株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の小売業向け基幹システム市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
【図表:小売業向け基幹システム市場規模推移・予測】
小売事業者における本部業務を統合的に管理・支援する小売業向け基幹システムの2025年度の国内市場規模は、ベンダー売上高ベース(初期開発・導入費用+利用料等)で273億円となった。
同システムの市場は、POSシステムの普及によるリアルタイムな売上データ収集の実現や多店舗展開の進展などを背景に、1980年代後半から1990年代にかけて形成された。以降、同システムは量販店から専門店や百貨店まで、業態や事業規模を問わず小売事業の運営に不可欠な基盤として定着してきたが、市場形成から20年以上が経過する中で、小売・流通事業者においては他業種と比較して多くのレガシーシステム(既存の旧システム)が残存するなど、システムの老朽化やブラックボックス化
このような状況の中、現在はレガシーシステムからの脱却(モダナイゼーション)を目指したリプレイス需要が、市場の成長を牽引する原動力となっている。
※ブラックボックス化とは、古いシステムの内部構造や仕様が不明確になり、保守・修正が困難になっている状態を指す
■直近の技術動向:AI活用による業務効率化支援に向けた取り組み
多くのベンダーは、AI活用による製品の機能強化を最重要テーマとして位置づけており、実装に向けた取り組みが加速している。
すでに一部のベンダーにおいては、AIを活用した需要予測・自動発注機能の実装が進む。具体的には、過去の売上実績やカレンダー情報、天候データなどに基づき、AIが各商品の最適な発注量を算出することが可能となっており、発注時間や廃棄ロスの削減など店舗における生産性向上に寄与している。また、AI開発に強みを持つ外部企業との提携により、予測の難易度が高い特売品などに対しても精度の高い需要予測を可能とする取り組みもみられる。
今後は、人による業務や判断を代行するAIエージェント機能の実現を目指しているベンダーが多い。小売事業者では人手不足の問題が顕在化しており、各業務において判断を行う際、熟練人材の必要なノウハウの継承が難しくなっている。この状況をふまえ、今後数年間で、業務効率の向上、および熟練人材の知見や経験に基づく属人的な運用の解消を支援する機能の実装が一層加速することが見込まれる。
小売業向け基幹システム市場は、レガシーシステムからのリプレイス需要や、人手不足を背景とした業務効率化ニーズなどを要因として引き続き緩やかな成長基調を継続し、2030年度の国内市場規模はベンダー売上高ベース(初期開発・導入費用+利用料等)で、315億7,000万円まで拡大すると予測する。また、小売事業者間で、業務プロセスをシステムの標準機能に合わせる「Fit to Standard」の考え方が徐々に浸透してきている点も市場の成長を後押しすると考える。
事業者別にみると、一部のベンダーにおいては、人材確保・育成の難易度が高まっていることなどを背景に小売業向け基幹システム事業を縮小する動きがみられるものの、小売業に特化したベンダーなどにおいては業界への知見や周辺システムを含めた総合的な提案力を活かした拡販が進み、市場全体としては堅調に推移する見通しである。
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調査対象:小売業向け基幹システムベンダー
調査期間:2026年4月~7月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)および文献調査併用
※小売業向け基幹システム市場とは:本調査における小売業向け基幹システムとは、仕入管理、在庫管理、販売管理といった小売・流通業における本部基幹業務の管理機能を有するパッケージシステムを指す。汎用ERP単体、POS専業システム、EDIなどの周辺システム単体、およびハードウェア売上は原則対象外とするが、これらを一体提供し、かつ本部基幹機能を中核として有する製品は対象とする。市場規模は、ベンダー売上高ベース(初期開発・導入費用+利用料等)で算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
小売事業者における基幹業務を支援するパッケージシステム(量販店向けおよび専門店・百貨店向け)
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