矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2024.01.25

車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場に関する調査を実施(2023年)

国内車載ソフトウェア市場は、2030年には1兆9,130億円に達すると予測。2021年の構成比は制御系70.3%、車載IT29.7%と推計するが、2030年には逆転する見込み。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、ソフトウェア開発ベンダーが手掛ける国内の車載ソフトウェア市場を調査し、ソフトウェア開発ベンダー側からみた制御系ソフトウェアや車載IT系ソフトウェアの動向、開発体制の変化、課題、今後の方向性等を明らかにした。ここでは、2030年までの車載ソフトウェア市場規模、制御系と車載IT系の構成比予測について、公表する。

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【図表:車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場規模推移・予測】

【図表:車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場規模推移・予測】
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:2023年は見込値、2025年、2030年は予測値。
  • 注:ECUなどの制御系やCASEを志向した車載IT系の車載ソフトウェアを対象とし、ソフトウェア開発ベンダーから自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tear1等)への渡し価格ベースで算出した。

 

車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場の概況

車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT系に分類される。
制御系は自動車を電子的に制御するECU※1ユニットから構成され、ADAS(先進運転支援システム)などの高度化に伴い、搭載数が増加している。車載IT系はCASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)を志向し開発されており、クラウドベースでの運用により、エンタテインメントを含むさまざまな車載関連アプリケーションが稼働することとなる。
制御系や車載IT系いずれも対象とした車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場規模は、ソフトウェア開発ベンダーから自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tear1等)への渡し価格ベースで2021年が3,770億円、2022年は前年比135.3%の5,100億円、2023年が同153.9%の7,850億円となる見込みである。
また、制御系と車載IT系の構成比について、2021年は制御系が70.3%、車載IT系が29.7%と推計した。

※1:ECU(Electronic Control Unit)とは車線維持システムや車間距離制御システムなどを電子制御するコンピュータで、近年、一台当たりの搭載数が増加しており、搭載体積やコスト増が課題となっている。

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車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場の注目トピック

■SDVの実現に向けて実装する車載ソフトウェアの構成を整理
SDV※2の実現に向けて、自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tear1等)、協力会社(ソフトウェア開発ベンダー)は、特にCASEを志向した車載ソフトウェアの研究開発に取り組んでおり、制御系ソフトウェアが各専門領域に特化した個別最適であるのに対して、車載IT系ソフトウェアは全体最適でシステム全体をデザインしていく点に大きな特徴がある。車載IT系の構成要素としてAUTOSAR Adaptive Platformを始めとした標準規格に準拠したシステムや、ソフトウェアプラットフォームである車載OS(Operating System)などがある。

SDVの実現に際しては、現在、車両に搭載している制御系と車載IT系が併存した形になるものと考える。
但し、前者はクリティカルな(リアルタイム処理が求められる)部分のECUを除いて、搭載体積やコスト増が課題となっていることもあり、統合ECUへと収れんしていく方向にある。
他方、車載IT系については、さまざまな車載関連アプリケーションが稼働することとなる。ソフトウェア構成をレイヤ別に整理すると、レイヤ1であるインフラはHPC※3からなる。HPC上で稼働するレイヤ2では、AUTOSAR Adaptive Platformを始めとした標準規格に準拠したシステムが稼働する。そして、レイヤ3では、ソフトウェアプラットフォームである車載OSが保有するAPI(Application Programming Interface)を活用し、クラウド上の開発環境を通じて、エンタテインメントを含む多彩な車載関連アプリが開発されていくほか、OTA(Over The Air)でソフトウェアやアプリの更新を行っていく構成となる見込みである。

​※2:SDV(Software Defined Vehicle)は、車載ソフトウェアによって自動車の機能が更新されていくことを前提に設計・開発された車両を意味する。
※3:HPC(High Performance Computing)は、複雑な計算や大規模データ処理を高速で行うことが可能なソフトウェア

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車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場の将来展望

2025年の車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー)市場規模は9,660億円になると予測する。OEMや自動車部品サプライヤーがソフトウェア開発ベンダーに対して車載IT系ソフトウェアの研究開発案件を積極的に委託することで、制御系と車載IT系の構成比は、徐々に車載IT系の構成比が大きくなる見通しである。
こうした開発案件の成果物が実車に搭載されるのは2030年頃と考え、2030年の車載ソフトウェア市場規模は1兆9,130億円に達すると予測する。制御系と車載IT系の構成比は逆転する見込みである。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

