矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2024.05.29

保険会社におけるIT活用動向に関する調査を実施(2024年)

生命保険会社や損害保険会社では、業務効率化の側面でIT活用が進んでいる。特に生保は「既契約者対応」、損保は「保険金支払査定」においてAIが活用されている。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、大手生命保険会社・大手損害保険会社のIT技術を活用した取組事例を調査し、さらに業務分類毎の集計結果をもとに保険会社の関係者との意見交換を実施して、業務におけるIT技術活用傾向を分析した。?ここでは、業務領域別のIT活用動向の一部を公表する。

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【図表:業務領域別のIT活用動向】

【図表:業務領域別のIT活用動向】
  • 矢野経済研究所作成

 

保険会社におけるIT活用動向の概況

本調査では、大手保険会社のニュースリリースなどの公開情報を中心にIT技術を活用した保険会社の取組事例を取得し、次に当社独自で定義した業務の6分類毎に事例件数を集計し、傾向などを整理した。 業務分類はあえて生命保険会社・損害保険会社共通で定義しており、「1.商品・サービスの企画開発」「2.営業支援」「3.引受査定」「4.既契約者対応」「5.保険金支払査定」「6.業務支援全般」の6分類とした。
さらに集計結果をもとに、保険会社の関係者との意見交換を実施することで、それぞれにおけるIT活用の実態について分析し、総合評価を3段階(◎、〇、△)で作成した。

調査の結果では、まず生命保険会社では特に「4.既契約者対応」の業務領域で取組が進んでいた。生命保険会社では、保険契約者からの契約見直しや名義変更などの問い合わせに対する手続き対応や、問い合わせに対する照会対応などを行っており、日々の問い合わせ件数は膨大である。自動化で済む問い合わせはAIに任せ、人が対応すべき複雑な案件をオペレーターが対応するなど棲み分けを進めている。

次に、損害保険会社では「5.保険金支払査定」の業務領域、特に損害調査の領域でAI活用が進んでいる。損害保険領域では過去からの自然災害に伴う調査データなどの知見を蓄積している。その為、膨大な学習データとAIの画像認識の組み合わせが、損害調査への活用において親和性が高い。また、近年、自然災害が頻発化・激甚化しており、災害時における損害調査対応が必要となっていたことから、自ずと各損害保険会社で取組事例が増えたと推察する。

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保険会社におけるIT活用動向の注目トピック

■生成AIは書類作成支援など社内業務サポートとして導入が進む一方、顧客対応には現状不向き
生成AIは2023年ごろから瞬く間に話題となり、個人・法人ともにその活用に期待が高まっており、大手保険会社でも期待と注目を集めている。
生命保険会社・損害保険会社問わず、まずは社内の業務サポートとして生成AIの導入を進めている。現状では保険業界ならではの使い方ではなく、書類の作成支援や社内情報の検索、アイデア出しなど、社員の業務全般の支援としての生成AI活用から始めている状況にある。

一方、保険の契約内容の問い合わせなど保険業務特有の場面における生成AIの活用については、保険は金融商品ゆえ、生成AIのハルシネーション(実際には存在しない情報を生成する現象)を含め、情報精度が十分ではないこともあり、現状難しいようだ。

