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埼玉県八潮市で起きた下水道管路の破損による道路陥没事故から7か月、国土交通省は腐食しやすい箇所など優先的に実施すべき約813kmに対する特別重点調査の結果を発表した。原則1年以内の対策を必要とする「緊急度Ⅰ」の延長は約72km、応急措置を実施したうえで5年以内の対策を実施すべきとされた「緊急度Ⅱ」は約225kmに及んだ。また、対応済の4箇所を含め6箇所の空洞も発見された。インフラ老朽化の深刻さは想像以上だ。
下水道管だけではない。高度成長期以降に建設、整備された社会インフラの老朽化が加速する。2040年3月には道路・橋の約75%、トンネルの約52%、河川管理施設の約65%、港湾施設の約68%、そして、下水道管渠の約34%が建設後50年を越える。国交省は不具合が発生してから対応する事後保全に要する2048年度の費用を最大12.3兆円、一方、発生前に予防措置を講じる予防保全費用を同6.5兆円と推計している。コスト的にも予防措置が圧倒的に有利であり、悲劇を繰り返さないためにも対策が急がれる。
とは言え、人手が足りない。建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに減少、2024年には477万人へ、1997年比で約3割、208万人減少している。そして、高齢化だ。65歳以上の高齢従業者はこの20年で約2倍、昨年時点で80万人に達する。また、発注側である地方公共団体の土木部門の職員も1996年度の19万4千人から2024年度には13万9千人へ、こちらも約3割減少している(総務省)。
昨年4月、建設業にも罰則付き時間外労働規制が適用された。加えて、猛暑だ。国交省は地方整備局発注の土木工事を対象に「夏季休工」制度を導入する方針だ。安全性を高め、多様な働き方を認め、人手不足の緩和を図りたい考えだ。とは言え、工期の延長は避けられない。少子高齢化、働き方改革、地方、財政、そして、気候変動、、、社会インフラの老朽化は “時代”が抱える構造問題の縮図だ。一方、この時代ゆえの武器もある。ICT、AI、ドローン、ロボットなど、先端テクノロジーを活用した現場のスマート化をどこまで実現できるか。産官学一体となった取り組みが急務である。
今週の“ひらめき”視点 9.21 – 9.25
代表取締役社長 水越 孝
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