、インフラの劣化診断を行う現場技術者の絶対数が不足すると予想され、診断判定などでAI/解析ソリューション活用が広まりつつある。
AIによる判断精度を向上させるためにはデータ量を増やす必要があり、そうなると、必然的にIoTへと向かわざるを得なくなる。当然、老朽インフラでの予防保全/予知保全への期待が出てくる。
現場作業支援分野
膨大数のインフラ設備の点検に対応して、音声による巡視点検や保全記録、日報・報告書作成の自動化(音声のテキスト化/台帳ソリューション)などの実装が始まっている。
ハンズブフリーで点検結果を入力することで、記録用紙を持たずに巡視点検記録の作成が可能になる。また点検中に異常箇所を発見した場合、これを撮影し、その場で概要を音声入力し、報告書への写真添付とコメント入力が注目される。(早川泰弘)
 

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/392

早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 主任研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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