今回のレポートは、アンケート結果と公開情報をもとに執筆していますが、調査期間中には多くの企業の方々と直接お話しする機会にも恵まれました。その中で、印象に残ったのが「日本ならではのホスピタリティの高さと生成AIの活用との相性」についての話です。
生成AIは、人手不足の解消を目的に、接客や観光案内などの現場でも活用が進められています。実際に、ロボットやサイネージと組み合わせて、業務の一部をAIが担う実証実験も見られます。ただ、こうした活用において課題になるのが、日本で特に重視される“きめ細かな気配り”の部分です。
たとえば、注文や道案内のようにマニュアル化できる業務であればAIの適用もしやすいのですが、「困っていそうな人に先回りして声をかける」「常連のお客様にちょっとした一言を添える」といった対応は、必ずしもルール化できるものではありません。相手の表情や雰囲気、過去の関係性などを踏まえて判断するような対応は、現時点のAIにはまだ難しいところです。
日本はもともとホスピタリティの水準が高く、そうした“空気を読む”ような対応が求められる場面が少なくありません。だからこそ、生成AIの活用が技術的には進んでも、それが現場で本当に機能するかどうかは別の問題として立ち上がってきています。単に置き換えればいい、という話にはならない。そのバランスをどうとっていくのかが、今後の大きな論点になると感じました。(今野 慧佑)
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