矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2020.10.09

【アナリストオピニオン】コロナ禍での中期戦略はシナリオ作りから③

未来へと立ち向かえ

シナリオ①~③を見比べると、切り替わるキーポイントは、薬の開発か集団免疫の獲得ということになるのが分かる。ところがそれは分かったとしても、薬の開発や免疫獲得に成功するのか失敗するのか、それを我々が予想するのは、ほぼ不可能だ。となれば、要するにシナリオ①~③のうち、未来はどれになるのか、悩んでもしょうがないのである。
とはいえ、そこで思考停止してしまっては、未来に挑むことはできない。大切なのは、各シナリオになった場合の身の振り方を積極的に検討しておくことだ。

読者自身の企業への影響はどうだろうか。ICT産業としては、どのシナリオにおいてもDXの進展が含まれているのは追い風ともいえる。ユーザー企業の景況悪化を望んでいるわけではないが、ITを活用したビジネス革新に向けて行動してもらうには、企業に危機意識を持ってもらうことも重要だ。

シナリオ①となれば、だれもが委縮している時期に、積極的にマーケティングコストを投下し、景況回復とともに回収するシナリオが想定できる。シナリオ②では、いくらDXの追い風があるといっても、自社の業績悪化も織り込んで、絞り込んだ投資にしていかねばならないだろう。シナリオ③は現預金を厚めにして(必要があれば調達し)、嵐が過ぎるのを待つ必要があるだろう。
どのシナリオを想定するかは取り巻く環境によって異なるが、例えば、貴社の顧客からのビジネスがあまり減っておらず、当面の現預金もあるならば、シナリオ①のスタンスとなるだろう。もし薬の開発などが遅れるようであれば、シナリオ②に移行すればいい。逆に、キャッシュに不安があるならば、シナリオ②を想定し、投資分野を限定し、主要な既存顧客に対し丁寧な対応をしていく必要があるだろう。

シナリオを作成し、断片的にでもやるべきことを頭に描ければ、前を向いて立ち向かっていけるはずだ。我々も微力ながら、市場調査を通じて、中長期計画策定などの支援をしていきたいと考えている。

なお、最後に参考までに、コロナ関連をタイトルに含むレポートを一部紹介しておこう。これ以外でも、ほとんどのレポートで新型コロナについては記載されている。ぜひ目次を確認したうえで、参照してもらいたい。

忌部佳史

 

■コロナ関連をタイトルに含むマーケットレポート
2020年版 物流ロボティクス市場の現状と将来展望 ~ポスト・コロナはヒトとロボットの協働時代へ~
2020-2021 スマートフォン・移動体通信世界市場総覧 ~中国リスクとCOVID-19を乗り越える5G市場~
2020年版 食品の通信販売市場~コロナショックとサブスク拡大で見直される食品EC~
アフター・新型コロナ~日本産業の構造変化と成長市場~
2020 テレワーク関連ソリューションの実態と将来予測 -ポストコロナの働き方-
With新型コロナ社会直前期の若者の意識・行動に関する調査レポート

忌部 佳史(インベ ヨシフミ) 理事研究員
市場環境は大胆に変化しています。その変化にどう対応していくか、何をマーケティングの課題とすべきか、企業により選択は様々です。技術動向、経済情勢など俯瞰した視野と現場の生の声に耳を傾け、未来を示していけるよう挑んでいきます。

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