矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2024.05.07

ワイヤレスIoT市場に関する調査を実施(2024年)

2023年度のワイヤレスIoT市場規模は2,912万デバイスの見込み。新たな通信規格へのシフトが進む2027年度以降、市場全体としてはシュリンクする見通し。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、BtoB向けワイヤレスIoTデバイスを調査し、通信規格別のワイヤレスIoT市場規模、需要分野別の動向、将来展望などを明らかにした。ここでは、通信規格別のワイヤレスIoT市場規模、分野別の普及動向について、公表する。

※920MHz帯LPWA(Wi-SUN)、920MHz帯LPWA(Wi-Fi HaLow)、その他920MHz帯LPWA(SIGFOX、LoRa、ZETA、ELTRES、Sidewalkなど)、セルラーネットワーク(3G、4G/LTE)/セルラー系LPWA(NB-IoT、LTE-M)

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【図表:通信規格別IoT市場規模推移・予測】

【図表:通信規格別IoT市場規模推移・予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:IoTデバイス数ベース
  • 注:2023年度は見込値、2024年度以降は予測値

 

ワイヤレスIoT市場の概況

IoTの適用分野では、工場やオフィス・建物といった、有線の信頼性や安定性に根強いニーズがある分野もあるが、近年では無線通信の信頼性/利便性、柔軟性などが向上している。併せて、通信及びデバイスコストの低廉化や多様化もあって、ワイヤレスタイプのIoTシステムが増えている。 また今後は、屋外タイプの画像系ソリューション(画像系IoT)が増える見通しでもある。
画像系IoTの用途は、防犯/セキュリティや防災/災害監視、インフラモニタリング、圃場/生体監視、 エネルギー施設監視、遠隔医療などが想定される。画像系IoTの場合は、高速・大容量通信に対応したネットワークが必要となるため、無線通信規格の中ではセルラーネットワーク(4G/LTE、5G)やセルラー系LPWA(NB-IoT、LTE-M)、Wi-Fi Halow、Wi-Fi 6/Wi-Fi 7などが有望視されている。

本調査の対象となる通信規格(Wi-SUN、Wi-Fi HaLow、その他920MHz帯LPWA、セルラーネットワーク/セルラー系LPWA)において、2023年度のワイヤレスIoT市場規模は前年度比20.3%増の2,912万デバイスを見込む。通信規格別の内訳をみると、セルラーネットワーク/セルラー系LPWAが2,200万デバイス(構成比75.5%)と7割を超えており、次いで電力スマートメーター向けが主体のWi-SUNが632万デバイス(同21.7%)、その他920MHz帯LPWAが80万デバイス(同2.7%)となった。

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ワイヤレスIoT市場の注目トピック

■高帯域Wi-Fi市場
Wi-Fi規格は2.4GHz帯から5GHz帯へと基本的に高帯域化しており、通信速度が速くなっている。Wi-Fi 6Eからは6GHz帯も対象になっている。

大容量データの高速通信が可能な高帯域Wi-Fiは、製造業や建設業、物流倉庫などでの利用がターゲットとなる。

製造業では、生産設備・機器からのデータ収集や、工具類の位置情報管理、ネットワークカメラの画像データ収集、AGVの運行管理/自動運転、圧力センサ・流量センサ・温度センサ/電力量計等の各種センサ類からのデータ収集、PLCからのデータ収集、産業用ロボットからのデータ収集などが対象業務となる。

建設業では、作業員の位置データや、重機・建機/部材の位置情報、作業ロボットの位置情報、危険位置アラート、監視カメラデータ収集、作業員のバイタルデータ収集、作業現場の環境情報収集、重機・建機の遠隔操作時のモニタリングなどとなる。

物流倉庫では、在庫品の位置情報や、フォークリフト等物流機器の運行管理、ネットワークカメラの画像データ収集、AGVの運行管理/自動運転、作業員のバイタルデータ収集、倉庫の温湿度情報、物品の位置情報、輸送中の温度管理などがターゲットになる。

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ワイヤレスIoT市場の将来展望

ワイヤレスIoT市場は、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限などの影響を受けた2020年度から2023年度においてもおおむね好調を持続しており、2024年度での市場規模は前年度比8.7%増の3,165万デバイスと予測する。
当該市場はコロナ禍の逆風で減速した時期もあったが、行動制限などが緩和されたことで保留案件やペンディング案件も順調に回復し、さらにPoC(概念検証)から実装への進展も見られた。通信規格別では、電力スマートメーターへの導入が進んだWi-SUNの伸び率は減速したものの、IoTマーケットの中核をなすセルラー系LPWAを含むセルラーネットワークが好調で、当該市場の拡大を牽引した。

