矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

アナリストオピニオン
2015.02.04

クラウドファンディング

新しい資金の集め方に注目

「クラウド」という名前も、ビジネスシーンでは一般化してきた感がある。CMにも「クラウド」が流れるそんな時代。
クラウドコンピューティング、クラウドサービス、クラウドソーシング、クラウドファンディングと、様々な「クラウド」が登場している。
ただし、同じクラウドでも、クラウドコンピューティングの場合は「Cloud(雲)」、クラウドソーシングの場合は「Crowd(群衆)」である。LとRを区別しない日本語では同じでも、英語表記となると、意味合いは異なる。
本稿では、新たな資金集めとして注目されている「クラウドファンディング(Crowdfunding)」を取り上げたい。

多くの人からの出資で資金調達リスクを低減できる

クラウドファンディング(Crowdfunding)とは、不特定多数の人が通常インターネット経由で、他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味している。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語であり、「ソーシャルファンディング」とも呼ばれる(参照: Wikipedia)。

クラウドファンディングは、事業に限ず、防災や市民ジャーナリズム、ファンによるアーティストの支援、政治運動、映画 、科学研究など、個人・事業会社・プロジェクトへの貸付など、幅広い分野への出資に活用される。
撮影前の映画やロックバンドの活動資金など、今までにない資金調達で、世界に新たなコンテンツや動きを伝えることとなった。
2012年現在、クラウドファンディングの市場規模は前年比2倍の28億ドル(日本円換算で約2,291億円)と言われ、特にビデオゲーム関連での出資が著しい伸びを見せているとのことである(同Webサイトより)。特に、ビデオゲーム分野の出資額は2011年比で10倍以上にまで達した。ゲームソフトではStar Citizenが約620万ドル、ゲーム機ではOUYAが約860万ドルを集め話題となっている。

従来の事業における資金調達方法は、自己資金、行政や銀行、個人などの貸付、大掛かりなものとなると、株式上場や法人による出資などが基本であった。
しかし、このクラウドファンディングは、その世界中の多くの人から少額で資金を集めることができる。また、出資する側も負担やリスクが少なく、すばやく新たな事業をスタートさせることが可能である。
日本においては、「資金決済に関する法律」等によって、個人間の送金や投資が制限されていることから、プロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入することで支援を行う「購入型クラウドファンディング」が中心であった。
しかし、2014年に金融商品取引法が改正され、1人当たり50万円を上限に、総額1億円未満の資本調達が可能になったことから、今後、日本においても、クラウドファンディングのプラットフォームや資金の活用が拡大することが期待される。

改めて資金の出資と使う側の責任を確認したい

クラウドファンディングにおいては、資金を提供した側は出資した範囲で責任をとる。つまり、出資金額以上の損失は当然発生しない。また、出資を受けた側は、その出資金額の中で責任を持って、その目的のために資金を活用し、場合によっては、出資者に対して、金銭又はその他サービスによる還元を行う責任がある。

現在の株式会社の基本精神は、「資本金における有限責任」であり、仮に事業が失敗しても、資本金の中で処理されるものである(責任は限定される)。個人事業主においては、自宅を担保とされる場合が大半であるが、それでも、金融資産が対象である。
しかし、事業主の責任感が強すぎたり、その失望感などから、自ら命を絶ってしまう方も後を絶たない。現在でも日本では、事業失敗を原因としたと考えられる自殺が、毎年3,000件もあるという(内閣府データ)。
事業の失敗は、経済的な損失だけではなく、自身のプライドを傷つけ、また、家族含め、他人のへの迷惑など、多くの傷と負の感情を生み出す。
しかし、「事業の失敗は、今後の自分、社会に活かすべきであり、我が生命を賭(と)してまで責任をとるものではない」と申し上げたい。
事業は、栄枯盛衰、スクラップ&ビルドはつきものである。よって、失敗しても機会があるのであれば、クラウドファンディングを活用するなど、何度でもチャレンジをすればよい。また、経営者であったとしても、事業とその生命は別のものである。
最後に重い話となってしまったが、「命の重さ」を考える出来事があったため、取り上げさせていただいた。今、苦しんでいらっしゃる方、我が最愛の友人、家族が読んでいただければ幸いです。

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■レポートサマリー
国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2022年)

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