楽天とファーストリテイリングが社内公用語を英語にしたという。是非についての議論はあろうが、成長企業が前例のない大胆な手法を取ったことは興味深い。日本企業は海外進出を加速しており、既に実績のある自動車や電機のみならず、サービスや流通などの動きも目覚しい。
翻ってIT業界は外国製品がスタンダードである。次世代のITを担うクラウドもアメリカからの輸入によってもたらされ、日本でもアマゾン、グーグル、セールスフォース・ドットコムなど外資ベンダーが足場を築きつつある。
世界に目立った存在感を示せていないIT業界は、バブル以前から海外でトライ&エラーを繰り返してきた。これまで行われてきた「海外進出」は、ユーザ企業に “付いて行く” 形で出るか、大手ベンダーであればM&Aという手法であった。先日業界トップクラスの大手企業で海外事業を担当している方と話した際、「うちは海外に出てはいるけれど実態はグローバル化とはいえないですね、日本の延長になっていて。」とおっしゃったのを、驚きをもって聞いた。海外での実績も多いこの会社でさえグローバル企業ではないと認識しているとは…と思ったからだ。
英語を公用語にしようという大胆な改革の背景には各社の経営者の危機感があったのであろう。ユーザ企業のスピード感とIT業界との「温度差」をも感じた次第である。
現地企業を顧客として独自のソリューションを提供する、自律的な事業のチャレンジはこれから始まる。ユーザ企業には遅れを取っていることは否めないのだが、IT業界も海外へ向かおうとしている。
この度IT業界のグローバル展開状況について調査を行ったところ、国内市場の停滞と新興国市場への期待は企業規模を問わない共通の認識となっており、海外市場開拓を2010年度以降の経営テーマに掲げている企業が多いこと、また、そのほとんどが中国での成功を目指していること、は印象的だった。オフショア拠点だった中国が、今や製品やサービスを販売するための巨大な「市場」として注目を集めている。
ようやく最初の一歩を踏み出した段階にある企業が多く、ほとんどの企業が共通の課題を抱えていた。ポイントを例示してみる。
中国ビジネスを検討・推進している企業にとっては、首肯するところが多いのではないだろうか。このような課題を乗越えられるかどうか、日本IT業界のグローバル化の試金石となろう。近い将来成功事例の登場を待ちたい。
私は、海外の様々な国に行った折に、どこの国でも日本製品・日本企業が高く評価されている事を常に誇りに感じている。冒頭で触れた2社のようにベンチャースピリットに溢れた企業が頭角を現すのか、それとも大手企業が磐石な基盤を築くのか。いずれにしろ業界初といえるかもしれないグローバルIT企業の誕生と活躍に期待している。
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