最近、金融庁による新しい保険の審査が遅延しており、大きな影響を被っていると聞く。
本来であれば、概ね審査期間は決まっているそうだが、それどころではなく数ヶ月の遅延に及ぶとか。
背景には、金融庁による貯蓄性保険、特に外貨建て保険の規制強化がある。金融庁は、近年一部の生命保険会社を中心に積極的に販売してきた外貨建て保険について、契約者が理解せずに契約しているケースが散見、トラブルが増加しているとして、顧客本位の業務運営の観点から更なる規制強化に乗り出している。
直近では2021年6月には、金融庁告示等において外貨建保険を責任準備金の対象とするほか、2022年1月に販売時の比較可能な共通KPIの設定を発表するなど、契約者保護の強化を進めている。
2021年9月発表の「保険モニタリングレポート」でも項目の1つとして割かれており、危機感の強さがにじみ出ている。実際に同レポートにおいて生保協会調べとして外貨建て保険の新契約に関する苦情が多く、2019年をピークに減少しているものの、依然として苦情発生率が高い状況にあると指摘(【参考】2020年度:1,866件)。
また、国民生活センターの相談件数においても同保険に関する事例は多い。
こうした規制強化に伴って、同保険を取扱っている生命保険会社各社が規制対応に取組んでおり、必要書類を金融庁に提出。金融庁側も同保険にかなり人を割いているため、InsurTechなどの新しい保険の審査が遅延しているというわけである。
より顧客にとってメリットのある保険商品を出そうにも、顧客本位でない保険商品が原因で、生命保険業界全体、ひいては保険の恩恵を受ける我々一般ユーザーにも影響を与えている状況にある。はたまた、協業先があれば、こちらも影響を被っていることだろう。外貨建て保険の影響はここ数ヶ月は続くため、新しいInsurTech系の保険商品の発表ラッシュは2022年秋以降になるとみられ、市場規模の見込値にも多少の影響を組み入れる必要がありそうだ(山口泰裕)。
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