このようなPLM市場動向の中で、日本の製造業では「Aras Innovatorを自社へ取り入れることに成功している」と両氏とも話している。
この発言の背景には、Aras Innovatorの強みのひとつである「適用性」が関連している。昨今では、パッケージの仕様に自社業務を合わせていく考え方である「Fit to Standard」が認知されているが、Aras Innovatorは、自社業務に合わせてパッケージをカスタマイズするアプローチを取っている。製造業においては、自社の設計・製造における強みが製品の差異化へつながるため、業務プロセスを標準化することは難しいとされる。つまり、ベストプラクティスの標準パッケージを導入した場合でも、何かしらのカスタマイズが行われることは多い。一方で、はじめから「自社業務にシステムを合わせていく」という考え方になじみのある日本企業は、Aras Innovatorのアプローチを受け入れやすく、スムーズな導入を行える。
PLMはデジタライゼーション、すなわちデータ利活用を行うシステムであるため、その導入が進んでいれば、データを収集し活用できる環境が整っているといえる。さらには、次のステップであるデジタルトランスフォーメーション、つまり組織全体や社内外含めた付加価値の創出を本格化するスタートラインに立てているといえるだろう。
さて、AIが産業全体から注目されている中、PLMにおいても例外ではない。
AIはそのモデルを構築するために、膨大な学習データを必要とする。そのため、AIモデルの構築を希望しても、データが各プロセスで電子化・収集されていない状況では、学習データを用意するために多くのリソースを投入しなければならない。対して、データがすでに収集できていれば、AI導入のステップであるデータ学習へとすぐに取り組みを進めることができる。そして、PLMを用いることはデータを収集していることにほかならず、日本企業において、PLMの導入と活用が進んでいるならば、AI活用への準備ができていると考える。
従来、可視化されていなかったデータがPLMにより収集され、そのデータを学習したAIモデルが完成することにより、これまで以上のインパクトを持った業務効率化や付加価値の創出が実現できることになるだろう。アラスもまた成長ドライバーとしてAIに注目し、成功事例を確立し、そのスキームを広げていこうとしている。(佐藤祥瑚)
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