矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2024.12.09

メタバースの国内市場動向調査を実施(2024年)

2023年度の国内メタバース市場規模は前年度比35.3%増。地域格差の解消に向けた取組みとして自治体におけるメタバースが注目、需要が拡大している。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のメタバース市場を調査し、市場概況、メタバース事業者の動向を明らかにした。

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【図表:メタバースの国内市場規模推移・予測】

【図表:メタバースの国内市場規模推移・予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:市場規模は、メタバースプラットフォーム、プラットフォーム以外(コンテンツ、インフラ等)、メタバースサービスで利用されるXR(VR/AR/MR)デバイスの合算値。
  • 注:エンタープライズ(法人向け)メタバースとコンシューマー向けメタバースを対象とし、ゲーム専業のメタバースサービスは対象外とする。
  • 注:2024年度は見込値、2025年度は予測値。

 

メタバースの国内市場の概況

2023年度の国内メタバース市場規模(プラットフォーム、コンテンツ・インフラ等、XRデバイスの合算値)は前年度比135.3%の1,863億円と推計し、2024年度は同147.6%の2,750億円まで成長する見込みである。2023年度は、コロナ禍で企業のDX化が加速し、メタバース市場への新規参入企業が急増した2021~2022年度に比べ、一時的に成長率が減速した。

現状、国内のメタバース市場はPoC(Proof of Concept:概念実証)の段階を経て戦略的な投資に進む企業と、ROI(投資収益率)が向上せず事業から撤退する企業への二分化が進んでいるとみられる。2023年度から2024年度にかけて、メタバース役所(オンラインで一部の行政サービスを利用できるサービス)や、地域復興イベントなど自治体におけるメタバースの導入が積極的に行われている。また、産業分野においては教育や小売、エンターテイメントなどの領域で具体的なユースケースが普及しており、メタバースは特定分野で実用的な価値が認識される段階に進んでいると考える。

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メタバースの国内市場の注目トピック

■自治体におけるメタバースの需要拡大
自治体におけるメタバースの活用は、特に地域格差の解消に向けた取り組みとして注目されている。メタバースは、空間と時間の制約を受けずに活動できるというメリットがあり、今後、地域格差を解消する手段としての活用が一層進む見込みである。具体的には、下記のような分野が挙げられる。

・教育分野での取り組み
過疎地や離島といった教育資源が限られる地域では、メタバースを使った遠隔教育が導入されている。例えば、VRや3D空間を利用して、生徒が地理的な制約を超えて都市部の授業や専門的な教育プログラムに参加できる環境を提供している。これにより、物理的に参加が難しい地域でも、同等の教育を受ける機会が生まれる。その他、メタバースを活用した、不登校の子どもを支援するための自治体の取り組みが増えている。
・医療サービスの拡充
医療資源が不足している地域では、メタバースを活用した遠隔診療や医療教育が試験的に行われている。医師や医療従事者が仮想空間で診療や相談を行うことで、過疎地の住民が都市部に移動せずに高度な医療サービスを受けることが可能になる。また、医療従事者のトレーニングにおいても、メタバース内で技術習得が行われることで、地域の医療レベルが向上することが期待されている。
・観光産業の振興
地域振興の一環として、地方の観光地をメタバース上に再現し、仮想観光を促進する事例も増えている。これにより、都市部に住む人々や外国人がメタバース空間を通じて地方の観光地を仮想観光体験でき、地域の魅力を広く発信する機会が増加する。実際の訪問者を増やす前段階として、メタバース内でのプロモーション活動が重要な役割を果たしている。

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メタバースの国内市場の将来展望

現状、国内市場においては、グローバル市場に比べてメタバースが消費者にまだ十分浸透していない。特に地方や高齢者層においては、メタバースに対する認知度が依然として低い。現在、メタバース関連業界では国内のメタバース市場を黎明期または幻滅期にあると認識されており、成功するビジネスモデルがまだ形成途中の段階であると考える。
このような状況下で、今後1~2年においては、爆発的な成長よりも継続的な投資やAIなどの周辺技術の研究開発が進み、エンタープライズ(法人向け)市場からコンシューマー市場へと徐々に浸透していく形になると予測する。5年程の長いスパンでみると、特にXRデバイスと組み合わせることで市場が成長していく可能性があると考えられる。

​今後、コンシューマー市場にメタバースが広く浸透するためには、XRデバイス普及のタイミングが重要な鍵になると考える。これを前提に、2027年度以降にはXRデバイスの進展に加えて、AI技術によるコンテンツ開発の効率化・高度化がさらに進み、コンシューマー市場の成長が加速することで、2028年度の国内メタバース市場規模(プラットフォーム、コンテンツ・インフラ等、XRデバイスの合算値)は1兆8,700億円に達すると予測する。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 国内メタバース市場規模推移と予測
  • Meta メタバース関連業績
  • メタバースプラットフォームのビジネス構造とステークホルダー
  • 主要メタバースプラットフォーム一覧
  • メタバース関連団体

