矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2024.03.08

【アナリストオピニオン】オフィスへの適用が始まるAIツールの最新動向④

AI inside「AnyData」「Heylix」

■サービス概要
AIは、過去何度もブームとなってきた。しかし、試してみるものの、その導入に至らない企業が相次いだ。そのような状況下で、AI inside株式会社は、2017年に提供を開始したAI-OCRサービス「DX Suite」でオフィス業務にAIを浸透させてきた。昨今では新たな取り組みとして、AI-OCR領域にとどまらない更なる業務効率化に貢献するAIプラットフォーム、「AnyData」「Heylix」の展開にも注力する。
「AnyData」は、マルチモーダルにデータを取り込みながらユーザーの手を煩わせることなくAIモデルを作り、運用もできる、AI統合基盤サービスだ。AI inside のテクノロジーを複合的に活用し、数値・画像・テキストなど様々な形式のデータをマルチモーダルに処理しながら、ユーザーの任意の課題解決に寄与する高付加価値なAIソリューションを生み出す。
・AI inside「AnyData」⇒https://any-data.inside.ai/

「Heylix」は、ユーザーの自然言語による指示に基づきタスクをこなしてくれるAIエージェントである。2023年8月にクローズドβ版の提供を開始した後、金融・製造業を中心とした各社との実証実験や「DX Suite」「AnyData」のユーザーコミュニティを通じた価値検証などを実施、これらの取り組みで集まった多くのVoCをもとにアップデートを重ね、10月に正式版として提供を開始した。
ユーザーは人とコミュニケーションするように「Heylix」へ指示を出すだけで「Heylix」が生成AI・予測AI・認識AIなどのテクノロジーを掛け合わせて、自律的にタスクを実行してくれる“Buddy”を即座に生成する。ユーザーは“Buddy”の支援を受けることで、それぞれの業務に応じた高度なDXを実現することができる。
「Heylix」を使えば、学習不要ですぐにLLMをベースとしたAIの業務利用ができる。、「Heylix」でスピーディーにAIの効果を体感してもらい、より高精度のモデルが必要であれば「AnyData」で開発することも可能だ。
・AI inside「Heylix」⇒https://service-heylix.inside.ai/

「AnyData」と「Heylix」は、同社が目指す「誰もが意識することなくAIの恩恵を受けられる豊かな社会」を実現するために生み出してきたサービスである。

同社のように画像系と数値データの両方に対応したマルチモーダルAIプラットフォーマーは珍しく、同社の強みにつながっていると認識している。誰もが簡単に操作できるUI/UXを備えたサービスとして提供しているため、同社製品ではデータサイエンティストを必要とせず、業務の知見を持っている人が直接AIを使えるというメリットがある。
これらのサービスは、現場社員による業務効率化のための利用にとどまらない。全社最適・新規事業創出の観点での展開も見据えた取り組みを行っている。同社では、AIテクノロジーとその事業化に深い知見を持つプロフェッショナル人材を結集した経営層向けのAI実装コンサルティングチーム「InsideX」を擁しており、ビジネス課題の発見からAI導入まで、一気通貫で伴走し、DX推進を支援している。

■現在の市場動向に対する見解
想定しているターゲットとしては、銀行や保険、BPO、地方自治体等に設定しており、まずは、これまで同社がAI-OCRサービス「DX Suite」で導入実績を有している層を中心に営業活動をしている。「DX Suite」での実績からアップセルしてもらうことを狙っていく考えである。
一方、それら以外からの声がけもあり、製造業や物流、建築関係からの問合わせが入ってきている状況である。それらに関しては、過去にAI利用経験のある企業からの話が多く、これらは業務にAIを組み込む相談含め、これまで外出ししてきた業務を内製化し、また、それをサービス化していくというニーズであると考えている。

■利用顧客層の特徴
導入の事例として、鹿島建設株式会社と共同で「AnyData」を利用した「AIとドローンによる資機材管理システム」を開発した。従来、人が巡回・目視で行っていた資機材管理業務をデジタルツイン上で行うことを可能とし、現場職員の安全性と作業効率の向上を実現している。
また、i-PROのモジュールカメラ「moduca」シリーズと機能連携したことにより、これまで以上に簡単かつ低コストでAIを業務実装できるようになった。具体的には、i-PROのモジュールカメラ「moduca」シリーズが撮影した画像をそのままAnyDataへ送信し学習することが可能となったため、人手による学習データの事前収集とアップロード作業が不要となり、AI開発・運用の工数を簡略化することが可能である。また、新たにシステム構築することなく推論も行うことができるため、システムの外部発注や自社開発、およびその運用をする手間やコストも削減できるとする。
その他、導入先の傾向はこれから実績の拡大とともに見極めていく。

■現状の課題
とりあえずAIを使ってみようという段階から、AIを業務に組み込んでビジネス価値を生み出そうという方向にユーザーのマインドシフトを後押しする必要があると認識している。その意味では、これからキャズムを超えていくことが必要になっていくと思われる。
また、AIを検討する段階で必ずROI(Return On Investment)の話になり、導入するうえでの課題になることが続いている。

■今後の事業戦略
同社は「AIで、人類の進化と人々の幸福に貢献する」をパーパスとし、様々な環境に、AIが溶け込むように実装され、誰もが意識することなくAIの恩恵を受けられる豊かな社会を目指す「“AI” inside “X”」をビジョンに掲げる。
同社はAI-OCRを使ってAIを日本に普及させた第一人者であると自負しているが、今後はAI-OCR領域のみに限らず様々な業務をビジネスとして取っていくことを推進していく。現在注目の集まるLLMの社会実装も先導しながら、強みであるAI-OCRを中心にその前後工程の自動化にも寄与するマルチモーダルAIを業務に活かすことを目指していく。(野間博美)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/404

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
リサーチはマーケティング課題解決のための方法に過ぎません。誤った調査では課題の解決は不可能です。我々は、お客様の課題を丹念にお伺いさせて頂き、その解決のために最も有効と考えられるリサーチをご提案することを最重要視しています。

YanoICT(矢野経済研究所ICT・金融ユニット)は、お客様のご要望に合わせたオリジナル調査を無料でプランニングいたします。相談をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

YanoICTサイト全般に関するお問い合わせ、ご質問やご不明点がございましたら、こちらからお問い合わせください。

東京カスタマーセンター

03-5371-6901
03-5371-6970

大阪カスタマーセンター

06-6266-1382
06-6266-1422