矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2026.02.02

【今週の"ひらめき"視点】株式市場改革、上場会社は“公開企業”であることの意味を問い直せ

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

 

1月26日、東京証券取引所は「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」(第9回)を開催、議決権保有比率が40%を超える大株主※を有する上場会社の取締役選任議案において、大株主とその関係会社票を除いた少数株主の賛否率の開示を義務付ける旨、決定した。あわせて少数株主の反対票が5割を越えていた場合、半年以内に反対理由に関する分析結果を開示するとともに株主との対話方針等の策定を求める。新たな施策は2026年12月期の決算企業から適用する方針だ。

研究会では上場会社の負担増への懸念も議論されたが、最終的に「十分に注目すべき少数株主の反対意見は可決されたことをもって無視すべきではない」との方向でまとまった。昨年、JALの持分法適用会社(株)エージーピーの総会では、大株主JALが提案した“株式併合による非上場化案”に対して、経営側はMoM(マジョリティ・オブ・マイノリティ)議案で対抗した。このケースは「大株主と経営陣との対立」といった構図であり、したがって、大株主が経営の実権を握っていることを前提とした今回の改定案とは条件が異なる。しかしながら、少数株主の権利があらためて注目されたことの意味は大きい。

同日、“上場”を巡ってもう一つ重要な改革が発表された。日本公認会計士協会は「新規上場会社等の会計不正によって財務諸表の信頼性への懸念が高まっている」とし、上場会社監査法人の品質管理システムのモニタリング強化等をはかるとともに、小規模監査法人の監査品質への懸念を払拭すべく、現在“最低5人”とする会計士の人数要件を引き上げると発表した。売上の最大9割が架空取引であったAIベンチャー“オルツ”の事案が対策を急がせたであろうことは想像に難くない。

少数株主との対話、財務諸表の信頼回復は健全な株式市場を維持するための必須条件である。昨年6月の総会に株主提案があった会社は111社、可決はわずか7社に留まる。不適切会計も新規上場企業だけの問題ではない。日本公認会計士協会によると会計不正企業数は年々増えており昨年3月期には56社に及んだ。背景には資本効率の改善、高い株主還元、ガバナンス強化など企業価値の短期向上を求める投資家からの強いプレッシャーがある。上場廃止を選択する企業も後を絶たない。昨年は過去最多の124社に達した。上場会社および上場を目指すスタートアップには“パブリックカンパニー”であることの戦略的意義と覚悟をあらためて問い直していただきたく思う。

※保有率の計算に際しては財務諸表等規則8条8項に定める関係会社を含む(東京証券取引所資料より)

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代表取締役社長 水越 孝

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