株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場を調査し、市場規模や市場動向、将来展望を明らかにした。
【図表:RPA市場規模推移・予測】
2019年度のRPA市場規模は事業者売上高ベースで529億7,000万円(前年度比56.7%増)、そのうちRPAツール製品は224億円(同65.9%増)、RPA関連サービスを305億7,000万円(同50.6%増)と推計した。すでに大手のユーザ企業でのRPA利用率は2019年度には高い水準に達していたが、RPA市場は引き続き急成長を遂げており、市場の勢いは続いていたことがわかった。
2020年度の同市場規模は729億円(同37.6%増)、そのうちRPAツール製品は299億円(同33.5%増)、RPA関連サービスが430億円(同40.7%増)になると予測する。2020年度も成長が継続しているが、新型コロナウイルスの影響でIT投資が抑制される傾向が出ていることや、顧客との対面機会が激減するなど、RPAツールベンダーの事業活動が制限されたことにより、前年度までの勢いはやや減速となる見通しである
■RPAはブームを終えて、本格的な利用拡大フェーズへ
RPAは数年前にブームとなり、大きく注目を集めた。システム導入は急速に進み、ユーザ企業での導入率を見ると、現在では大手企業にはほぼ行き渡った状態にある。しかし、ごく一部の業務を対象とした小規模な利用に留まっている企業が多い。
RPA市場の本来のポテンシャルは大きいが、多くのユーザ企業がRPAを使いこなせておらず、導入効果を十分に得られていないことが課題となっている。導入に成功した企業では、サーバ型RPAを全社的に導入したり、デスクトップ型RPAを現場部門が積極的に活用するなど、利用拡大を進めている。2020年度以降はRPAの利活用が定着し、導入企業内での利用拡大フェーズに入る見通しだが、そのためには、より多くのユーザ企業がRPA導入の成功体験を実感することが重要となると考える。
短中期的にみると、RPA市場にとっての好材料は多い。
テレワークの利用増加で業務効率化に取り組む企業が増え、ペーパーレスやハンコレスによるデジタル化も進んでいる。コロナ禍によって業績が悪化した企業では省人化とコスト削減ニーズが高まり、一方で需要が増加して業務量が増えた企業でも、これまで通りの人員体制で迅速に処理を進めるためにはRPAの活用が有効である。
また、これまでは導入が遅れていた中堅中小企業や地方自治体などでのRPA導入も進んでいく見通しである。
2021年度以降も中期的に成長は継続し、2023年度のRPA市場規模は事業者売上高ベースで1,520億円、そのうちRPAツール製品は520億円、RPA関連サービスが1,000億円まで拡大すると予測する。
■データ編
■アナリストオピニオン
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調査対象:ベンダー調査:RPAツールベンダー、コンサルティングファーム、システムインテグレーター他、ユーザ調査:日本国内の民間企業
調査期間:ベンダー調査:2020年9~11月、ユーザ調査:2020年7~9月
調査方法:ベンダー調査:当社専門研究員による直接面談、ならびに文献調査併用、ユーザ調査:郵送によるアンケート調査
※RPA市場とは:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、ソフトウェアロボットにより、人間が行っているPCなどを用いる単純作業やそれ以上に高度な業務を自動化する技術を指す。
本調査におけるRPA市場は、RPAツール製品(サーバー型、クライアントPC型いずれも含む)や、RPA診断サービスやRPA導入支援サービス、RPA業務プロセス自動化サービス、RPA活用業務プロセス改善コンサルティング、RPA運用保守サービスなどRPA関連サービス全般を対象とした。
<市場に含まれる商品・サービス>
RPAツール製品、RPA関連サービス
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