矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2020.04.09

AIにできない仕事⑲ AIはWeb会議の「裏会議」をとれない

AI(人工知能)がやがて人間の仕事の多くを代替していくって本当でしょうか。でも、AIにもできない仕事があるのでは?

おそらくは読者の皆様の職場と同じく、市場調査会社でもコロナウイルスの影響で、Web会議使用頻度が増加しています。それも互換性の問題からか、ビデオ映像のない会議が多くを占めます。音声とプロジェクター表示だけの会議になりますが、1時間程度のミーティングでも、思ったよりどっと疲れることがわかりました。慣れてないせいでしょうか?

テーブルを囲んでのあるプロジェクトの会議の場合、たとえば会議参加者が8人いたとした場合、Aさんがリーダーとして会議を進行していて、Bさんが最も内容的に最も深く関わっていて、Cさんがプロジェクトの経理と根回しをやっていて、Dさんが他部門から聴講と刷り合わせに来ており、EさんはBさんの内容と隣り合う分野に詳しく補完の役目を果たしており、Fさんは同じ内容の欧米の状況に詳しく、Gさんは同じく中国の内容に詳しく、Hさんは期待の新人で勉強のためと世代間ギャップの発言を求められて……という具合いに立場や役割りが分かれます。

通常のテーブルを挟んでの会議の場合、発言した各人の顔と声が一致するので、常に誰が誰に対してモノを言っているかがわかり、「あ、Aさんは今方向性について迷っている」「BさんとGさんは意見の対立をしている」などとわかります。しかし、Web会議ではまず声と顔とを一致させるところから頭を働かせなければなりません。さらに各人がどんな感情をもっているかについても、表情が見えないので、声のトーンや話す速さなどから感情を推測しなくてはなりません。このように頭を余計に使わねばならず、同じ時間でもテーブルごしミーティングの何倍も疲れてしまうようなのです。

顔の表情がわかるビデオ会議はもちろんですが、AR/VR技術(イラストあり)で参加者の全身の動きや視線の方向がアバターで表示されてわかるWeb会議があるといいと思いました。それもPCででき、低価格で、IT弱者にも使いやすく、できれば多言語同時通訳機能付きでほしいです。もしAR/VRが難しいなら、参加している各人の感情をイラストで表現したり、発言回数や時間のカウンターがあったり。これらはウイルス対策として非常に重要であるし、もしかすると、これによってこそITが次の段階にステージアップできるなんてことはないでしょうか。

こうしたWeb会議の活用データ(音声など)を、AIは吸収して、それらをとりまとめた結論を出したり、方法論を出したりできるかもしれません。

しかし、現実にはWeb会議が終わったあと、Fさんが「Bさんはちょっと米国寄りすぎる発言が多くありませんか?」と中国通のGさんに相談したり、Cさんが「とてもこれではコストが採算割れしてしまいます」とAさんに泣きついたり、DさんとFさんの感情がもつれたり、……という「裏会議」が催されていることでしょう。

AIはWeb会議システムに流れなかった「裏会議」を想定して、それまでをデータに流し込んで解析するということはできないでしょう。感情のもつれ、しこりまでを理解できないだろうし。今回は否定され、あるいはWeb会議では発言されなかった「裏会議」の発言の中に、未来を切り開くヒントがあるかもしれず、AIはそれを活用できないでしょう。

AIにできない仕事のヒントはこの辺りにあるかもしれません(森健一郎)。

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