株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のMaaS(Mobility as a Service)市場を調査し、サービス分野別やMaaSデータ活用の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
【図表:国内MaaS市場(12市場計)予測】
【図表:国内MaaS市場 12分野の概要】
MaaS(Mobility as a Service)とは、ICTを活用して、公共交通か否か、また運営主体に関わらず、マイカー以外のすべての手段によるモビリティを一つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念である。※
10分野のモビリティサービスに、MaaSプラットフォーム市場、MaaSアプリ市場を合算した2021年の国内MaaS市場(12市場計)を4,905億9,000万円と推計した。また、2030年の同市場規模を1兆7,188億円、2035年は2兆3,608億円になると予測する。「MaaS事業は金がかかるし、儲からない」、「モビリティサービス売上高と補助金だけでは利益が出ない」という評価も多く、マネタイズに苦戦している国内MaaS市場の成長予測は芳しくない結果となった。
※ 出典:国土交通省国土交通政策研究所報第71号(2019年)
■MaaSプラットフォーム事業者が最強となる理由
本調査において、MaaSプラットフォーム事業者(プラットフォーマー)が今後のMaaS市場の中核的存在になっていくと考えられていることが明らかになった。
まず、「ビジネス上の採算」という視点から、MaaSプラットフォーム事業が中核になるという考え方がある。スマートフォンアプリのダウンロードサービス事業者のように、全ての情報やお金を預かることが出来る存在になるためである。また、MaaSアプリ事業などMaaSデータを活用する事業、とくに自治体や官公庁の交通政策向けデータサービスが期待されている。
次に、「技術」という視点から、MaaSプラットフォーム事業が中核になるという考え方もあった。将来、「自動運転」車両によるMaaSサービスが実現すると、車両遠隔制御までを取り扱えるプラットフォーム事業者が中心になる必要があるからだ。また、プラットフォーム事業者が「車両の位置情報」を収集・解析して、データサービス事業を展開すればMaaSの可能性は大きく広がる。
「決済」という視点もあげられた。MaaSアプリによるシームレス決済には、MaaSプラットフォーム事業が中核となる。今後のMaaS市場の国際競争において、国内のMaaSアプリ事業者やプラットフォーム事業者の参画が必要となる。
また、MaaSアプリ事業者は当初の2、3年は補助金で潤うが、その後アプリがコモディティ化して低価格になると苦しくなるとも言われており、MaaSデータを収集・解析し、データを提供するプラットフォーム事業者の成長がやはり重要である。
人口減少や高齢化で若者の数が減少、都市に人口が集中する中でドライバー不足の日本においては、公共交通と地方の移動、経済を支え、自動車産業をモビリティ産業に変身させ、鉄道や航空産業を復活させるためには、MaaSサービス、国内MaaS市場の拡大に期待せざるを得ない。
そのためには、モビリティサービス事業者から収集したデータを活用した多様なMaaSサービスが必要であり、高齢者の移動と買い物の自由を支え、インバウンド(訪日外国人客)に地方観光時の情報と決済の自由を与える役割が求められる。
また、モビリティ関連の法律改正や規制緩和でサービスの障壁が無くなってきており、MaaSは「必要なものとして社会から認知されてきている」と考える。逆に、MaaSを核として、日本の都市開発、地方創生が広がる可能性があり、むしろここにきて、MaaSの必要性が鮮明になってきたといえる。
一方、OEM(自動車メーカー)を中心とする自動車産業は、これからは新車を製造・販売するだけでは十分な売上・利益を得られない。自動車の国内販売台数は減少傾向が続くし、BEV(電気自動車)車両の単価が下がる可能性もある。その対策として、車両販売後にOTA(Over the Air)を使用したソフトウェアの有料更新サービスや、BEVにおける電池交換サービス・リユース・リサイクルなどで収益をあげる必要がある。特に、BEVの電池交換サービス「BaaS」(Battery as a Service)は注目度が高い。従来のようにEVユーザーが車の電池を保有するのではなく、交換ステーションで充電済みの電池と入れ替えながら利用するビジネスモデルである。電池サービスであり車両そのもののサービスではないが、新たな分野であり、現在もっとも期待されている。
■レポートサマリー
●国内の業務用車両/MaaS車両向けコネクテッドサービス市場に関する調査を実施(2021年)
●世界のトラック・バス向けコネクテッドサービス市場に関する調査を実施(2022年)
■アナリストオピニオン
●AIにできない仕事「MaaSとアイドル AI比較」
●「僕は嫌だ!」が開くMaaSの未来
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調査対象:国内のモビリティ・サービス事業者(CNSサービス、カーシェアリング、ライドシェアリング、オンデマンド交通、鉄道、ドローンなど)、MaaSプラットフォーム事業者、MaaSアプリ事業者他
調査期間:2022年10月~2023年3月
調査方法:当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・eメールによる取材、当社データベースの調査データからの考察ならびに文献調査併用
※MaaS市場とは:本調査におけるMaaS市場とは、モビリティサービス10市場、MaaSプラットフォーム市場、MaaSアプリ市場の12市場を合算し、事業者売上高ベースで算出した。
モビリティサービスは、四輪車・二輪車・ドローン等のモビリティを実際にユーザに貸し出したり、運転手付きのサービスを提供するビジネスである。モビリティサービス事業から、MaaSデータを収集・解析し、MaaSアプリ事業者に提供するビジネスがMaaSプラットフォーム事業である。そして、MaaSプラットフォーム事業者から、MaaSデータや解析結果を仕入れて、それを元に新たなMaaSサービスを構築・提供するのがMaaSアプリ事業者である。
<市場に含まれる商品・サービス>
モビリティサービス事業、MaaSプラットフォーム事業、MaaSアプリ事業
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