  • 自動車における外部環境の変化(全体像)
  • MIC(モビリティ・インフォメーション・サークル)
  • クルマの研究/開発の一般的なフロー詳細
  • 「電気・電子」を構成するデバイス・システム
  • 車載用ソフトウェアのアーキテクチャ
  • アーキテクチャ仮説を作りあげるまでの仮説の変遷
    • 仮説①
    • 仮説の修正
    • 仮説の修正②
    • 仮説の完成
  • 従来の制御系ソフトウェアの開発手法
  • 従来の制御系車載用ソフトウェアの開発体制
  • 車載IT系の登場により変わりつつある車載用ソフトウェアの開発体制
  • 車載用ソフトウェア開発に係るOEMの参入企業例
  • 車載用ソフトウェア開発に係るサプライヤーとその関連会社の参入企業例
  • 車載用ソフトウェア開発に係る参入企業例
  • 協力会社における車載用ソフトウェア市場規模推移・予測(2021年~2030年)
  • 主たるOEMが採用しているデータ分析人材(正社員)の一例
  • 矢野経済研究所が考えるデータ分析人材の定義
  • 各国のEV/PHVの累計販売台数と公共用充電器数(2022年実績)
  • トヨタ自動車、ウーブン・バイ・トヨタ、デンソーの役割と
  • ウーブン・バイ・トヨタを巡る経緯
  • 次世代車載IT系の開発に向けたアプローチ
  • 総売上高のうち自動車関連売上高推移
  • 自動車関連売上高のうち車載ソフトウェア売上高推移(制御系/車載IT系)
  • 96社における自動車関連売上高シェアの推移
  • 単体売上高推移リスト(2021年~2023年見込)
  • 車載用ソフトウェア売上高推移(2021年~2023年見込)
  • 自動車関連売上高シェア(2023年見込)
    • ウーブン・コア、ウーブン・アルファ、トヨタ・テクニカルディベロップメント、デンソーテクノ、デンソークリエイト、オーバスの車載ソフトウエア比率
    • デンソーテン、ジェイクワッドダイナミクス、アイシンソフトウェア、パナソニックオートモーティブ、パナソニックITS、パナソニックアドバンストテクノロジーの車載ソフトウエア比率
    • 三菱ソフト、日立ASTEMO、日立ASTEMO上田、日立ASTEMO仙台、日立ASTEMO那須、日立ソリューション東日本の車載ソフトウエア比率日立ソリューション西日本、ボッシュエンジニアリング、ETAS、コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン、エレクトロビット、ネクスティエレクトロニクスの車載ソフトウエア比率
    • アックス、インテグレーションテクノロジー、ソルクシーズ、未来技術研究所、東海ソフト、スマートホールディングスの車載ソフトウエア比率
    • NTTデータMSE、NTTデータ オートモビリジェンス研究所、NTTデータ・ニューソン、dSPACE、Provision、ティアフォーの車載ソフトウエア比率     図表 36 SCSK、東芝情報システム、富士ソフト、ベクター、
    • セックの車載ソフトウエア比率
    • エクスモーション、White Motion、AZAPA、フォルシアクラリオン・エレクトロニクス、ユビキタスAI、総合システムリサーチの車載ソフトウエア比率
    • ソーバル、NSW、キヤノンITソリューション、コア、アイ・エス・ピー、ゼンリンデータコムの車載ソフトウエア比率
    • DTSインサイト、CIC、水戸ソフトエンジニアリング、ティ・エス・シー、金沢エンジニアリングシステムズ、協同電子エンジニアリングの車載ソフトウエア比率
    • 神戸アドテック、小林工業、エスティテック、システム創造開発、システムニコル、ユー・エス・イーの車載ソフトウェア比率
    • テクノマセマティカル、HAYABUSA、光和マイクロプロジェクト、エクス、クリップソフト、シリコンデザインテクノロジーの車載ソフトウェア比率
    • フィーチャー、ネットワークトウエンティワン、ピーアンドエーテクノロジーズ、トリガ、プリズム、ヒットテクニカの車載ソフトウェア比率
    • プラスシンク、コアフューテック、エンテック、テクトム、図研モデリング、NSKステアリング&コントロールの車載ソフトウェア比率
    • 萩原北都テクノ、アイテック、アクセントキーテクノロジー、ベリサーブ、エントラストジャパン、サンダーソフトの車載ソフトウェア比率
  • 単体売上高ランキング(2023年見込)
  • 単体売上高ランキング(300億円以上)
  • 車載ソフトウェア売上高ランキング推移(2021年~2023年見込)※上位31社
  • 車載ソフトウェア売上高ランキング推移(2021年~2023年見込)※上位31社、折れ線グラフ
  • 車載ソフトウェア売上高シェア(2023年見込)※上位15社
  • 「制御系」車載ソフトウェア売上高ランキング推移(2021年~2023年見込)※上位31社
  • 「制御系」車載ソフトウェア売上高ランキング推移(2021年~2023年見込)※上位31社 折れ線グラフ
  • 「制御系」車載ソフトウェア売上高シェア(2023年見込)※上位31社
  • 「車載IT系」車載ソフトウェア売上高ランキング推移(2021年~2023年見込)※上位31社
  • 「車載IT系」車載ソフトウェア売上高ランキング推移(2021年~2023年見込)※上位31社 折れ線グラフ
  • 「車載IT系」車載ソフトウェア売上高シェア(2023年見込)※上位15社
  • イーソル株式会社
  • インテグレーションテクノロジー株式会社
  • 株式会社エクスモーション
  • SCSK株式会社
  • エレクトロビット日本株式会社
  • エントラストジャパン株式会社
  • サンダーソフトジャパン株式会社(中科創達軟件股分有限公司)
  • 株式会社ティアフォー
  • dSPACE Japan株式会社
  • 東芝情報システム株式会社
  • 富士ソフト株式会社
  • 株式会社ベリサーブ
  • ボッシュエンジニアリング株式会社
  • ウーブン・バイ・トヨタ
  • ウーブン・コア
  • トヨタテクニカルディベロップメント
  • デンソーテクノ
  • デンソークリエイト
  • オーバス (AUBASS)
  • デンソーテン
  • ジェイクワッド ダイナミクス
  • アイシン・ソフトウェア
  • パナソニック オートモーティブシステムズ
  • パナソニックITS
  • パナソニックアドバンストテクノロジー
  • 三菱電機ソフトウエア
  • 日立Astemo
  • 日立Astemo上田(旧日信工業)
  • 日立Astemo仙台(旧ケーヒン)
  • 日立Astemo那須(旧ケーヒン)
  • 日立ソリューションズ東日本
  • 日立ソリューションズ西日本
  • ETAS
  • コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン
  • アックス
  • ソルクシーズ
  • 未来技術研究所
  • 東海ソフト
  • スマートホールディングス
  • NTTデータMSE
  • NTTデータ オートモビリジェンス研究所
  • NTTデータ・ニューソン
  • ProVision
  • ベクター・ジャパン
  • セック
  • White Motion
  • AZAPA
  • フォルシアクラリオン・エレクトロニクス
  • ユビキタスAI
  • 総合システムリサーチ
  • OTSL
  • ZMP
  • Sky
  • 日本プロセス
  • システナ
  • NEC通信システム
  • ソーバル
  • NSW
  • キヤノンITソリューションズ
  • コア
  • アイ・エス・ビー
  • ゼンリンデータコム
  • DTSインサイト
  • CiC
  • 水戸ソフトエンジニアリング
  • ティー・エス・ジー
  • 金沢エンジニアリングシステムズ
  • 協同電子エンジニアリング
  • 神戸アドテック
  • 小林工業
  • エスディーテック株式会社
  • システム創造開発
  • システムニコル
  • ユー・エス・イー
  • テクノマセマティカル
  • HAYABUSA
  • 光和マイクロプロジェクト
  • エクス
  • クリップソフト
  • シリコンデザインテクノロジー
  • フィーチャ
  • ネットワークトゥエンティワン
  • ピーアンドエーテクノロジーズ
  • トリガ
  • プリズム
  • ヒットテクニカ
  • プラスシンク
  • コアフューテック
  • エンテック
  • テクトム
  • 図研モデリンクス
  • NSKステアリング&コントロール
  • 萩原北都テクノ
  • アイテック
  • アクセントキーテクノロジー

