ワイヤレスIoT市場※1を周波数帯別(ネットワーク別)で見た場合、2010年代後半までは、セルラー系IoTが大きな比重を占めていた。具体的には、2G/3G/4Gといったセルラー回線が主なIoT向けネットワークであった。
※1.ワイヤレスIoTにおけるネットワークとは、デバイスや機器・装置などから集めたデータを、クラウド/サーバに上げるまでの部分を指す。
しかし2010年代後半以降、920MHz帯やLPWAといったIoT向けネットワークが注目され、例えば「Wi-SUN」は電力スマートメーター向けネットワークとしての採用もあって、累計では4,000万回線を超える普及状況となっている。また高帯域Wi-Fi規格も続々と登場しており、これらも機能面での強みを生かした普及拡大が予想される。
このようにワイヤレスIoT市場では、非セルラー系ネットワークが急速に登場・普及しており、2020年前後から高伸長に転じた当該マーケットの下支え役となっている。
尚、ワイヤレスIoT市場で利活用されるネットワークの概要は下表の通り。
【図表1:調査対象とした周波数帯及び規格】
矢野経済研究所作成
ワイヤレスIoTの適用分野を見ると、工場やオフィス・建物など、依然として有線が根強い分野もある。しかし近年では、無線通信の信頼性/利便性、柔軟性などが向上。併せて通信及びデバイスコストの低廉化や多様化などもあって、ワイヤレスタイプのIoTシステムが増えている。
また今後は、屋外型IoT及び画像系IoTが増える見通しである。用途としては、「防犯/セキュリティ、防災、設備・機器/構造物モニタリング、圃場/生体監視、エネルギー施設監視、遠隔医療、見守り」などが想定される。
尚、画像系IoTの場合、高速・大容量通信に対応したネットワークが必要となるため、セルラー回線(4G/LTE、5Gなど)やセルラー系LPWA(LTE-M、NB-IoT)、さらに将来的にはWi?Fi-HalowやWiFi6/WiFi7などが有望視される。
下にある図表2では、IoTネットワークに求められる機能を軸として、周波数帯別(ネットワーク別)に見た分類イメージを考えた。
IoTでは、その用途によって求められるネットワーク機能が決まるため、各需要分野の特徴に沿ったネットワークが適用される。おおよそのイメージとしては、「低消費電力=LPWA/920MHz帯」、「高速通信=セルラー系(将来的には高帯域Wi-Fi)」、「遠距離通信=セルラー系/LPWA」、「移動通信=セルラー系」といった棲み分けが予想される。
また、6Gやローカル5Gといったセルラー系における次世代規格や新たな建付けも登場してきており、2030年といった時間軸では、下表とは全く違ったネットワークが現出する可能性もある。
【図表2:機能別のネットワーク活用イメージ】
矢野経済研究所作成
前述したように、ワイヤレスIoT市場では近年、920MHz帯IoTが注目される。しかしそこでは、下にある【図表3】のような問題点・課題も存在する。尚、【図表3】での記載内容は必ずしも920MHz帯IoTに限定した問題点ではないが、主にそこに焦点をあてた内容となっている。
また920MHz帯では、「10%Dutyルール」といったユニークな取り決めがある。これは、920MHz帯では多数のネットワークが稼働することが想定されているため、「周波数帯を譲り合う」といったルールである。具体的には、例えば1時間(60分)といった時間内では、全体の10%となる6分間しか占有出来ないという規定である。尚、実際にはセンサーデータの送信といった場合は、ほとんど支障が出ることはないと見られている。ただ逆に言えば、このルールのため電波干渉は少ないとも言える。
このようなローカルな決まり事も、問題点として具現化するケースがある。
【図表3:ワイヤレスIoTでの問題点・課題】
矢野経済研究所作成
(早川泰弘)
■レポートサマリー
●ワイヤレスIoT市場に関する調査を実施(2024年)
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