このような主権確保の動きが世界的に加速している要因は、2020年代に入り顕著となった地政学的リスクにある。米中対立の深刻化やロシア・ウクライナ情勢、さらには中東や台湾海峡を巡る緊張など、国際秩序の不確実性はかつてないほど高まった。実際に、経済制裁の影響で特定の国におけるクラウドサービスが突如として停止し、企業の経済活動が麻痺する事態も発生している。加えて、国家の関与が疑われるサイバー攻撃が重要インフラを標的として激化しており、デジタル基盤を他国の技術や法制度に過度に依存することのリスクが再認識されている。
各国の法規制・制度もこの流れを後押ししている。米国ではクラウドセキュリティ認証制度である「FedRAMP」が運用されている。これにより、厳格なセキュリティ要件を満たしたクラウドサービスのみが政府調達の対象となる。大手クラウド事業者は、こうした政府が定める厳格なセキュリティ基準やコンプライアンス要件に準拠した専用のクラウドサービス基盤を構築・提供している。欧州ではGDPR(一般データ保護規則)による個人データの域外移転への厳格な制限に加え、データ主権と透明性を掲げた「Gaia-X」プロジェクトが推進されている。フランスの「Bleu」やイタリアの「PSN」といった国家主導のクラウド戦略が展開される中、AWSやMicrosoft、Google Cloudといったハイパースケーラー各社も、欧州市場向けにデータや運用の主権を強化した専用リージョンの提供を開始するなど、事業者の対応も急ピッチで進んでいる。
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