2025年10月29日(水)、ジャパンモビリティショーに参加しました。本コラムでは、展示会で印象に残った企業の取り組みを紹介します。今回は Cuebus株式会社 です。
■Cuebus社の技術とは?リニアモータで実現する新しい物流システム
Cuebusは、リニアモータを活用した都市型立体ロボット倉庫 「CUEBUS」 を提供しています。この技術の核となるのは、床面に設置したリニアモータユニットによって棚を直接動かす仕組みです。これにより、棚側にはモータやバッテリーが不要となり、耐久性が高く、メンテナンス負荷も軽減されます。さらに、通路を不要とし、天井ギリギリまで収納できるため、倉庫スペースを極限まで活用できます。
加えて、すべての棚を即座に動かせることで、ピッキングや入出庫の処理速度を飛躍的に向上させる「高スループット」性能を実現。複数の棚を同時に、最短経路で移動できるため、従来のロボット倉庫よりも効率的です。
この技術は倉庫内の効率化にとどまらず、物流全体の仕組みを変える可能性を秘めています。背景には、荷物の小口化による取扱量の増加や、ドライバー不足、さらに2024年問題に伴う労働時間規制の影響で輸送力の低下が懸念されるといった課題があります。
■従来の発想との違い
こうした状況に対して、これまで物流の効率化といえば、自動運転の実現に向けた取り組みが一般的でした。私自身も、輸送力不足への対応はこの方向が中心だと思っていましたし、場合によっては鉄道や空路など、既存の代替手段を組み合わせることも検討されていると考えていました。実際、こうした取り組みを進める企業もあります。
しかし、Cuebusの提案は全く異なります。「移動体を使わず、荷物そのものを専用レーンで動かす」という発想です。リニアモータで貨物を直接搬送する仕組みは、物流の概念を根本から変える可能性があります。
■自動物流道路構想との接点
今回の展示でCuebusが紹介していたのは、国土交通省が構想する 自動物流道路(Autoflow Road) への技術応用です。自動物流道路とは、道路空間に物流専用レーンを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人・自動化輸送手段で貨物を運ぶ仕組みを指します。もしこの仕組みが実現すれば、ドライバー不足の解消や荷待ち時間の削減、積載効率の改善に加え、CO₂排出ゼロによる環境負荷低減が期待されます。さらに、専用レーンと電力供給が整えば、24時間稼働による幹線輸送の効率化も可能になります。
■展示会での印象
正直、「荷物だけを動かす」という発想は目から鱗でした。国交省の構想とCuebusの技術が結びつけば、物流の未来像は大きく変わるかもしれません。インフラ整備やコスト回収など課題はあると思いますが、今後の動向を注視したい企業の一つとなりました。
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