さらにもう一つの変化が重なっている。戦争そのものが、次第にデータと技術を中心に展開されるようになっている点である。近年の軍事作戦ではAIとデータ分析を活用して意思決定の速度を高めようとする試みが増えている。戦場の速度が上がるほど、情報の生成と拡散の速度もまた速くなる。地政学的事件が経済システムや市場へ伝わるまでの時間も、以前よりはるかに短くなっている。
こうした環境の中で金融インフラも変化圧力を受けている。伝統金融は依然として取引時間、決済構造、規制体系を前提とした運営を維持している。一方で一部のデジタル資産取引では、ブロックチェーン決済、24時間取引、スマートコントラクトによる自動化取引などの仕組みを実験している。ディファイのエコシステムではこうした構造がすでにさまざまな形で実装されており、ステーブルコインを中心とするデジタル決済ネットワークも徐々に拡大している様子が観察される。
戦争は常に経済と市場に衝撃を与える。しかし今回の事態が示したのは単なる価格変動以上の場面であった。市場が停止しているあいだにも出来事は進行し、情報は拡散していく。そして企業や機関はそのあいだで次の市場開場を待つしかない。このギャップをどのように理解し、どう対応していくのか。レガシー金融とデジタル金融、そしてAIによる情報分析が同時に機能する環境の中で、金融インフラと市場構造をどのように再検討していくのかという議論は、今後一つの論点として浮上してくる可能性がある。
参考:Reuters, Financial Times, Bloomberg, Euronews
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