矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2010.07.20

遠いICT先進国への道のり

低迷する国際競争力

平成22年7月6日、総務省、情報通信国際戦略局は、平成22年「情報通信に関する現状報告」(平成22年版情報通信白書)を公表した。例年内容が異なる同白書の本年の特集テーマを「ICTの利活用による持続的な成長の実現」とし、国民のコミュニケーションの権利を保障する「国民本位」のICT利活用社会を構築するための方向性について分析している。

白書の第1章では国民本位のICT利活用を推進した場合、いかに国民の便益が向上して地域が活性化されるか、更に「つながり力」を強化して、失われつつある地域社会のきずなが再生されるかなどについて検証している。そして、そのなかで「我が国のICTの基盤及び利活用に関する国際比較」と題して、諸外国におけるICTの普及及び発展状況などを勘案した我が国のICT基盤及び利活用の進展度について、25か国間の比較により評価している。
これによれば、ICTの基盤(整備、普及)及び利活用の進展度を表す全体の総合評価(ICT総合進展度)では、第1位は韓国、第2位は日本、第3位デンマーク、次いで、スウェーデン、米国となり、我が国は25か国中第2位という結果となった。その詳細を見ると、基盤(整備)については、分野別で比べると「7.安定性」が第4位であるものの、「6.先進性」及び「8.許容性」の双方で第1位となっているため、総合でみると我が国が第1位という結果となっている。また、基盤(普及)をみると、分野別では「4.固定ネット普及」が第7位、「5.モバイル環境普及」が第11位であることから、総合で第8位となり、基盤(整備)の第1位と比べるとやや見劣りのする結果となっている。しかしながら、利活用については、総合で第16位と中央(13位)より下位となっており、基盤(整備及び普及)での評価を考えると、非常に低い順位となっている。さらに、これについて分野別の詳細な結果をみると、「1.個人の利活用」は第9位、「2.企業の利活用」は第8位であり、これらは基盤(普及)の総合の第8位とほぼ同様となっている。
しかし、「3.政府の利活用」に関しては第18位と、今回評価した分野の中で最も低い順位を示しており、今後、特に注力が求められる分野であることが浮き彫りとなった。

つまり、この結果をサマライズすると、日本のICTの利活用に関しては、将来の普及にむけてのインフラの整備は進んでいるが、実際の普及に関してはまだ十分ではない。また、利活用に関しても、インフラの整備状況から考えると非常に見劣りする状態であり、個人や企業のみならず、特に政府における利活用が大きく遅れており、そしてそのことが、日本全体の国際的なIT化の位置づけを引き下げる結果になっているのである。

国のICT戦略

一方、平成13年1月、内閣に設置された高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的に、日本のITに関する国家戦略を検討している。このIT戦略本部で平成22年6月22日に決定された「新たな情報通信技術戦略 工程表」の内容を見ると、スピード感に欠ける日本政府のIT化の計画がうかがわれる。
例えば、冒頭の「情報通信技術を活用した行政刷新と見える化」という項目においては、「これまでの情報通信技術投資の総括とそれを教訓とした行政刷新」というテーマで、2010年、2011年で、電子行政推進の基本方針を策定する、業務の見直しを推進する、政府CIO等電子行政の推進体制を整備する、などという計画が記載されている。また、本文中においては、「検討」や「可能なものから」などという言葉が散見され、計画の実現性に非常に不透明な印象も受ける。勿論、「工程表」には、今後のIT行政として期待したい項目も多数含まれているが、その多くは2010年の検討開始と2020年に向けての実現などが基本スタンスとなっており、スピード感という意味では大いに物足りない印象がぬぐえない。
そもそも、本年度が終了すれば、IT戦略本部が設置されて丸10年が経過することになるが、残念ながら行政のIT化に関しては、この間で目覚しい進展があったようには到底思われない状況である。

前に進むための体制を早期に実現すべき

地方の疲弊状況や国の財政状況等を鑑みると、この先も十分なIT化予算が避けるとは到底思われない。こうした状況を見ると、民間の後押しをしなければならないはずの政府が、逆に国全体のIT化の水準を引き下げる結果を招いていると言える。「失われた10年」は、実は間もなく「20年」になると言われている。これはIT化戦略に限った話ではなく、政治が迷走を続けるこの数年に関して言えば、むしろ国が民間の成長機会を大きく奪ってきているとさえ思われる状況である。早期に政府としての体制を立て直し、官民一体となって、戦略的なIT国家を目指すエンジンをチューンアップしなければならない。そのためには内輪のつまらない権力抗争は不要である。もはやわが国には一刻の猶予もないと考えるのだが。

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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