矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

レポートサマリー
2020.10.30

国内スマートシティ市場、都市OS実装エリア数を予測(2020年)

スマートシティ事業を実施する主体等による都市OSの2025年度予測の実装エリア数累計は60件に留まるものの、2026年度以降に普及が加速する見通し。

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内スマートシティ市場を調査し、規制・法整備動向、データ提携プラットフォームや都市OSの普及動向、ITベンダのデータ連携プラットフォーム戦略、将来展望を明らかにした。ここでは、都市OS実装エリア数を予測し、普及シナリオについて公表する。

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【図表:都市OS実装エリア数予測、普及シナリオ】

図表:都市OS実装エリア数予測、普及シナリオ
  • 矢野経済研究所調べ
  • 注:都市OS実装エリア数(単年度、累計)
  • 注:2019年度は実績無し、2020年度以降は予測値
  • 注:単年度実装数は、官庁が公募する実証事業である「官庁事業」、および地方自治体や特定エリア内などでスマートシティ事業を実施する主体自らが予算を確保し、その予算内で都市OSの実装を行う「自主事業」を合算し、算出した。
  • 注:普及率は、累計の実装エリア数を分子とし、分母は地方自治体単位での実装に加え、自治体より狭域もしくは広域の枠組みで実装されるケースも含め、2,000エリアとして算出した。

 

国内スマートシティ市場の概況

本調査では、スマートシティ実現のために実装されるデータ連携プラットフォーム、特に都市OSに着目し、3特徴(相互運用、データ流通、拡張容易)を全て満たし、かつ、8機能群(サービス連携、認証、サービスマネジメント、データマネジメント、アセットマネジメント、外部データ連携、セキュリティ、運用)を全て有するITシステムを整備したことを以て、都市OSの実装とする。

地方自治体や特定エリア内などでスマートシティ事業を実施する主体等による都市OSの実装エリア数は、2019年度実績は0件、2020年度予測が9件となり、その後2025年度には累計60件、普及率は3.0%になると予測する。そして、2030年度予測では累計335件、普及率は16.8%に達する見通しである。
※累計の実装エリア数を分子とし、分母は地方自治体単位での実装に加え、自治体より狭域もしくは広域の枠組みで実装されるケースも含め、2,000エリアとして算出している。

普及シナリオを時系列にみると、2025年度までは官庁事業による都市OSの実装が中心となり、普及率も3%以下に留まる見通しである。官庁事業と自主事業を合わせても10件前後/年度の実装ペースとなり、2025年度までは緩やかな普及状況になると予測する。

ただ、その中でも2023年度にはスーパーシティ構想の成果が公表されることで、状況に変化が生じると考える。成功例の創出とマネタイズモデルの確立により、その後、地方自治体・特定エリア自らが予算を確保して都市OSを実装する自主事業が活発化し、2024年度以降は自主事業による都市OSの実装が増加するとみる。また、2025年度には、大阪・関西万博に乗じた大阪スマートシティ戦略の展開により、多様なスマートシティ事例の創出とスマートシティの知名度向上が期待できる。2023年度、2025年度と二度のターニングポイントを経て、2026年度以降は自主事業による都市OSの実装が加速すると予測する。

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国内スマートシティ市場の注目トピック

■スーパーシティ構想の実現に向けた取り組みが本格化
2020年5月、スーパーシティ構想の実現に向けた制度の整備等を盛り込んだ「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」が成立した。2021年度から対象区域で取り組まれる計画のスーパーシティ構想は、物流や医療・介護など計10の領域から5領域以上をカバーしたサービス提供が条件として定められ、それらの取り組みを進める上で障壁となる既存の規制などについては、官庁一体となって対応することが法改正によって規定されている。

スーパーシティ構想では、これまでのスマートシティ事業よりスピーディかつ包括的に推進できる体制が整っているため、公表される成果内容が期待される。
なお、本調査では、スーパーシティとはスマートシティの枠組みをもとに条件を狭めた事業であり、スマートシティに包含された一つの取り組みと位置付けている。

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国内スマートシティ市場の将来展望

2026年度以降は、2023年度のスーパーシティ構想の成果公表や、2025年度の大阪・関西万博に乗じた大阪スマートシティ戦略の展開により、都市OSの実装が加速する。特に、マネタイズモデルが確立することで、官庁による補助金ではなく、地方自治体・特定エリアが自ら予算を確保して都市OSを実装するケース(自主事業)が主流になる見通しである。

普及シナリオを官庁事業・自主事業別にみると、2026年度は自主事業が20件、2027年度は35件、2028年度は50件と増加し、2030年度の都市OS実装エリア数は単年度で100件、累計件数で335件になると予測する。普及率は、2030年度には16.8%になる見通しである。

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参考:このレポートに掲載されている主なデータ一覧

■スマートシティとは

  • 各主体によるスマートシティの定義
  • スマートシティの全体像
  • スマートシティを構成する各カテゴリの内容
  • スマートシティとスーパーシティの共通点/相違点
  • スマートシティとスーパーシティの関係図
  • 国内外におけるスマートシティの主要動向
  • 日本でスマートシティが必要とされる背景
■データ連携プラットフォームと都市OS
  • スマートシティにおけるデータ連携プラットフォームの位置づけ
  • スマートシティ リファレンスアーキテクチャの全体像
  • データ連携プラットフォームと都市OSの関係性
  • 都市OSの全体像
  • サービス連携の機能ブロックと機能要件
  • 認証の機能ブロックと機能要件
  • サービスマネジメントの機能ブロックと機能要件
  • データマネジメントの機能ブロックと機能要件
  • アセットマネジメントの機能ブロックと機能要件
  • 外部データ連携の機能ブロックと機能要件
  • セキュリティの対策内容と機能要件
  • 運用の機能ブロックと機能要件
  • 都市OSの特徴
  • 都市OSの役割

