株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のデジタルサイネージ市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
2019年度のデジタルサイネージ市場規模は、前年度比122.4%の2,840億円の見込みである。市場は今後も増加傾向が続く見通しである。
東京近郊では、都市の再開発・街づくりが活発化したことや、新たに建設された商業施設やオフィスビル、ホテルなどへのデジタルサイネージの設置が進んだ。地方においても、地方創生の盛り上がりから、道の駅や観光地などを中心に、デジタルサイネージの設置が広がった。
デジタルサイネージの利用用途についてみていくと、商業施設や観光スポットでのインフォメーションの役割としての活用とともに、防災・災害情報の配信利用が増えている。とくに、防災・災害情報の配信においては、インバウンド(訪日外国人客)増加に伴って多言語対応が求められている。対応言語としては、日本語や英語、中国語、韓国語が必須で、最近ではそれらに加えてタイ語やインドネシア語に対応しているものが増えている。
【図表:デジタルサイネージ市場規模推移・予測】
■OMO(Online Merges with Offline)の視点から改めて見直されるデジタルサイネージの価値
顧客体験(CX:Customer Experience)の向上を目的として、流通小売業などではオンラインとオフラインをシームレスにつなぎ、顧客とコミュニケーションをとることが増えている。例えば、スーパーの野菜売り場に設置したデジタルサイネージをレシピ動画サイトなどと連携させ、野菜に関連するおすすめレシピの動画を流すことや、小売店の店頭にあるデジタルサイネージにQRコード※を表示させ、顧客のスマートフォンから読み込ませることで、店舗でなくオンラインのECサイトから商品購入につなげるといった事例がある。
こうしたリアル店舗などのオフライン環境でオンラインのコンテンツをシームレスに活用する動きが広まる中で、顧客とリアルな接点を持つデジタルサイネージは、顧客とのコミュニケーションツールとして改めて価値が見直されている。
※「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
2020年に都市の再開発需要が落ち着き、一旦市場の成長は鈍化する見込みだが、5G(第5世代移動体通信システム)の普及や2025年に開催予定の大阪万博に加えて、都市の開発需要の積み残しがあることから市場は微増傾向で推移していく見通しである。また、5Gが普及すれば、よりリアルタイムでリッチなコンテンツの配信も可能となる。4K・8Kの解像度の映像が瞬時に配信でき、デジタルサイネージで配信できるコンテンツの幅は広がるだろう。
今後も市場は拡大が続き、2024年度のデジタルサイネージ市場規模は4,180億円にまで成長すると予測する。
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調査対象:デジタルサイネージシステム関連事業者、広告会社、ハウスエージェンシー、媒体社等
調査期間:2019年7月~2020年2月
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用
※デジタルサイネージ市場とは:屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あらゆる場所で、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するシステムを総称してデジタルサイネージと呼ぶが、本調査におけるデジタルサイネージとは、小型のスタンドアロン型(USBなどを差し込んで決まった動画や静止画を流す)は除き、ネットワーク型のみを対象とする(但し、大型はスタンドアロン型も含む)。なお、ここでいう大型はスマートフォン、タブレット端末サイズ以上を指す。
また、本調査におけるデジタルサイネージ市場規模は、広告市場(広告主による広告出稿額ベース)、コンテンツ制作市場(制作事業者売上高ベース)、システム販売/構築市場(ハードウェアを含むシステム販売/構築事業者売上高ベース)を合算し、算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
ネットワーク型デジタルサイネージ(スマートフォン、タブレット端末サイズ以上の大型デジタルサイネージはスタンドアロン型も含む)
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