矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2025.09.08

【今週の"ひらめき"視点】パレスチナ人道危機、深刻化。唯一の解決策“2国家共存”に道筋を

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。

 

8月20日、イスラエル国防省はイスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸地区における新たな入植計画を承認した。“新たな”と記したが、「E1計画」と名付けられたこの計画は国際社会からの反発を受けて20年間凍結されてきたものである。実現すればエルサレムの南北、東エルサレムと西岸がともに分断されることになり、パレスチナの地域としての一体性は失われる。

パレスチナ自治政府は“2国家解決構想を破壊する”と非難、英仏独をはじめ日本も「即時撤回を求める」と声明した。そもそもイスラエルによる入植地の建設は国際法上認められるものではなく、国際司法裁判所(ICJ)もイスラエルのパレスチナ占領政策を違法と断じている。一方、極右勢力と連立するネタニヤフ政権は入植地拡大による占領政策を加速、2国家共存という政治的解決策の無効化をはかる。

この2月、筆者が運営に関わるシェア型書店「センイチブックス」(調布市)で上映会を開催させていただいたジャーナリスト 川上泰徳氏のドキュメンタリー「壁の外側と内側」が、劇場用に再構成されて全国の映画館で上映されることになった。8月30日、渋谷ユーロスペースにてあらためて本作を観た。イスラエル軍と入植者たちによる暴力と排除に踏みにじられるヨルダン川西岸の現実は私たち日本人の想像を絶する。イスラエルの刑務所に収監された夫に会うことは出来ない。それでも、摘んできた野のバラを飾ることでささやかな日常を維持する妻の姿に胸を打たれる。

映画では、武力による占領と非人道行為への加担を拒否するイスラエルの若者の姿もあった。破壊と飢餓に苦しむガザの惨状は世界が知るところである。しかし、多くのイスラエル国民は“不都合な真実”から目を逸らしたままであるという。「言論統制があるのか」との筆者の問いに、川上氏は「大手メディアの萎縮が主因」と言い切った。アラブ人は暴力の加害者としてのみ記事になる、国全体がそうした空気の中にある、ということだ。9月1日、湾岸協力会議(GCC)の外相会合に出席した岩屋外相が2国家解決の実現に向けてGCCと連携する旨、表明した。パレスチナ国家を承認した国は150か国を越える。フランス、英国、カナダも承認する方針だ。日本も続け。

■ご参考
映画 『壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記』 公式WEBサイト


今週の“ひらめき”視点 8.31 – 9.4
代表取締役社長 水越 孝

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