矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2009.06.23

盛り上がりを見せるデジタルサイネージ

デジタルサイネージ市場は活況 関連企業の専門部署新設も相次ぐ

街を歩けば、電車に乗れば、いたる所にディスプレイが設置されており、休日に自宅で引きこもらない限り、必ず目にする。私も日々の通勤中でさえも最低10面は目にしている。これがジタルサイネージ(電子看板)である。現在は、販促ツールやインフォメーションボードとしての展開が賑わいを見せている。

矢野経済研究所では、主にLCDやPDPを表示デバイスとするデジタルサイネージ市場を「狭義のデジタルサイネージ市場」と定義している。2008年度の狭義デジタルサイネージ市場規模は前年度比11.3%増の32,797百万円、2009年度は7.9%増の35,400百万円と予測しており、デジタルサイネージは、不況下においても成長が見込まれる分野であるといえる。
これらには、ディスプレイやSTB(Set Top Box)といった「ハードウェア、配信ソフトウェア、システム構築、配信運営、保守・サポート、広告、コンテンツ制作」の売上を含んでいる。
デジタルサイネージ市場は、“広告や販促”では主に交通・小売などの分野、“インフォメーション”では主に金融・教育・医療・行政機関などの分野において、今後も拡大が期待される(と、個人的には確信している)。とくに、インフォメーションでは国や自治体の予算が投じられる可能性があり、大きく動く可能性を秘めている。

市場の活況ぶりや企業の注力ぶりは、企業の組織体制からも見て取れる。従来、デジタルサイネージソリューションを提供している大手企業の多くにとって、デジタルサイネージは、ある部門で扱う「いちソリューション」でしかなかった。しかし、最近ではデジタルサイネージが「いち部門」となっており、各社力を入れている。
近いところでいえば、NECが通信メディアサービスソリューション事業部内にデジタルサイネージビジネス推進グループを、大日本印刷ではデジタルサイネージ推進本部を新設している。その他にも、ソニーやパナソニック、日立製作所、富士通などが専門部署を組織化している。

デジタルサイネージの課題は「効果」「マルチユース」

デジタルサイネージは市場拡大の可能性が大きい分、課題も多い。例えば、デジタルサイネージにコンテンツを提供する立場に立つと、広告では「効果」、販促では「マルチユース」といった課題がある。
前者については、評価指標が確立されていないため、統一の評価基準がなく、コンテンツを流した効果が見え難くなっている。最近は、顔認識システムが効果測定といった観点からも注目されているが、まだ決定打とはなっていない。
後者のマルチユースであるが、配信プラットフォームが標準化がなされていないため、「A社の配信システムで表示しているものが、B社の配信システムでは表示できない」「縦置きのディスプレイへの配信と横置きのディスプレイの配信ではコンテンツの変更を要する」など、さまざまなディスプレイへのコンテンツ配信が困難であるという問題がこれに当たる。端的にいえば、配信ソリューションに依存しているということだ。これら以外にもさまざまな課題があり、参入各社や業界団体では、こうした諸問題の解決策を検討している。

今後のデジタルサイネージ市場成長 鍵は「ロケーション」と「コンテンツ」

最後に、「現状、生活者がどの程度デジタルサイネージを意識しているか」について触れたい。矢野経済研究所が2009年5月に実施したデジタルサイネージに関するアンケート調査では、デジタルサイネージを見た人がその影響を受けたかどうかについて質問したところ、およそ20.3%の人が「強い関心」を持ったと回答した。これは2008年9月のデジタルサイネージに関する意識調査より11ポイントも向上しており、徐々にリーチが広がっていることを示している。限定的ではあるが、商品や情報に対する関心を喚起する効果は十分にあると考えられる。

先ごろ発刊した最新レポート「デジタルサイネージ市場に関する調査結果 2009」では、市場規模以外にも、課題や課題解決のヒントを紹介しているが、さらなるリーチを訴求するならば、"ロケーション"や"コンテンツ"が重要となる。ロケーションとしては、点として存在するデジタルサイネージを、マンションのエントランスから始まり、街頭、商業施設、駅という具合に、生活動線で結んだ形にしてコンテンツ配信することが必要となるだろう。
また、生活者に、より強い関心を持ってもらうためには、コンテンツの質という視点を欠くこともできない。静止画を表示するにしても、動画を表示するにしても、「デジタルサイネージならでは」「目を釘付けにする」といったクリエイティブが非常に重要となるため、クリエイターの育成が不可欠である。
こうした取り組みを通して、究極的には生活者に「デジタルサイネージを見なければ損をする」といった潜在的な意識を持たせる事が必要だろう。

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