また今後は、コネクテッドカーなど自動車関連や、スマートメーターソリューションなどエネルギー関連、物流倉庫や製造業、建設業、介護施設での見守りなど位置情報系IoTシステムが牽引する見込みである。
但し、2025年度以降では、セルラーネットワークにおいて「3G/4G→5G」へのシフトが進み、本調査対象のセルラーネットワーク規格(3G、4G/LTE、NB-IoT、LTE-M)は縮小が見込まれる。この点を主因として、本調査対象市場全体としては2025~2026年度をピークにシュリンクする蓋然性は高いとみる。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 調査対象とした周波数帯及び規格
  • 機能別の周波数帯活用イメージ
  • ワイヤレスIoTでの問題点・課題
  • 分野別のIT活用での問題点・課題
  • IoT/収集データの活用イメージ
  • 周波数帯別のIoT市場規模推移(デバイス数ベース:2020~2030年度予測)
  • Wi-SUN市場規模推移(2020~2030年度)
  • Wi-Fi HaLow市場規模推移(2020~2030年度)
  • 4GHz帯市場規模推移(2020~2030年度)
  • その他920MHz帯LPWA市場規模推移(2020~2030年度)
  • IoTが生み出す価値イメージ
  • 分野別の基礎データ
    • 物流/倉庫関連での基礎データ
    • 流通小売での基礎データ
    • 防犯/セキュリティ関連での基礎データ
    • 医療・介護での基礎データ
    • 社会インフラ/防災関連での基礎データ
    • 農林水産/畜産での基礎データ

■Wi-SUN

  • 電力各社のスマートメーター導入計画
  • Wi-SUN市場規模推移(2020~2030年度)
  • メーター関連での「Wi-SUN」の可能性
  • セキュリティ/見守りでの「Wi-SUN」の可能性
  • インフラ/防災での「Wi-SUN」の可能性
■WiFi-HaLow
  • Wi-Fi HaLow市場規模推移(2020~2030年度)
■2.4GHz帯市場(セルラーネットワーク含む)
  • 無線LAN(Wi-Fi)の世代推移>
  • 配膳ロボットの種類
  • 電子棚札のイメージ
  • 2.4GHz帯市場規模推移(2020~2030年度)
■その他920MHz帯LPWA市場
  • その他920MHz帯LPWA での期待分野/用途
  • その他920MHz帯LPWA での需要分野と用途一覧
  • その他920MHz帯LPWA市場規模推移(2020~2030年度)
  • メーター関連での「その他920MHz帯LPWA」の可能性
  • 倉庫・物流での「その他920MHz帯LPWA」の可能性
  • セキュリティ/見守りでの「その他920MHz帯LPWA」の可能性
  • インフラ/防災での「その他920MHz帯LPWA」の可能性
  • 物流/倉庫関連での基礎データ
  • 社会インフラ/防災関連での基礎データ
  • 防犯/セキュリティでの基礎データ
  • 医療・介護での基礎データ
  • 農林水産/畜産での基礎データ
■高帯域Wi-Fi市場
  • Wi-Fi規格の推移
  • 製造業での高帯域Wi-Fi
  • 建設業での高帯域Wi-Fi
    • 古野電気事例:ウェーブガイドLANの概要
    • 大成建設事例:「T-BasisX」の概況
  • 物流での高帯域Wi-Fi
    • 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)
    • エイチ・シー・ネットワークス(株)(旧日立電線):次世代物流システム構築サービスのイメージ
  • 農業/農機での高帯域Wi-Fi
    • 東京型スマート農業プロジェクト①
    • 東京型スマート農業プロジェクト②
    • 東京型スマート農業プロジェクト③
    • 東京型スマート農業プロジェクト④
  • 産業別IoTでの主な広帯域Wi-Fi活用事例
    • 産業別IoTでの広帯域WiFi活用用途
■920MHz帯RFID市場
  • 920MHz帯RFIDタグの種類
  • 920MHz帯RFIDタグの参入事例
  • 医療分野におけるRFIDの利用形態
  • 製造分野におけるRFIDの利用事例
  • 物流におけるRFIDの利用形態
  • 「IoT×RFID」の需要期待分野
  • 920MHz帯RFIDでの需要分野と用途一覧

 

