前回と前々回に続き、ジャパンモビリティショー2025で注目した企業を紹介します。3社目は株式会社T2です。
■T2の取り組み概要
T2は、主要物流拠点間を往復する「レベル4自動運転トラックによる幹線輸送サービス」を2027年に社会実装することを目標に掲げています。これは、ドライバー不足や「2024年問題」による輸送能力不足への対応を狙った次世代ソリューションです。
■レベル4とは
自動運転の基準でレベル4は、特定条件下でシステムが完全に運転を担い、ドライバーが不要になる段階を指します。T2は現在レベル2での商用運行を開始しており、レベル4への移行に向けて実証実験を進めています。同社によると、これまでの実証では無事故を継続しているとのことです。
■なぜ幹線輸送でレベル4が有望なのか
高速道路を中心とした幹線輸送は、信号や複雑な交差点がないため、自動運転の導入に適した条件がそろっていると考えられます。また、幹線輸送で自動運転を実現することで、長距離運転に伴う残業規制への対応にも大きな効果が期待できます。
T2は「高速道路区間は無人運転、出入口付近の切替拠点で有人運転に切り替える」モデルを採用予定で、三菱地所などと連携し、次世代物流センターの整備も進めています。こうした戦略は、休憩管理や労働時間の制約を解消できる点でメリットが大きいと考えられます。
■多種多様な企業が実現に向けて協力
T2の取り組みは、単独ではなく多くのパートナー企業との連携によって進められています。高速道路直結の次世代物流センターや切替拠点の整備では、三菱地所をはじめとする不動産・インフラ企業と協力。さらに、通信会社や車両メーカー、保険会社、IT企業など幅広い業種が参画し、レベル4自動運転の社会実装に向けたエコシステムを形成しています。こうした多様なプレイヤーとの連携は、技術面だけでなく、法制度や安全性の確保の面においても不可欠な要素といえます。
■実現に向けた課題
T2は2027年の実現を目指していますが、展示会で話を聞きながら次のような課題も感じました。
・ETCゲート通過時の減速や割り込み対応
・合流時の安全確保
・法令遵守による速度管理と、周囲の車両との走行調和
また、高速道路では、実際には多くの車が速度を上げがちで、さらに運転にはドライバーの癖や感情も絡みます。こうした環境で自動運転車が自然に溶け込めるかどうかは、今後の鍵になりそうです。
■展示会での印象
T2の挑戦は、物流危機という社会課題に対し、技術で解決策を提示するものです。幹線輸送という限定条件でレベル4を目指す戦略は現実的で、実現すれば物流業界に大きなインパクトを与えると感じました。(小田 沙樹子)
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