■イベント

  • リアル×バーチャルのハイブリッドファッションイベント
  • 「SANRIO Virtual Festival」VRテーマパーク
  • 「メタメタ大作戦」テレビ番組連携・体験型イベント
  • 「ZIKU」ビジネスに特化したSaaS型イベントプラットフォーム
■トレーニング・訓練
  • 「アイシンXRクエスト」メタバースで交通安全教育
  • 製造・建設・軍事産業向け没入型メタバーストレーニング
  • メタバースの細胞培養実験施設で専門スキルトレーニング
■教育
  • 「バーチャル校舎」NIJINアカデミーの不登校メタバーススクール
  • 「LUNARCRAFT」JAXAのメタバースゲーム教材
■マーケティング/EC
  • 「「S-PACE」小学館の膨大なコンテンツのメタバース
  • 「ブルボンメタバース」ファンエンゲージメント、販促
  • 「メタバース百貨店」クリエイターと百貨店が共生するメタバース事業
  • 「MONEY TRADE FIGHT by松井証券」投資や金融をメタバースゲームで学ぶ
  • 「ZEPETO」企業のマーケティング&ユーザークリエイティブ活動が共存するメタバースプラットフォーム
■医療
  • メタバースを活用した希少がん患者同士の交流
  • メタバース上で「心理カウンセリング」
  • 「MRI検査体験メタバース」子どもの恐怖心と不要な薬物使用を減らす
■自治体(観光振興、行政サービス、地域創生など)
  • 「メタバースヨコスカ」地域観光メタバース
  • 「メタバース区役所」メタバース上で行政サービス運営
  • 「ともいきメタバース」共生社会の実現に向けた障がい者支援
■建設・産業・社会インフラ
  • 「メタバースを用いた川づくり」効率的なインフラ整備
  • 「メタバース展示場」で巨大設備やニッチな商材の試演
  • 「WHITEROOM」各種産業現場の作業支援のためのプラットフォーム
  • 「鉄道メタバース」鉄道運用の効率化・高度化
■その他
  • 「メタバース婚活」地方の結婚推進、少子化対策

     

①メタバースプラットフォーム事業者
②メタバース企画制作・マーケティング支援事業者
③メタバースインフラ提供事業者

  • 市場参入の経緯一覧
  • メタバースサービス概要と特徴一覧
  • ビジネスモデル/スキーム一覧
  • 業績動向一覧
  • 顧客動向一覧
  • AIを活用した取り組み一覧
  • 事業拡大のための取り組み/今後の注力分野一覧
  • 課題・問題点一覧
  • メタバース市場に対する見解一覧
  • 国内メタバース市場規模推移と予測
  • XRの定義
  • 主要HMD製品
  • HMD国内出荷台数実績/予測
  • 主要スマートグラス製品
  • 国内 XR市場規模実績/予測
  • VTuber人数推移VTuberの主要なマネタイズ方法
  • VTuberの国内市場規模推移(2020年度~2023年度)
  • 株式会社NTTコノキュー(DOOR)
  • 株式会社m-Lab(V-expo)
  • 株式会社ガイアリンク(Virbela、FRAME)
  • クラスター株式会社(cluster)
  • GMO NIKKO株式会社
  • JP UNIVERSE株式会社(PEGASUS WORLD KIT)
  • 株式会社STYLY(STYLY)
  • 大日本印刷株式会社(PARALLEL SITE/PARALLEL ME)
  • TIS株式会社(Buralit)
  • 日本アイ・ビー・エム株式会社
  • 株式会社HIKKY
  • 株式会社Urth(metatell)
  • リアルバーチャル株式会社

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関連リンク

■アナリストオピニオン
メタバースの時代はいつくるのか

■デイリーコラム
【アナリスト便り】「2024-2025 メタバースの市場動向と展望」を発刊

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    • AIと組み合わせることで成長する産業(教育、行政など)
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調査要綱

調査対象:メタバース関連の技術やサービスを提供する国内事業者
調査期間:2024年8月~10月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

<本調査における「メタバース」の定義と市場対象>
※本調査におけるメタバースとは:
仮想と現実を融合したインターネット上に構築された3次元空間で、ユーザー同士が自分のアバターを操作して交流したり、様々なサービスやコンテンツが利用できる環境をメタバースと定義する。
なお、メタバースは、サービスの対象によって大きくエンタープライズ(法人向け)メタバースとコンシューマー向けメタバースに分類することができるが、本調査ではその両方を調査対象とする。但し、ゲーム専業のメタバースサービスは対象外とする。

​本調査におけるメタバース市場規模は、メタバースプラットフォーム、プラットフォーム以外(コンテンツ、インフラ等)、メタバースサービスで利用されるXR(VR/AR/MR)デバイスの合算値。プラットフォームとプラットフォーム以外は事業者売上高ベース、XRデバイスは販売価格ベースで算出している。

<市場に含まれる商品・サービス>
メタバースを活用した各種サービス

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