矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2025.10.06

【今週の"ひらめき"視点】高度人材の育成に向けて。世界を受け入れ、世界へ出て行け

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

 

9月30日、文部科学省は今年4月に小学校6年生と中学3年生を対象に実施した全国学力・学習状況調査の都道府県別、政令指定都市別の集計結果を発表した。対象教科は小学生が国語・算数・理科、中学生が国語・数学・理科。正答数によってA層~D層に分類、総じて大きな地域差は認められなったものの、D層の比率がもっとも高い地域と全国平均との差は最大で1.5倍、最小の地域とは同2倍の開きがあった。また、世帯の所得と両親の学歴を指数化した社会経済的背景(SES、今回は「家にある本の冊数」で代替)と学力との相関は地域別以上に顕著であり、とりわけ、算数、数学にその傾向が強く表れた。

では、世界の中で日本の児童・生徒の学力はどのレベルにあるのか。国際教育到達度評価学会(IEA)が58ヵ国・地域の36万人の小学生、44ヵ国・地域の30万人の中学生を対象に実施した調査「TIMSS 2023」によると日本は小学生の算数が5位、理科が6位、中学生の数学が4位、理科は3位、4年ごとに実施される調査において理科は若干順位を下げたものの、初等教育における理数科目の“平均点”は依然として世界のトップレベルにある。

ところが大学レベルになると突如見劣りする。大学進学率こそ6割に迫るものの人口100万人あたりの修士号取得者数は592人、英の13%、米の23%にとどまる(NISTEP、2019年度)。世界大学ランキング(英Times Higher Education)では東京大学ですら28位、慶応が601-800位グループ、早稲田が801-1000グループという有様だ。

高度人材の枯渇は国力低下に直結する。野依良治氏(ノーベル化学賞、2001年)は「社会の新陳代謝の鍵は動的平衡すなわち構成員の流動性にある」とし、「多様な“異”との出会い、他人と異なることへの好奇心が大切」と既存社会への埋没を戒める(CRDSコラム(66)より)。世界の留学生は560万人(2020年)、うち日本の受け入れ数はわずか4%だ。同20%の米国が知の自由と移動に規制を課しつつある今、日本は先端分野における教育研究体制を世界レベルに引き上げる絶好のチャンスである。


今週の“ひらめき”視点 9.28 – 10.2
代表取締役社長 水越 孝

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