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調査要綱

調査対象:車載用ソフトウェア開発ベンダー
調査期間: 2023年10月~12月
調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材(オンラインを含む)、ならびに文献調査併用

※車載ソフトウェアとは:車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT系に分類される。
制御系は、「走る・曲がる・止まる」などの各機能を担うECUユニット(CPU)から構成され、自動車を電子的に制御する仕組みを担っている。一方、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric) を志向したSDVを前提として設計・開発されたソフトウェア群を、本調査では車載IT系ソフトウェアと定義する。

※車載ソフトウェア市場とは:本調査における車載ソフトウェア市場とは制御系や車載IT系いずれも対象とし、ソフトウェア開発ベンダー(協力会社)から自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tear1等)への渡し価格ベースで算出した。
なお、OEMやサプライヤーが自社で開発する車載ソフトウェア費用や、研究開発費、設備投資等は含まない。

<市場に含まれる商品・サービス>
ソフトウェア開発ベンダーが手掛ける国内の車載用ソフトウェア

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山口 泰裕(ヤマグチ ヤスヒロ) 主任研究員
ITを通じてあらゆる業界が連携してきています。こうした中、有望な業界は?競合・協業しうる企業は?参入障壁は?・・・など戦略を策定、実行に移す上でさまざまな課題が出てきます。現場を回り実態を掴み、必要な情報のご提供や戦略策定のご支援をさせて頂きたいと思います。お気軽にお声掛け頂ければと思います。

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