矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2018.06.28

Kubernetes が支えるIBM Cloud事業

日本IBMはIBM CloudとIBM Watson事業について説明会を開催した(5/14)。以下では、IBM Cloud事業について取り上げる。

日本IBMの取締役専務執行役員である三澤智光氏が登壇した。まず、三澤氏は、IoT化などを背景に、変化に対応して素早くサービスを提供することができる「マイクロサービス」の重要性を強調した。マイクロサービスは、サービスとコンテナをセットにした小さな集合を組み合わせて、1つのアプリケーションを構築する構造をもつ(写真)。また、コンテナとは仮想化に用いられる方法の一つであり、隔離されたアプリケーション実行環境を構築できる。三澤氏はコンテナの利点として、①リソース効率が良い、②環境の起動が早い、③ポータビリティーがある、の三点を挙げた。

同社は、コンテナを管理する仕組みとして100%オープンソースであるKubernetesを利用して、負荷分散やリソース管理を行う。実際に、同社はミドルウェアなどの自社製品のコンテナ化を進めている。

同社が提供するIBM Cloudは、130を超えるサービスを備えた開発・実行基盤である。IBM Cloudを通じて、顧客はAI「Watson」を利用することや、オンプレミス環境にあるシステムをクラウド上に移行することなどが可能になる。

つづいて、三澤氏は、IBM Cloudを備えるサービスの一つであるIBM Cloud Private (ICP)について述べた。ICPは、Kubernetesなどの基盤技術を用いて、プライベートクラウドやオンプレミスなどの自社専用の環境に、アプリケーションの開発環境を提供するソフトウェアである(写真)。

さらに、三澤氏はIBM Cloud Automation Manager (CAM)について説明した。CAMは、複数のクラウド環境において、サーバー環境などの構築を自動化するツールである。CAMによって、顧客企業は、コンテナ化されたアプリケーションをオンプレミスや複数のクラウドのなかから、特性に合った最適な利用形態で自動的に展開することができる。そのため、顧客企業は効果的にマルチクラウドを活用し、特定のクラウドへのベンダーロックインを回避している。

加えて、三澤氏は、米IBMと米Red Hat Inc.が提携を強化したことに触れた。協業体制の強化により、顧客はKubernetesだけではなく、Red Hat OpenShift Container Platformを通じても、ICPなどのIBMの主要なサービスを利用することが可能になった。

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今後、複数のITベンダーが提供するプラットフォームを共通の基盤とするなど、各社のサービス提供範囲拡大に向けた動向について注目していきたい。

(井上 圭介)

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