■制御系
SDVの開発に際して、競争領域と非競争領域とに区分し進めていくことが今後、強く求められてくる。理由としては、各社のアイデンティティを維持するだけではない、切実な背景がある。まず制御系はドメイン型からゾーン型へのシフトが求められるものの開発規模が大きく、開発期間も投資額も膨大になるとされ、1社で賄うことは難しいと想定されている。
ゾーン型へのシフトに際しては、パワトレ系やシャシー系などドメイン毎に括られたECUの束を一旦バラバラにしたうえで、「クリティカルな動作を要求されるもの」「情報量が多いものの多少の遅延は許されるもの」などパターン化のうえ、改めて括っていくことが求められる。
こうした再構築に際しては開発規模が大きく、開発期間も投資額も膨大になることは容易に想像できる。加えて、SDVの開発に際しては、OSS等の活用が不可欠となることから、OSSに長けたソフトウェアエンジニアを集め、あるいは育てる必要がある。各社が投資をして開発していく、もしくはエンジニアの獲得競争を繰り広げることは非効率であり、共同出資、共同開発を進めることで効率化していくことが自然な流れといえる。
■車載IT系
他方、車載IT系については、ビークルOSがキーポイントになる。ビークルOSの開発に際しては、テスラモーターズを除き、トヨタ自動車やフォルクスワーゲンをはじめ、世界中のOEMが莫大な投資を行うも開発に苦戦している状況にある。また、ビークルOSは開発して以降も改善、進化に向けて継続的に取組んでいく必要があり、OEMにとって財務的な面で負担を強いられることになる。
また、SoC(System on Chip)についても「自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)」を通じて研究開発や仕様の共通化を進めているものの、実際にはOEM各社で消費電力を抑制するなど、カスタマイズや独自開発を進めており、投資が不可欠な領域である。
制御系と比較した場合、車載IT系は開発して以降も継続的に改善、進化し続ける領域が多く、リソース(財務面/人材面)を投下し続ける必要性から共同出資、共同開発に向いているといえよう。
こうしたことを踏まえた場合、日産自動車と本田技研工業による連携に留まらず、SDVの領域においては2030年に向けて更なる変化が起こる可能性があるなど混沌とした状況にある。特に当社が予測する2030年のアーキテクチャの基本構成は各社で概ね似通ってくるものとみており、競争領域と非競争領域の切り分けを含め、今後のSDVを巡る市場の行方が楽しみで仕方ない。(山口泰裕)
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