矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2019.10.28

顧客セグメントではなく、顧客個人を軸としたデータ管理へ –CDPベンダー トレジャーデータの紹介

近年、一般消費者の購買行動は変化しつつあり、商品の購入前に情報収集・価格比較をオンライン上で行うほか、企業と様々なチャネル接点を持つようになっている。そのため、企業側は顧客一人ひとりに対してパーソナライズされたコンテンツを提供して顧客体験の質の向上に取り組む必要性が高まってきている。配信するコンテンツを顧客ごとにパーソナライズすることで、適切な顧客に、適切な情報を、適切なタイミングで提供し、顧客体験の質の向上につなげていく。

一方で、パーソナライズ化が過ぎれば自分に関する情報を過度に把握されていると感じ、顧客の離反を招く可能性もある。企業は、顧客側にいかに不快感・不安感を感じせることなく、企業の好感度をあげることができるか、がポイントとなってくる。

また、日本の人口減少による働き手の減少や働き方改革の推進を背景に、企業側は効率的に営業活動を展開していく必要に迫られている。効率的に営業活動を進めつつ、顧客体験の質の向上に取り組もうとした際、人手で数万人~数百万人の顧客へパーソナライズされたコンテンツを配信するのは現実的ではなく、MA(Marketing Automation)やDMP(Data Management Platform)をはじめとするマーケティングツールの活用が進んでいる。

デジタルマーケティングツールのなかでも、顧客を基軸に属性データや行動データを収集・蓄積・統合するプラットフォームであるCDP(Customer Data Platform)の利用が進みつつある。CDPを活用することで、顧客をセグメント化して管理するのではなく、顧客個人を軸としたデータ管理を行うことができる。

CDPは社内のサイロ化された1stパーティーデータの収集、2nd/3rdパーティーデータとの連携、統合・分析を行い、MAなどの各種ツールを活用してマーケティング施策を展開する。顧客個人を軸にデータをリアルタイムに収集し、活用していくことで、顧客がどのような経緯で自社サイトに到着し、自社サイトでどのようなコンテンツを閲覧したのか、といったカスタマージャーニーを追いやすくなる。さらに顧客一人ひとりを軸としているため、より確度の高いマーケティング施策が実施できる。なお、日本では2017年頃よりCDPが登場したが、現状はプライベートDMPといわれることも多い。

【図表:CDP(Customer Data Platform)概要】

図表:CDP(Customer Data Platform)概要

矢野経済研究所作成

以下では、CDPベンダーであるトレジャーデータについて紹介していく。

トレジャーデータでは、2017年7月よりカスタマーデータプラットフォーム「TREASURE CDP(現:Arm Treasure Data CDP)」を提供している。Arm Treasure Data CDPはクラウド型データマネジメントサービスであり、クッキーIDやIDFA等のログデータや広告配信ログに加えて、個人を特定する各種データ(カスタマーID、氏名、eメールアドレス、住所等)も取り扱うことができる。各種データの保管期間に制限は設けていないため、顧客一人ひとりに紐づいた行動ログデータや属性データを長期間保管、分析を行うことが可能である。そのため、顧客セグメントに応じた広告配信ではなく、顧客一人ひとりに個別に対応した、各種のマーケティング施策を実行できる。

また、同製品は400以上のシステムと提携しているため、柔軟に他システムと接続できる。企業内の別システムに保管されているデータを統合できるため、オペレーションの煩雑さの解消、コストの削減などが見込める。加えて、パッケージ化されたサービスであるため、エンジニアがコードを開発する必要もない。

2019年4月には、同製品の機能拡張を発表しており、UIの改良のほか、外部ツールとの連携強化を実施した。なかでも、TAPAD社のクロスデバイスソリューションとの連携を強化したことで、複数のデータソース(デバイス)のID統合を実現する。現在一人平均7台のデバイスを持っているといわれており、これらのデバイスのWeb行動データなどを一つのIDに統合することで、個人の嗜好や特徴に関するデータの精度向上につなげていきたいと考えている。

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