膨大な量のマニュアルや約款などを学習させ、例えば「顧客からの問い合わせへの回答を生成AIに作成してもらう」といった使い方が望まれるものの、現状では生成AIの回答は100%正しいとは言い難い状況にある、との意見が聞かれた。?保険は金融商品ゆえ、顧客に誤った回答をして万が一にも顧客に不利益を被ることがあってはならない点で、顧客が関わる場面での利用は時期尚早とみる。また、利用する保険会社の社員側でも、生成AIの回答は間違える可能性があることを前提として認識しておくなど、使い方のリテラシーを高める必要があると考える。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 本レポートにおいて取り上げた事例の定義
  • 保険会社における業務分類の定義
  • 保険会社の業務分類と顧客との関係
  • 生保・損保のIT活用の事例数
  • 業務分類別のIT活用取組事例(生保・損保)
  • 業務分類別のIT活用取組事例(生保・損保)※再掲
  • 業務分類別のIT活用取組事例件数(生保・損保)
  • 業務領域別IT活用動向
  • AIと生成AIの適用領域の違い
  • 業務分類別のIT活用取組事例件数(生保・損保)※再掲
  • IT技術の活用先
  • 保険業界におけるIT活用の可能性と課題
  • 保険金不正検知の種類
  • 個人保険の新規契約高・新規契約件数推移
  • 個人保険の保有契約高・保有契約件数推移
  • 直近加入契約(民保)の加入チャネル
  • 加入意向のあるチャネル
  • 登録営業職員数の推移
  • 生保における業務提携などに関する動き
  • 正味収入保険料の推移
  • 2022年度大手損害保険会社の自動車保険市場のシェア
  • 正味収入保険料の推移
  • 損害保険の代理店数推移
  • 人口推移
  • 自動車保有台数 推移
  • 新車・年別販売台数(登録車+軽自動車) 推移
  • 交通事故発生件数・死者数推移
  • 日本付近で発生した主な被害地震
  • 地震保険による保険金支払額 (保険金支払額順)
  • 主な風水害による被害状況
  • AIにおける生成AIの立ち位置
  • 生成AIの主な種類
  • ユーザー特徴
  • ユーザーの生成AI活用予測
  • メタバースの国内市場規模予測
  • パブリック/コンソーシアム/プライベートブロックチェーンの比較
  • ブロックチェーンの3つのレイヤー
  • 電子契約とスマートコントラクトの違い
  • 金融/非金融におけるブロックチェーンの活用マップ
  • ブロックチェーン活用サービス市場規模推移(2017年度~2021年度)
  • ブロックチェーン活用サービス市場規模推移(2017年度~2021年度)
  • 本レポートにおいて取り上げた事例の定義
  • 保険会社における業務分類の定義
  • 保険会社の業務分類と顧客との関係
  • 生保・損保のIT活用の事例数
  • 時系列でみるIT活用の取組事例数(生保・損保合算)
  • 時系列でみる生保・損保別のIT活用の取組事例数
  • 業務分類別の取組事例(生保・損保合算)
  • 保険会社における業務分類の定義(再掲)
  • 取組テーマ(生保・損保合算)
  • 取組テーマのキーワード(生保・損保合算)
  • 技術キーワード(生保・損保合算)
  • 業務分類別のIT活用の取組事例(生保)
  • 業務分類別の取組事例件数(生保)
  • 取組テーマ(生保)
  • 時系列でみる取組事例数(生保)
  • 時系列×業務分類(生保)
  • 時系列×取組テーマ(生保)
  • 技術キーワード(生保)
  • 技術キーワード(生保)
  • 業務分類別×技術キーワード(生保)
  • 業務分類別のIT活用の取組事例(損保)
  • 業務分類別の取組事例件数(損保)
  • 取組テーマ(損保)
  • 「防災」に関わる取組事例
  • 時系列でみる取組事例数(損保)
  • 時系列×業務分類(損保)
  • 時系列×取組テーマ(損保)
  • 技術キーワード(損保)
  • 時系列×技術キーワード(損保)
  • 技術キーワード×業務分類(損保)

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調査要綱

調査対象:大手生命保険会社、大手損害保険会社
調査期間:2023年12月~2024年4月
調査方法:当社専門研究員による文献調査、ならびに直接面談(オンライン含む)併用

※保険会社におけるIT活用動向とは:
本調査では、大手保険会社のニュースリリースなどの公開情報(2019年1月~2024年2月)を中心にIT技術を活用した保険会社の取組事例を取得した。次に、生命保険会社・損害保険会社での違いや共通項など分析するために、当社独自で定義した保険会社の業務を6分類したうえで、業務分類毎に事例件数を集計し、傾向などを整理した。
さらに集計結果をもとに、保険会社の関係者との意見交換を実施することで、ニュースリリースでは見えてこない生命保険会社・損害保険会社、それぞれにおけるIT活用の実態について分析した。

当然、生命保険会社と損害保険会社では性質が違う業務があるものの、生保と損保のIT活用実態について、なるべく平準化した言語を用いて分析すべく、本調査ではあえて業務分類を生命保険会社・損害保険会社共通で定義している。業務分類は、「1.商品・サービスの企画開発」「2.営業支援」「3.引受査定」「4.既契約者対応」「5.保険金支払査定」「6.業務支援全般」の6分類とした。

なお、IT技術の活用に関して、紙の申込書類をWebでの申込に変えたといった、いわゆるデジタル化の動きに関しては除外した。

<市場に含まれる商品・サービス>
保険会社におけるIT活用動向

小田 沙樹子(オダサキコ) 研究員
お客様のご要望や課題を丁寧にヒアリングし、お客様のお役に立てる解決策をご提案させていただきたいと考えております。 取材でしか得られない価値ある情報をお客様にご提供できるよう、日々精進してまいりたいと思います。

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