矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2025.11.07

ジャパンモビリティショー2025 注目企業の取組②-Global Mobility Service社のFinTechで実現する「車を持つ選択肢」-

前回に引き続き、ジャパンモビリティショーで印象に残った企業を紹介します。今回は Global Mobility Service株式会社(以下、GMS) です。

 

■GMSの技術とサービス概要
GMSは2013年に設立された企業で、モビリティと金融を融合したFinTechサービスを提供しています。中核となるのは、車両に搭載する遠隔通信制御機器であるIoTデバイス 「MCCS」(Mobility Cloud Connecting System) です。このデバイスは遠隔起動制御機能を備え、走行状況や速度などの車両データを収集します。さらに、金融機関と連携して取得した支払い状況などの金融データと組み合わせて分析することで、ドライバーの信用力を可視化します。
この仕組みにより、従来の与信審査に通過できなかった人でも、MCCSを設置することを条件に、ローンやリース契約が可能になります。契約者が支払いを滞納した場合には、車両を安全に遠隔制御し、支払い完了後に再び利用できる仕組みとなっています。

 

■サービスがもたらす価値
このサービスは、単にお金を借りやすくするだけではなく、車を使えるようにして生活や仕事の選択肢を広げます。具体的には、契約者・金融機関・販売店のそれぞれにメリットがあります。
・契約者:車を持てなかった人が車を利用できるようになり、仕事や生活の選択肢が広がる
・金融機関:貸せなかった層に融資でき、貸出機会が増える
・販売店:売れなかった車が売れることで販売台数が増加する
結果として、車の利用により仕事ができる幅も増えるなど所得向上や生活改善につながる可能性があります。GMSはこうした課題解決を目指し、すでに海外法人を設立するなど、グローバル展開にも力を入れています。

 

■盗難防止への応用
MCCSは、車両盗難防止にも活用できるとされています。GMSは、株式会社Secualと三井住友海上火災保険と提携し、「Secual Smart Security」という新しいセキュリティサービスを共同開発したと発表しています。背景には、近年急増しているとされる電子的な盗難手口があります。例えば、車両の電子制御信号を不正に操作してドアを開けたりエンジンを始動させる「CANインベーダー」と呼ばれる手法などです。警察庁によると、2024年の自動車盗難認知件数は6,080件で、その7割超が施錠中の車両を狙った犯行とされ、最短1分で盗まれるケースも報告されています。
また、損害保険の支払いも増加しており、日本損害保険協会によれば、2024年には1件当たり平均281.5万円の支払いが発生したとのことです。こうした状況を踏まえ、3社は「防犯×モビリティ×保険」による新たなモデルで、盗難ゼロ社会の実現を目指すとしています。

 

■展示会での印象
GMSの取り組みは、「車を持てない人に持つ手段を提供する」という社会課題解決型のビジネスと言えます。払えないから諦めるのではなく、どうすれば使えるようになるかを考え、その利用が生活改善につながる仕組みを構築しているように感じました。経済的な理由で車を持てない層にとっては、こうした仕組みが新しい選択肢になり得ます。また、生活だけでなく、仕事や移動の幅を広げるという点で、GMSの挑戦は非常に興味深いです。(小田 沙樹子)

小田 沙樹子(オダサキコ) 研究員
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