矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2026.10.15

「高度化するドローン攻撃 日本はどう備えるべきか」

10月7日、パシフィコ横浜で開催されたKeysight World Japan 2026にて、ドローン攻撃の脅威の現状と、日本の法制上の課題をテーマとした講演が開かれた。本講演では、防衛技術協会理事長の渡辺秀明氏が登壇し、ウクライナ戦争を経て高度化したドローン攻撃に対して、日本が法体制上どのように備えるべきか、諸外国の取り組み事例を交えながら提言された。
 ドローンについては、安価であることや、地形を問わず指定箇所に侵入できることから、従来より脅威として捉えられていたものの、近年ではウクライナ戦争を通して、AI自律型ドローンや飽和攻撃型ドローンも登場してきており、その脅威はより多様化・高度化しているという。さらにロシアや北朝鮮は、これらの製造・運用に関するノウハウも実戦を通して積み上げつつある。
 ドローンの脅威は決して戦地に限定されることはない。講演では、2025年秋以降、欧州各国で、ロシア製と見られるドローンが領空侵犯や重要施設侵入を繰り返している事例が取り上げられた。9月にはポーランドやデンマークで領空侵犯が発生しているほか、同年11月にはベルギーの原子力発電所にも飛来している。こうした事案は多くの場合、海底ケーブルの破壊や重要インフラ・産業へのサイバー攻撃と同時に行われるとされ、NATOもこれを「ハイブリッド攻撃」と呼んで警戒を強めている。交戦当事国でなくとも、こうした脅威に晒されている実態がある。

 

 日本に当てはめた際、重要な点として、ドローンによる攻撃が行われた際の、脅威の認識から対応までの時間的猶予が短いことが登壇者により述べられている。現行の法体制では、初動は警察が対応することが想定されているが、筆者が調べたところ、日本では通報~警察到着までの所要時間は平均おおよそ8分とのことで、数分で完結しうるドローン攻撃への対策にあたっては、この時間的制約が厳しいボトルネックになると考えられる。
 本講演においても、平時でも有事でもない、ハイブリッド攻撃が展開される「グレーゾーン」を想定した防護モデル構築と法体制整備の重要性が強調されている。攻撃対象は、原子力関連などの重要設備から、電力や通信、データセンターや港湾に至るまで幅広く想定されるが、警察不在時でも、インフラ事業者が自ら対処手段を講じてこうした重要インフラの防護を可能にする、というのが、ここで提示された「グレーゾーン防護モデル」の要諦だ。
 本防護モデル構築にあたって、解決すべき課題も存在する。日本では電波法や航空法などの規定により、ジャミングやGNSS妨害をはじめとした対ドローン技術の研究・試験は自由に行えないほか、警察・防衛・海保・民間事業者が連携して対応できる包括的な枠組みも存在しないことなどが本講演にて指摘されている。

 世界的に見ても、こうした事態に備えた体制整備は始まったばかりだ。当該講演にて紹介された諸外国の取り組みとして、例えばベルギーでは2026年6月に、悪意あるドローンへの対抗を目的とした妨害装置が当局許可のもと使用できるようになる法案が閣議承認されたほか、ドイツでは9月よりインフラ事業者への権限付与について連邦議会で協議が始まっている。米国では2025年11月に、FBIが対ドローンを念頭に置いた訓練センターをアラバマ州に設置している。
 日本においても、諸外国のこうした動きに後れを取らず、「グレーゾーン防護モデル」を構築して脅威に備えることで、社会の安定・持続した運用に繋がると筆者は考える。

熊谷 波留弥(クマガイ ハルヤ) 研究員
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