矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2012.07.27

直接部門もBPOサービスを利用せよ

BPOの普及を妨げる間接部門の壁

直接業務へのリソースシフトにより生産性を向上せよ」という記事を過去に書いた。間接部門の業務を標準化し、その業務をより賃金の低いアルバイトに任せたり、外部の事業者に委託して、直接部門に社員を配置転換することで会社の生産性を高めるべきである、といった内容であった。
しかし、残念ながら間接部門の業務をアウトソーシングする動きは日本では進んでいない。それどころか、金融危機以降は、キャッシュアウトを減らすために、社内の余剰人員を活用して自社でできる業務を内製化する企業が増えている状況である。欧米企業が積極的に人件費の安いオフショアに業務を出して効率化を進めているのと対象的である。このままでは、日本企業は、経営の効率化を徹底的に追求する海外企業との競争に負けてしまう危険性がある。

日本でBPOサービスの利用が進まないのは、BPOサービスの利用が、人員削減につながることを企業が懸念しているためと言われている。欧米企業に比較して、日本企業はリストラに対する抵抗感が強い傾向にある。
また、人事部門などの間接部門の権限が強いことも日本企業がBPOサービスを利用しない理由になっていると考える。直接部門の社員の多くは、「実際に稼いでいるのは私たちだ」という自負こそ持っているものの、何故か権限は管理部門の方が強いケースが多い。それは、管理する側と管理される側といった立場が余計にそう見せているのかもしれない。特に、昨今の経済環境下で、常時稼ぎ続けるのが容易ではない状況になってくると、管理する側である間接部門の権限の方がより強く見える。
もちろん、管理部門の権限が強かったとしても、それ自体は必ずしも悪いことではない。これまで日本企業は、間接部門にも優秀な社員を配置し、きめ細やかな業務対応を行なってきた。間接部門に優秀な人材を集めたり、多くの人材を抱えることができるということは、それだけ経営に余裕があり、質の高い経営をしているということでもある。また直接部門だけではなく、間接部門での業務経験も社員に積ませることで、多様な視点で経営を見ることができる幹部を育成することができる。その他、社員の立場に立って見ても、直接部門での市場競争から一旦離れて、間接部門で違った角度から会社に関わりたい人もいるかもしれない。

このように間接部門の権限が強いこと自体は必ずしも悪いことではない。しかしながら、昨今は、グローバル化の進展が著しいため、経営効率化を進める欧米企業に対抗していくためには、日本企業も間接部門から直接部門にリソースをシフトしていかざるを得ない状況になってきている。そのため、「直接業務へのリソースシフトにより生産性を向上せよ」という記事を前回書いたわけだが、上述したように間接部門の権限が強い状態のままであれば、そのようなリソースのシフトが進むはずもない。間接部門の社員が、自部門の担当業務が縮小することを承知の上で、全社的な視点に立った構造改革を進めていくとは思い難い。

直接部門は部門単独でも生産性の向上に努めよ

間接部門の人材を直接部門にシフトさせ、会社全体として生産性を高めていくことが理想だが、そのような取り組みは、前述したような理由により、日本企業ではなかなか進みそうもない。
だとすれば、直接部門は、自部門単独でも生産性の向上に取り組むべきである。直接部門の業務は、コア業務などと言われ、社員でなければ業務を進められないと考えている人が多い。しかしながら、直接部門の中にも、標準化・マニュアル化することで、より賃金の低いアルバイトに任せたり、外部の事業者に委託することができる業務があるはずである。そのような業務を社員以外の人が処理できるようになれば、社員をより付加価値の高い業務にシフトさせ、部門内の生産性を高めることが可能となる。直接部門の社員は日々の業務に追われ、業務改善にまで取り組む余裕はないかもしれない。しかしながら、そこは外部のアウトソーサの力を借りてでも一度時間を割いて、取り組みたいところである。直接部門のオフィス系業務は特に社員がやらなければならないという風潮が強く、誰でもできるような単純作業を社員がやっているケースが多い。しかしながら、そのような状態では、社員が付加価値の高い業務に割く時間は少なく、努力の割には生産性は向上しない。

間接部門から直接部門へのリソースシフトは、全社レベルの話であるため実行するのは容易ではないかもしれない。しかしながら、自部門内の業務改善であれば、自部門の権限で実行できるはずである。まずは、自部門の生産性を向上させて、業績を出していかなければ、直接部門は人員の増強、つまり直接部門へのリソースシフトも会社に対して要請しづらい。直接部門は、まずは、自部門の業務を見直し、社員でなくてもできる業務を積極的に標準化・マニュアル化して外部に出し、社員のリソースをより付加価値の高い業務にシフトさせていくべきである。

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■アナリストオピニオン
直接業務へのリソースシフトにより生産性を向上せよ

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石塚 俊(イシヅカ タカシ) 主席研究員
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