疑問があればAIに尋ねることが、今や日常になった。仕事や学習だけでなく、人間関係や人生の悩み、宗教に関する質問にまで利用が広がっている。英経済誌『The Economist』は、こうした変化が宗教界にも及んでいると報じた。例えば、カトリック系スタートアップのLongbeard社は、宗教文献や神学資料を基に質問に答えるチャットボット「Magisterium AI」を世界各国で提供している。これまで宗教指導者や信仰共同体、書籍に求めていた答えを、チャットボットにも求めるようになったのである。
問題は、AIがどのような観点から答えるかという点だ。汎用AIモデルは特定の宗教の教えを基準に設計されているわけではなく、宗教的な質問にも世俗的な観点から答えることがある。一部の宗教界では、AIへの個人的な相談が増えることで、宗教指導者や共同体の役割が弱まる可能性を懸念する動向もみえている。こうした状況を背景に、宗教界とAI開発企業の間でも協議が進んでいる。Anthropic社は、カトリックやイスラム教などを筆頭に、さまざまな宗教関係者の意見を聞きながら、AIの行動原則を検討している。また、カタールではイスラムの価値観を反映したアラビア語中心のAIモデル「Fanar」の開発を支援しており、台湾でも市民の意見をAI開発に取り入れる試みが進んでいる。多様な宗教や文化的背景を持つ利用者に対し、AIがどのような基準で答えるべきかが新たな課題となっている。
こうした動きは、宗教以外の分野にも共通する論点を含んでいる。同じAIモデルでも、利用者が求める答えは国や地域の文化・価値観によって異なり得る。特に個人的な相談や助言では、何を適切な回答とするかについて意見が分かれることも考えられる。グローバルAIサービスの現地化においても、言語対応や現地データの確保に加え、こうした価値観の違いをどこまで考慮するかが、今後の検討事項の一つとなる可能性があると考えられる。
参考:The Economist "AI is changing religion and religions are trying to change AI"
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