矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2024.03.01

【アナリストオピニオン】オフィスへの適用が始まるAIツールの最新動向①

近年、AIが各方面で普及しつつある中、その用途は専門的な現業部門中心に展開してきた。しかしながら、最近ではオフィス業務にAIを適用しようとする動きも始まっている。しかし、オフィスにおいては、本格的にコストをかけてAIを開発するのではなく、ローコード、ノーコードで誰もがAIを気軽に利用できる環境作りが目指されている。
今回はそういったオフィス向けAIツールを展開している4社のサービスを紹介する。

ソニーネットワークコミュニケーションズ「Prediction One」

■サービス概要
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社のPrediction Oneは、2019年に無償版の提供を開始、2020年から有償版の提供、2021年にはクラウド版の提供を開始した。
Prediction Oneは、ソニー社内のAI教育にも用いられるAI予測分析ツールである。機械学習やプログラミングなどの専門知識がなくても、数クリックの簡単な操作で予測分析が実現できる。勘や経験に頼りがちだった業務をAIで行い、業務効率化や属人化解消のサポートを実現する。

主な特徴として、

  • シンプルで簡単
  • 自動モデリングで高精度な予測
  • 予測の理由がわかる
  • デスクトップ版・クラウド版の環境で利用可能
  • 複数メンバーでの共同作業が可能

などを有している。

・ソニーネットワークコミュニケーションズ「Prediction One」⇒https://predictionone.sony.biz/

同社サービスに関しては特に初心者、低額にフォーカスしていると言える。当該サービスは、元々はグループ内で利用されていたものであり、従業員が機械学習を使えるように、社内支援として開発部門から提供されてきたものである。これを社外に展開できると考えたことからサービス化に取り組んだという経緯がある。そのため、数年間の社内利用の間に、初学者でも使いやすいようにUI設計が追及されてきたことが強みになっている。クリックだけで操作できる点が、誰にでも利用できるとして評価されている。
また、低価格であることも特徴となっている。
さらに、社内で利用されていた間のVOCのフィードバックを反映した結果として、総じてAIの予測結果はブラックボックス化しやすいと言われるのに対して、説明変数の中のどの項目の寄与度が高いかを示すことで予測の理由がわかるようになっている。

■現在の市場動向に対する見解
市場は順調に伸びているが、近年は特にユーザーの層が変わってきていると認識している。投入当初はいわゆるアーリーアダプタ層が中心であり、興味や関心から特段ROIを検討することなく導入する人が多かった。しかし、最近はユーザーがしっかりと導入目的や費用対効果を見据えている点が異なってきている。
また、直近では同じAIということで、市場全体が生成AIの影響を受けている傾向がある。
同社としては生成AIを当該サービスの機能として組み込むことで、より使いやすいツールへ進化を目指している。

■利用顧客層の特徴
ユーザーの規模に関しては、SMBから大手企業までほぼ均等の割合で導入されており、特段の偏りは生じていない。
業種に関しては、企業が中心ではあるが、他にも学校や医療機関などの例もある。学校のケースではAI人材の育成という意味で、授業において活用されるケースも多い。その結果、例えば東京都立大島海洋国際高等学校の事例では、専門知識のない高校生がAIを駆使した就航予測を実現するなど、実用的な活用も行われている。
現在のラインアップとしては、デスクトップ版とクラウド版のみとなっている。
多い利用用途としては需要予測、成約予測、故障予測、入電予測などが挙げられる。
他には、予測までは必要ではなく、結果に影響する要因を、寄与度を利用して見える化するという目的での利用も一部に見られる。

■現状の課題
総じて、精度とデータの数は相関するため、顧客が持つデータが不足するケースでは期待精度を達成できないケースが存在する。そのため、不足するデータを保管することを目的に、もともと学習された、事前学習モデルの提供やオープンデータ、販売データの活用がしやすい仕組み作りが必要と考えている。
また、生成AIの進化に合わせて、その機能を継続的に自社サービスに組み込んでいくことの必要性を感じている。

■今後の事業戦略
自社のサービスに生成AIの活用という機能を付加していくことが必要になると感じている。また、データの連携という意味では、ローカルに保持しているデータのみでなく、様々なクラウドサービス上に保管されたデータをシームレスにAI生成に利用できる環境を提供していきたい。
一方で、初学者向けとは言え、普段PCすら触らないようなユーザーもいるのが実態であり、そういった人が多い業界に特化したような使いやすさの追求も必要ではないかと考えている。(野間博美)

※全文は以下よりご覧いただけます。

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/404

野間 博美(ノマ ヒロミ) 理事研究員
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