 

■日本における動向

  • 特区制度の概要
  • 官民データ推進基本計画の推進施策(一例)
  • スーパーシティ構想の全体像
  • データ利活用型スマートシティ推進事業の採択事業
  • 先行モデルプロジェクト実施地区
  • 民間企業主体のスマートシティ
■アジアにおける動向
  • 中国
    • 中国の都市化率と今後の予測
    • 中国におけるスマートシティの段階的発展
    • 中国のスマートシティ関連政策
    • 中国の主要地域別スマートシティの特徴
    • 「インターネットプラス」社会サービス指数順位
    • 杭州市におけるスマートシティ事業の概要
  • シンガポール
    • スマートネイション「Key Milestones For Strategic National Projects」
    • CODEXのメリット・役割
    • CODEXの構成図
    • CODEXの動向と方向性
    • スマートネイションの各種取組みにおけるKPI
  • 韓国
    • 国・地方自治体の情報連携システム
    • オンライン行政処理の流れ
    • 「政府24」の手続き方法
    • 「政府24」の構造図
    • 段階別スマートシティのアーキテクチャモデル
    • スマートシティ統合プラットフォーム普及状況
    • スマートシティ統合プラットフォームの全体像
    • スマートシティ統合プラットフォームの主要機能
    • スマートシティ5大連携サービス
    • 統合プラットフォームと連携サービス間の連携規格標準
    • スマートシティ統合プラットフォーム基盤構築事業の対象自治体

 

■勃興する都市OS市場の実態と展望

  • スマートシティ市場を測る指標
  • 都市OSの実装プロセス区分
  • 都市OS実装エリア数の普及予測シナリオ(2019年度~2030年度予測)
  • 都市OS実装エリア数の推移に影響を与える二度のターニングポイント
  • 大阪スマートシティ戦略のスケジュール
  • 都市OS実装エリア数における普及拡大の循環図
■スマートシティ市場におけるITベンダの戦略類型
  • スマートシティ事業への関わり方
  • 全体参画
  • ICTを軸とした部分参画
  • スマートシティのフィールドとなるエリア区分
  • パーソナルデータの収集・活用方法
  • 個人の関与の下でデータ流通・活用を進める仕組み
  • ITベンダが抱える課題/ITベンダから見たスマートシティ市場の課題
■ITベンダにとってのスマートシティの価値とは
  • データを起点としたメディコンバレーの概要図
  • データを起点としたスマートシティの概要図
  • スマートシティは複合的なデータ分析が重要に
  • 自治体向けソリューション市場規模推移・予測

 

■アクセンチュア株式会社
■エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
■日本電気株式会社
■日本ユニシス株式会社
■株式会社日立製作所
■富士通株式会社

■YRIスマートシティPJと本レポートの関係性

  • 本レポートとビジョンレポートの関係性
■全体動向に関する考察
■産業別動向に関するアップデート
  • 都市OS実装エリア数の普及予測シナリオ(2019年度~2030年度予測)

 

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関連リンク

■レポートサマリー
国内スマートシティ市場、自治体型スマートシティのロードマップを予測(2022年)
自治体向けソリューション市場に関する調査を実施(2023年)

■同カテゴリー
[ICT全般]カテゴリ コンテンツ一覧

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調査要綱

調査対象:データ連携プラットフォーム/分散型データ利活用プラットフォーム提供事業者
調査期間:2020年4月~9月
調査方法:当社専門研究員による直接面接取材、および電話・e-mailによるヒアリング調査、文献調査併用

※スマートシティとは:スマートシティとは、各種データの連携と新たなテクノロジーやICTの活用を通じて、生活者の利便性・快適性向上に繋がる取組みが行われる都市または地区を指し、主に利用者、戦略、組織、ビジネス、サービス、データ連携プラットフォーム、アセット、ルールの8カテゴリから構成される。

※都市OSとは:内閣府によると、都市OSとは「スマートシティ実現のために、スマートシティを実現しようとする地域が共通的に活用する機能が集約され、スマートシティで導入する様々な分野のサービスの導入を容易にさせることを実現するITシステムの総称」(内閣府、スマートシティ リファレンスアーキテクチャ ホワイトペーパー、2020年3月)とされる。
本調査では、データ連携プラットフォームの詳細な機能群をリファレンスアーキテクチャとして明らかにしたものを都市OSとし、3特徴(相互運用、データ流通、拡張容易)を全て満たし、かつ、8機能群(サービス連携、認証、サービスマネジメント、データマネジメント、アセットマネジメント、外部データ連携、セキュリティ、運用)を全て有するITシステムを整備したことを以て、都市OSの実装とする。
なお、都市OSはあくまでデータ連携プラットフォームの一つであり、スマートシティ事業の中には都市OS以外のデータ連携プラットフォームを実装する可能性もあるため、本調査で示す内容が国内のスマートシティを全て網羅する訳ではないことに留意されたい。

<市場に含まれる商品・サービス>
規制・法整備動向、データ提携プラットフォームや都市OSの普及動向、ITベンダのデータ連携プラットフォーム戦略など

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