「ワイヤレスセンサーネットワークは本格普及するのか?」。
これはここ数年、ICT業界をはじめデバイス業界、インフラ関連業界などで呈されてきた疑問である。このような声が聞こえるのは、それが実現した時の影響が非常に大きく、直近ではインターネットやSNSに匹敵するインパクトが期待できるからであろう。
本項においてワイヤレスセンサーネットワーク(以降WSN)は、複数のセンサー付無線端末(センサーノード)を散在させ、それらが協働して自然・環境/識別・認識/物理的状態・状況/検出・特定といった情報を感知・収集・解析する無線ネットワークと規定する。そして感知分野/感知対象には、以下のような分野を想定する。
- <自然・環境>
- 温度、湿度、降水量、日射量、風力・風速、水量、音、花粉、紫外線、他
- <状態・状況>
- 速度・加速度、角度・傾き、歪み、位置、高度、重量、長さ、圧力、振動、衝撃、他
- <識別・認識>
- 顔、指紋、声紋、静脈、RFID(タグ)、バーコード、他
- <検出・特定>
- 電気・ガス・水道、熱、煙、火炎、放射線、化学物質、VOC、他 /dl>
WSNは多点同時計測が可能であるため、物理現象/状態分布の変化などを把握することには特に有効とされる。そのため、気象/環境観測、自然災害監視、電力を中心とした社会インフラ管理、農林・畜産業、施設管理といった広域多点観測業務において導入がすすめられている、もしくは実証実験や研究開発が進められている。特に東日本大震災以降では、電力監視(省エネ対応)が社会的な要請となっていることから、その部分でのWSNの役割が期待される。さらに将来的には、欧米では導入が進められているヘルスケア分野(健康管理や医療・福祉関連分野)への適用も想定する必要もあり、これが実現すると医療費抑制といった国家課題に対する寄与も感得されよう。
また別の観点では、WSNの導入によって、大幅な配線削減/設置工事の簡略化/維持管理のコストの削減なども可能となってくるため、産業界における効率化やコスト削減といった普遍的な要望にも適合できる仕組みである。
WSNの活用分野/期待分野は非常に多岐に渡っており、その目的は管理、監視・モニタリング、追跡、制御・スイッチなどに集約できる。具体的には、電力量や温度などの状態監視、赤外線や慣性センサーによる行動監視、GPSや電波/音波、慣性などによる追跡・位置確認などで、これを大別すると位置情報と状態情報の収集になってくる。
WSNにおいて、導入が進んでいるもしくは中期的に導入が見込まれるカテゴリーは以下の通り。現状で想定できるカテゴリーは非常に多岐にわたるが、短期的には施設などでの維持管理/電力モニタリングや一次産業での環境監視、電気・ガス・水道といったインフラにおける供給監視(スマートメーター利用)、自然災害監視などが有望視されている。
矢野経済研究所推計
(早川泰弘)
■レポートサマリー
●社会インフラIT市場に関する調査を実施(2021年)
●社会インフラIT市場に関する調査を実施(2019年)
■アナリストオピニオン
■アナリストオピニオン
●2018年はIoT元年になるか?
●IoT社会はセンサーネットワークによって実現する
●センサーネットワークは社会インフラ化する
●ワイヤレスセンサーネットワーク(WSN)に対する考察<導入効果>
■同カテゴリー
●[ICT全般]カテゴリ コンテンツ一覧
●[通信/放送/ネットワーク]カテゴリ コンテンツ一覧
●[情報サービス/ソリューション]カテゴリ コンテンツ一覧
●[通信機器]カテゴリ コンテンツ一覧
●[テクノロジ/デバイス]カテゴリ コンテンツ一覧
YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。
YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。