株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、新規事業の立ち上げ人材および推進人材の採用や育成に関する実態について調査、研究を行い、全社的に新規事業を推進していくうえでの考察を行い、提言をまとめた。
【図表:新規事業立ち上げ人材の育成フェーズ】
現下、多くの事業会社においてDX(デジタルトランスフォーメーション) 戦略を打ち出すなか、その一環として既存のビジネスモデルの変革やデジタルを活用した新規事業の創出に向けたプロジェクトが各社で進展している。一方で、これらを担う人材の発掘や育成、活用については課題もある。本調査では新規事業立ち上げ期における中核となる人材の適性や既存事業との関係性を踏まえた人材育成などの観点から、新規事業をどのように推進していくのか、その遂行状況について考察し、提言をまとめた。
本調査結果から、人材育成の観点から全社的に新規事業を推進する際には、3つのフェーズ(段階)を経る必要があると考える。フェーズを明示する上での指標について、縦軸は「全社への浸透度合い」の高さ、横軸は「新規事業推進部隊と既存事業部との関係度合い」の深さで設定した。注目トピック(後述)で言及する3つのフェーズを経ていく中で、全社への浸透と新規事業推進部隊と既存事業部との関係性が深まっていく形となる。
新規事業の推進に際しては、3つの重要な要素がある。既存事業の強化や既存の資産(人材を含む)を活用した新規事業の創出の必要性と併せて、将来に向けて会社をどのように変革させていくのか、全社に対して経営層から明確な戦略や方向性を打ち出す必要がある。
また新規事業推進人材(部隊)が新規事業を推進していくうえでは、予算権限を持った経営層のリーダーシップとともに、社内公約が必要である。新規事業の推進への理解や支援体制を含め、明確な意思決定を社内に周知徹底し、全社が同じ方向に進むことのできる公約が重要となる。
更に、新規事業推進に向けた仕組み(攻め)とセーフティネット(安全網)の整備(守り)が不可欠である。新規事業の立ち上げに向けて、適格な人材を確保する上で、事業アイデアを発掘すべくアイデアコンテストをはじめとしたさまざまな仕組みを整備する必要がある。新規事業は一般的に千三つ(1,000件のうち成功する案件は3つ)とされ、失敗も多い。失敗した際に事業アイデアの提案者向けにセーフティネットを整備することが自主的なチャレンジを生みだすものと考える。こうした仕組みを整えることで新規事業をはじめ、企業変革や既存事業の強化などの全社的な推進体制の構築が可能となる。
■新規事業立上げ人材・推進人材の育成に係る3つのフェーズ
新規事業を基軸に中核となる人材の育成については、調査結果概要(前述)で提示した指標(図.「新規事業立ち上げ人材の育成フェーズ」参照)をベースに、立ち上げ期、コア人材輩出期、自律分散期といった3つのフェーズ(段階)を通じて全社的な取り組みへと拡充していく必要があるものと考える。
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調査対象:新規事業立上げ人材・推進人材のモデルケースとして当社が抽出した企業
調査期間:2023年9月~11月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)ならびに文献調査併用
※新規事業立ち上げ人材・推進人材とは:本調査における新規事業立ち上げ人材・推進人材とは、既存事業の強化や新規事業の創出を目的として、アイデアの創出からPoC(Proof of Concept:概念実証)、サービスの開始に至るまでのプロセスに取り組む人材もしくは同プロセスを推進支援する人材と定義している。
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