矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2015.08.11

COMPUTEX TAIPEI 2015にみるデバイス開発の潮流

今年も2015年6月2日(火)~6月7日(土) にかけて、COMPUTEX TAIPEI(台北国際コンピュータ見本市(台北國際電腦展))が開催された。台湾、中国の企業1,500社以上が出店、PCパーツ、タブレット、スマートフォン、周辺機器、ディスプレイ関連製品などが展示されている。出展製品をみていると、その年以降のICTのトレンドが見えることから、筆者もここ4年ほど参加している。昨年に引き続き、2015年の出展の特徴や気になったものを取り上げつつ、今後のトレンドを述べていきたい。

スマホ、タブレット、スマートウォッチの出展は大幅減少 “スマートホーム”のコンセプトが増加

■ウェアラブルは形を変えて、車載も注目

開催の位置づけについては2014年の内容を参考にしていただくとして、アジア最大、世界No. 2のICT展示会とのこと。特にここ直近から1年後までを見据えたハードウェアの展示が中心であることから、比較的、短期のサービス・ハードウェアの潮流が見えてくる。

中台の企業が中心に展示、台湾政府の威信をかけた展示会

筆者の予想としては、スマホ・タブレットの展示は減少して、代わりに新たなテーマが誕生すると考えていた。結果として、小粒なテーマが多かったが、その分、多様性に富んでいたというのが印象的であった。

昨年まで、振り返れば展示されていた、スマートフォン、タブレットの出展は大幅に減少し、中国企業の10社程度の出展にとどまった(昨年は20社以上)。また、スマートウォッチも探してやっと見つけられる程度で、出典は大幅に減少していた(昨年は30社以上)。

ヘルスケアサービスの一つとして展示はされているものの、パンチ力に欠けるウォッチ型端末

また、もしかして期待していたスマートグラスについては、筆者が確認できたのは3社のみとなり、市場の形成すらされなかったのとの印象である。Googleを中心として様々な実験が行われているが、プライバシーの問題が重く圧し掛かっているとの印象である。グラス部分にSNSを中心とした情報やエリア情報の表示は、歩行中の安全性を含めて、未だ発展途上との認識である。

スマートグラスもやや小型化したが、大きな変化はなかったのは残念

ウェアラブル端末で目をひいたのは、上記のような時計、メガネではなく、ランニングウェアや作業着として、「本当に着てしまう端末」であった。

ランニングウェアにGPSやセンサーがついており、体全体のバイタルデータを取っていこうという取り組みがなされていた。ウォッチ型の端末と連携させながら、体調管理、健康管理のサービスを提供。

いっそのこと「ウェアラブル」ではなく「ウェア」としてサービス化

さて、スマホ、タブレットの代りに目玉となったのが、”スマートホーム”であった。日本では、“スマートハウス“といわれることが多いようであるが、世界的には”Smart Home(スマートホーム)”と言わることが多いようである。

また、名称だけではなく、コンセプトも大きく異なる。Smart Homeは、家電や空調、照明制御、ホームセキュリティとの連動を意識したサービスとなっている。一方、日本の“スマートハウス”は、従来はSmart Homeと同じコンセプトであった。しかし、1996年の東日本大震災で大きくコンセプトが変わった。この震災で国内において、”省エネ”がキーワードとなり、エネルギー利用の見える化、各家庭におけるエネルギー減の確保のため、太陽光発電や蓄電機能などが焦点になった。
よって、ある種、日本だけが異なる方向性でSmart Home、スマートハウスのアプローチが進んでいるといえる。

前置きが長くなったが、Smart Homeの展示内容としては、先ほど挙げたようなサービスとともに、ハードウェアとしては、簡易カメラとコンセントが中心となっていた。家電やその他機器の通信手段を確保するために、PLCモデムを活用したり、USBのインターフェースをもつコンセントの出展が多く見られた。

コンセプトだけではなく、Smart Homeに向けたコンセントなどハードウェアの展示がある

また、自動車に搭載する機器の展示も増加しつつある。

従来は、カーナビの廉価版として、PND(Portable Navigation Device)の出展が多かったが、インパネやバックミラーの高度化が図られたハードウェアが展示されていた。

インパネ部分については、

人、家とくれば車へ。自動運転やIoTの流れから展示が増加

その他、気になったのは3Dプリンターの特設ブースが設けられ、10社程度の出展が行われていた。近年、注目度の高さもあり、人だかりができていた。ただ、ものとしてはコンシューマ向けの簡易なモノであるが、趣味レベルであれば問題ない。

さらに、4K放送や映像機器に関するソリューションも一部にあったが、大きなテーマとはなっていなかった。

3Dプリンターの前には多くの人がスタッフに質問をしていた

4Kテレビやエンコード・デコード装置の展示も一部にみられた

Smart Homeや車載端末増加の影響か、小型カメラの展示も増えている。
高機能・小型化が進む。

最近はおなじみの飛行物体も発見!

今後はCES Asiaとの競合も

■成長株のアジア圏内の展示会の競争は激しさを増す

同展示会は、ICT製品の企画・製造の中心地となりつつある台湾が、総力を挙げて開催している。

ただ、その1か月前には、世界最大の家電・ITの展示会CES(Consumer Electric Show)のアジア版「CES Asia」が、2015年5月に上海で初めてアジア開催が行われた(出展者数250社以上、想定来場者数15,000人、展示面積8,500平米)。

出展数は欧米開催の展示会よりも少なく、また、新製品発表の場という点では、かなり見劣りしていた。しかし、アジア地域におけるサービス、ハードウェアの市場拡大が見込まれる中、Computex Taiwanには大きな脅威といえる。

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