■エネルギー関連

  • エネルギー/スマートメーター関連基礎データ
■社会インフラ関連
  • 建設後50年以上経過する社会資本
  • 公共事業費の推移(2004~2022年度)
  • 社会インフラでのIT活用の背景
  • 社会インフラ向けITソリューション市場規模推移(2018~2027年度予測)
■製造/工場
  • 工場向けシステム投資額推移(2020~2027年度予測)
  • 製造/工場でのIoT活用時期
  • IT/IoT活用の蓋然性が高い設備・機器
■倉庫・物流
  • 3PL市場規模と年間成長率の推計
  • 産業車両生産実績の推移
  • 無人搬送車(AGV)のシステム納入数と台数の推移
  • 物流/倉庫関連での基礎データ
■自動車
  • 自動車関連製造業の構造
  • 自動運転のレベル別内容
  • 自動車関連でのデータ
■セキュリティ
  • 刑法犯認知件数総数および住宅に関わる犯罪認知件数の推移
  • 主な鉄道会社及び路線の列車内防犯カメラ設置率
  • 需要先別鉄道車両生産実績の推移
  • ホームセキュリティ(機械警備)市場規模推移
  • 純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移
  • 非住宅の機械警備対象施設数の推移
  • 業種別の店舗数上位外食チェーンの店舗数推移
  • コンビニエンスストア大手3社の店舗数推移
  • コンビニエンスストア店舗数の推移
  • サービス付高齢者住宅の棟数と戸数の推移
  • 高齢者人口と高齢者のみの世帯数の推移
■ヘルスケア
  • 在宅医療を受けた推計外来患者数の推移
  • 訪問診療を行う医療機関数の推移
  • 在宅療養支援診療所・病院の届出数の推移
  • 建設業就業者数の推移
  • 大手建設会社の従業者数の推移
  • 輸送・機械運転従事者数の推移
  • 法人タクシー運転者数と個人タクシー事業者数の推移
■農林水産・畜産
  • 園芸用施設面積及びガラス室・ハウスの1棟あたり実面積と経営実農家数
  • 花卉用園芸施設の設置実面積及びガラス室・ハウスの経営実農家数推移
  • 果樹用園芸施設の設置実面積及びガラス室・ハウスの経営実農家数推移
  • 高度な環境制御を行う植物工場・大規模施設園芸の施設数推移
  • 販売目的の水稲作付経営体数と作付面積
  • 販売目的の露地野菜作付経営体数と作付面積
  • 販売目的の果樹露地栽培経営体数と作付面積
  • 肉用牛の総飼養頭数規模別の経営体数
  • 肉用牛の総飼養頭数規模別の飼養頭数
  • 養豚の総飼養頭数規模別の経営体数
  • 養豚の総飼養頭数規模別の飼養頭数
  • 乳用牛の総飼養頭数規模別の経営体数
  • 乳用牛の総飼養頭数規模別の飼養頭数
■自然・環境計測
  • 放射線量測定設備の設置件数
  • 設置主体別・地方別の震度観測点件数(2023年)

 

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関連リンク

■レポートサマリー
ローカル5Gソリューション市場に関する調査を実施(2024年)
IoT/M2M市場に関する調査を実施(2023年)

■アナリストオピニオン
周波数帯別(ネットワーク別)に見たワイヤレスIoTマーケット動向

■同カテゴリー
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   Aパターン
  • セグメント別の動向
    • Wi-SUNの動向
    • Wi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)の動向
    • セルラーネットワーク/セルラー系LPWAの動向
  • 注目トピックの追加情報
    • その他920MHz帯LPWA市場(SIGFOX、LoRa、ZETA、ELTRES、Sidewalkなどを対象)
  • 将来展望の追加情報
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調査要綱

調査対象: MNO(移動体通信事業者)、その他通信事業者、業界団体、ITベンダー、ユーザ企業等
調査期間:2023年12月~2024年3月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話による調査、ならびに文献調査併用

※通信規格別IoT市場とは:BtoB向けワイヤレスIoT市場を対象に、以下の通信規格別マーケットを調査した。

  • 920MHz帯LPWA(Wi-Fi HaLow)
  • 920MHz帯LPWA(Wi-SUN)
  • その他920MHz帯LPWA(SIGFOX、LoRa、ZETA、ELTRES、Sidewalkなど)
  • セルラーネットワーク(3G、4G/LTE)/セルラー系LPWA(NB-IoT、​LTE-M)

※市場規模はIoTデバイス数ベースで算出した。
※BtoB向けIoTデバイスは、スマートメーターや各種センサー、監視カメラ、タブレット、各種設備・機械、ドローンなど、通信機能を内蔵した機器が該当する。

<市場に含まれる商品・サービス>
IoT端末/IoTデバイス、通信モジュールなど

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早川 泰弘(ハヤカワ ヤスヒロ) 主任研究員
産業調査/マーケティング業務は、「机上ではなく、現場を回ることで本当のニーズ、本当の情報、本当の回答」が見つかるとの信念のもと、関係者各位との緊密な関係構築に努めていきます。日々勉強と研鑽を積みながら、IT業界の発展に資する情報発信を目指していきます。

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