2026年5月27日(水)から29日(金)にかけて、東京ビッグサイトにて、宇宙ビジネス展「第三回 SPEXA 2026」が開催された。
SPEXAは、ロケット打ち上げから人工衛星の設計・製造・運用、部品・素材、地上システム、衛星データ利活用、宇宙空間利用、関連サービスまで、宇宙ビジネスの上流から下流までを横断的に扱う日本では最大級の宇宙関連の展示会である。
本展を通じて印象的だったのは、「宇宙ビジネス」という言葉が、もはやNASAやJAXAに象徴されるような、未知の空間を探査・開拓するフロンティア的活動(アカデミック・学術領域)だけを意味しているわけではない、ということである。宇宙は、遠く隔たった特別な場所であるだけではない。それは地上の防災、インフラ維持管理、建設計画、行政サービスを支える観測基盤として、私たちの生活圏に入り込み始めている。
その例として分かりやすいのが、スカパーJSATの展示である。「スカパー」と聞くと、多くの人はテレビサービス(衛星放送)を想起しやすい。しかし、スカパーJSATグループは、宇宙事業とメディア事業を両輪とする企業であり、テレビ事業はその一側面にすぎない。
同社の展示では、SAR(※)衛星データを活用した「LIANA」というサービスが紹介されていた。LIANAは、スカパーJSAT、日本工営、ゼンリンの3社が共同で開発を手掛ける、斜面やインフラの変動をモニタリングできるサービスである。SAR衛星データを用いて、Web上で地表面やインフラの微小な変動を可視化し、地すべり、斜面、軟弱地盤、埋立地、道路や空港などの変動把握に活用できる。
※SAR:Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダー。衛星から地表にマイクロ波を照射し、その反射を解析することで、地表面の状態や変動を観測する技術。光学衛星と異なり、雲や夜間の影響を受けにくい点に特徴がある。
LIANAの意義は、宇宙技術そのものの高度さよりも、そのサービスが地上の具体的な意思決定に資する点にある。従来であれば現地調査や個別測量など、人力に頼っていた地盤・斜面・インフラの変動把握を、衛星データによって広域的・継続的に確認できる。自治体、インフラ事業者、建設コンサルタントなどにとっては、危険箇所の把握、予防保全、調査対象の絞り込み等に活用できる可能性がある。
本展を通して見えてきたのは、宇宙ビジネスが「宇宙へ行く産業」から、「宇宙を使って地上の課題を解く産業」へと広がっているということだ。衛星、ロケット、通信、観測、データ解析といった宇宙関連技術は、それ自体が高度な技術領域である。しかし現在の宇宙ビジネスでは、それらが防災、建設、インフラ、行政、物流、農業、海洋監視といった地上の産業課題に接続されることで、単なる先端技術ではなく、具体的なサービスや市場として姿を現し始めている。
そういった点で、SPEXA 2026は、宇宙産業の先端技術を並べる場であると同時に、宇宙関連ビジネスがどのように社会実装され、既存産業の課題解決に組み込まれていくのかを可視化する展示会であった。
(熊谷波留弥)
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